「峰不二子という女」総括(後編)/ルパン三世展〈29〉 | アディクトリポート

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前回は、「峰不二子という女」の良かった点を挙げたので、
今回は、
悪かった点。

骨子の熟考と堅牢さに比べ、細部の緻密さと全体のバランスを欠く

各話の役割分担や全体構成の堅牢さに比して、一話ごとの話の中身や、それに付随するアクションが、あまり有効に機能していない。

作家集団Addictoe オフィシャルブログ-ibennto

だから各キャラの相関とか、エピソードをまたいだプロットの方には興味津々でいられても、目前に展開しているイベントの方が、さっぱり興味をそそらない。

と言うより、正直、何をやっているのかが、具体的によくつかめない。

例えば第1話「大泥棒VS女怪盗」で、ルパン三世はカルト教団の施設から、巨大な涅槃(ねはん)像を空に飛ばし、それに乗って脱出してくるが、何度見ても「はぁ?」とか「エエッ?」って感じ。

この、「アクションがイマイチ具体性を欠く」のも、各話の存在に説得力がなく、のめりこんで視聴できない原因と言える。

声優の問題

次元大介の小林清志(番組放送時78歳)だけは、オリジナル声優として存続。
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-じげん
物語がTV 1st以前、つまりこれまでで一番若い各キャラを描いてるのに、
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-くらい
次元だけ完全に老人の声なのが、作品の足を引っ張っている。

1995年にリニューアル済みのルパン三世役、栗田貫一だって、
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-さあんせい
「峰不二子という女」オンエア中の2012年には、もう54歳。
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-rupaapu
それでも「一番若いルパン」を、颯爽ハツラツと演じきった。

銭形の山寺宏一(51歳=収録当時)は、
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-ぜに
納谷悟朗(当時82歳)の声なんて誰にも出せっこないので、まあこんなものか。

五エ門の浪川大輔(それでも36歳)は、もっと評価されて良いのではないかと思うが、いかんせん、五エ門は出番もセリフも少なすぎる。
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-えもん
パターン化回避が徹底された本作の脚本でも、こと五エ門に限っては、あいかわらず「つまらんものを斬った」のお約束セリフが濫用されていて残念。

交代した井上真樹夫は、もう一つの代表持ち役、キャプテンハーロックの声の引退も1998年(『銀河鉄道999 エターナルファンタジー』『火聖旅団 ダナサイト999.9』で山寺宏一に)からと早く、近年は声が出ないのではと危惧したが、auの花形満で、2012年10月でも、71歳(収録当時)の健在ぶりを示している。

星一徹役の加藤精三は85歳、星明子役の白石冬美は71歳、飛雄馬役の古谷徹だって、もう59歳!

峰不二子役の沢城みゆき(オンエア時27歳)だが、
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-きたい
個人的には一番、問題を感じた。

前任の増山江威子とそっくり、しかも若くて張りのある声で不二子役を勝ち取り、
2011年のパチンコCM、

血の刻印~永遠のmermaid~』(2011)を経て、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-baba
3度目の不二子役への起用で、しかも全話でずっぱりの主役だったが、
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-ばいく
後半は増山版不二子の声マネは全くやめてしまい、
「どこが不二子やねん!」
の地声で演じてしまっていた。


一方、「本家峰不二子」(※テレビは二階堂有希子につづく2代目だが、パイロットフィルムで、二階堂より先に不二子を演じていた)の増山江威子は、2013年のCMでのキューティーハニー役でも、76歳にして、このクオリティ!

だがこれは、番組を見返してない私の勘違いかも知れない。

ということで、悪かった点の最後にして最大の
煮え切らない新設定
について。

本作では、ルパン三世のテレビシリーズ史上初めて、
捨てエピソード、つまり単発で済み、他のエピソードに影響を与えない回というのが存在せず、
全13話が必ず、
*各キャラの相関を示すか、
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-おすか
↑オスカー警部補は、関係が希薄な銭形と不二子をつなぐ重要な役割を果たし、本作に欠かせないキャラ。

*峰不二子の過去や出自を小出しに説明する
かの、どちらか、あるいは両方の役割を担っていた。

作家集団Addictoe オフィシャルブログ-kao
少女期の不二子は、
科学者の父親の犠牲になり、
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-ださだ
研究中の新薬の実験台にされると同時に、
開発の首謀者である、
ルイス・勇・アルメイダ伯爵の「手籠め」にもなる。
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-かお
以後も薬物依存と伯爵の心理的支配下に
長年置かれていたが、
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-oitachi
それに耐えられず、この状況を抜け出す。
奪われた自由を取り戻すべく、勝手気ままに社会に振る舞い、
自分の決めたルールだけに従う。
そのために女を武器にすることになんのためらいもない一方、
自分の過去を想起させる、不当な抑圧下にある女性の抹殺に異常な執念を燃やす等、
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-ryokann
その行動と動機は、かなり屈折している。

そんな不二子を、アルメイダ伯爵は今も執拗に追っていた。
しかし彼は、以前のように不二子を自分の管理下に置くことが目的ではなく、
高齢でじきにこの世を去る自分になり代わって、
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-hukurou
不二子の守護者となれる後見人として、
台頭間もないルパン三世を候補に白羽の矢を立て、
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-ださえ
彼が本当にその役目を果たせるのかを、
様々な仕掛けで試し続ける。


(以下ネタバレ)
*赤字部分

って話だろうと思って、
「ふむふむ なるほど」と納得しながら見続けていた最終話で、
実は小出しで語られた
少女の境遇は、峰不二子本人のものではない
という、
反則技のどんでん返しが視聴者に突きつけられる。

なんでそんな、ややこしい
二重構造にする必要があるのか、
さっぱり解せませんが?


恐らくは、
「勝手に峰不二子の生い立ちを設定するなんて、おこがましい」
と考えたんだろうけど、
反対に、「誰やねん?」な完全新キャラの生い立ちや境遇に、そうとは知らずにつきあい続けさせられたこっちは、たまったもんじゃない。

そんなこんなで、先に指摘した、主役級の女性キャラが峰不二子の声じゃなかったのは、そもそもそのキャラが不二子じゃないので、当然だった…のかも知れない。

(ネタバレ終わり)


だけど見直して確認する気になんか、なるもんですか!
見るたびにダマされた気分になるんだから。

やると決めたら、迷わずにズバッとやって欲しかったよ。

というわけで、『峰不二子という女』は、終わってみれば、見苦しいためらい傷が目立ってしまう、いくぶん残念な作品になってしまいましたとさ。

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これにてようやく、
「ルパン三世展」
についての話は、おしまい。

$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-foku