こち亀(こちら葛飾区亀有公園前派出所 )THE MOVIE
勝どき橋を封鎖せよ!
※ジャニース主演映画の常で、主演の香取慎吾の劇中スチルはありません。
↑なのでこのスチルも、テレビ番組用のものですね。
このタイトルの映画に、これ以上の何を望もうか?
鳴り物入りで2009年にテレビドラマ化し、毎回豪華ゲストを招いても、低視聴率で短命に終わった全8話。
その映画化に、誰も期待しなかったし、
思惑通りにはヒットしなかったみたいだけど、
映画としての構えはしっかりしていて、
なかなか感心しましたよ。
↑本作のために、実際に亀有公園に建設された、派出所(交番)のセット。
原作に頼らずに、完全オリジナルでストーリーを構築したのが英断で、すばらしい。
というのも、「ジャンプ」のマンガはことごとく、アニメはともかく、実写映画の原作としてはふさわしくないことに、しっかり気がついて、
マンガではことごとく避け続けられた、両津勘吉の恋愛をテーマに据えたから。
これによって、単なるハチャメチャで記号的なギャグキャラに過ぎなかった両津に、生身の人間の感情が与えられ、観客が感情移入できるようになる。
原作マンガの長年のファンには、
超こち亀 (ジャンプコミックス)/秋本 治
¥2,100
Amazon.co.jp
こんなの『こち亀』じゃねえよ!
と思われるだろうが、
先述したとおり、原作通りでは、まともな大人の観客が納得するドラマなんて、成立しないんである。
マンガでは長年にわたり、毎日を漫然と生き、基本的に同じことの繰り返しで、全く人間的に成長しない(=歳を取らない)存在だった両津が、
深田恭子のヒロインの登場で、突然、人生の変化や区切りを意識する。
脚本に「JIN-仁-」「白夜行」「世界の中心で、愛をさけぶ」の森下佳子を含む3人が、さらに脚本補佐に斉藤ひろしを含む3人がクレジットされて、物語には万全が期され、
寄り道もほとんどなく、突飛さも控えめに、話はきちんと進んでいく。
事件には犯人と動機があるが、これもかなりまともで、
首をかしげることなく、
配役の演技も含めて、説得力がある。
事件のクライマックスに意外性はないが、
話の成り行き的には納得でき、
映画のトーンもペースも乱れない。
犯罪に対する断固たる構えや、
人の本心を鋭く見抜くなど、
これまた原作のマンガの両津には絶対に望めないセリフを語らせて、
作り手の取り組みの真剣さに好感が持てる。
以下ネタバレ(赤字表示)
一件落着となり、
「あれ? ところでタイトルの勝どき橋の、例の件はどうなったんだ?」
と思っていたら、
締めの見せ場になっていた。
大した仕掛けではないが、映画の背丈には合っていて、きちんとドラマを盛り上げていることにも感心した。
地理的な位置関係が、現実的ではないけれど。
(佃大橋から勝どき橋を眺めてるようだが、亀有から出発しても、浅草から出発しても、旅一座のトラックはこの橋を渡らないはず)
さらに開くのはCGによるもので、実際の橋は現時点で開くのは不可能。
(以下Wikiより)
勝鬨橋
日本で現存する数少ない可動橋(跳開橋)であるが、1980年に機械部への電力供給が終了しており、可動部もロックされ、跳開することはない。近年、再び跳開させようとの市民運動や都・一部都議の動きはあるものの、機械部等の復旧に莫大な費用(東京都の試算では約10億円)がかかることや多数の道路交通量があることから、実現の目途は立っていない。
ネタバレ終わり
最後に、配給が松竹だと知って驚いた。
香取主演といえば、
『NIN×NIN 忍者ハットリくん THE MOVIE』(2004)
NIN × NIN 忍者ハットリくん THE MOVIE プレミアム・エディション [DVD]/香取慎吾,田中麗奈,ゴリ
¥3,990
Amazon.co.jp
『西遊記』(2007)
西遊記 スタンダード・エディション [DVD]/香取慎吾,内村光良,深津絵里
¥3,990
Amazon.co.jp
『座頭市 THE LAST』(2010)
座頭市 THE LAST 通常版 [DVD]/香取慎吾,石原さとみ,反町隆史
¥3,990
Amazon.co.jp
とずっと東宝配給だったから、今回もどうせ、と思っていた。
しかし『座頭市』が興収8億程度で大コケだったため、『こち亀』もコケるのを予想していたのか手を出さず、結局松竹が配給したらしい。
だけど、『ハットリ君』も『西遊記』も一応見たけど、途中で寝ちゃって、中身をほとんど覚えていない。
その反省もあってか、香取主演作では今回の『こち亀』が、(自分が観た中では)一番まともな映画だった。
ただヒットしたからってだけで、無理矢理続編を作るより、
SPACE BATTLESHIP ヤマト コレクターズ・エディション 【Blu-ray】 (完.../木村拓哉,黒木メイサ
¥10,290
Amazon.co.jp
松竹本社が、『寅さん』『釣りバカ』に続けるシリーズにしたかった、
『築地魚河岸三代目』(2008)に失敗したんだから、
築地魚河岸三代目 [DVD]/大沢たかお,田中麗奈,伊原剛志
¥3,990
Amazon.co.jp
↑しょぼい映画でした。
それよりはよっぽど、シリーズとして有望株だと思いますが?
実際、松竹のこの映画への献身ぶりはすさまじく、
MOVIX亀有、つまり「こち亀」の地元の松竹系シネコンでは、
9月17日の土曜日の時点で、
『コクリコ坂』でさえが1日2回上映なのに、『こち亀』は1日4回も上映している。
このMOVIX亀有は、2006年3月3日開館の際に、せんだみつお主演の、1977年の東映実写版『こちら葛飾区亀有公園前派出所』も上映していて、
ビデオ化されていないこの珍作も、実はここで観ている。
(詳しくは、この方のブログで)
私の感想を付け加えると、フィルムもカメラもチープで、突然女性の裸が出てくるなど、プログラムピクチャーの域を出ていないが、原作のいい加減さとはトーンが合っていたと思う。
同じ1本だけで終わらせるのは、2011年版は、あまりに惜しい気がする。