前回は「1ダースの特攻隊」編のキャラクターデザインについてだったので、今回はそれと対をなすメカについて。
まず今回のウルトラ戦士12人は、自分たちの光線技を無力化してしまう敵地に乗り込むため、腰に新装備の爆弾を追加している。
形はバロム1のボップみたい。
ボップは右腰に一つだけだが、
この装備は両腰にある。
この爆弾は結局、全員が使わずじまいで話は終わり、威力のほどはうかがい知れない。
まあ、「ザ・ウルトラマン」には、よくあることです。
特攻隊は、敵地アヌビス星の周囲に張り巡らされた電磁バリアを解除するため、たまたま付近を通りがかった小型円盤を投げつけて、最初の難関を突破する。
だがこの小型円盤、底の部分にキャタピラ状のものがついていて、宇宙空間を飛ぶには、なんとも不似合いな形。
↑1979年なので、外形はパソコンのマウスを参考にしたわけではありません。
メロス、新マン、エースが相次いで脱落。
地上からの敵本拠への潜入は、残りの9人でも多人数すぎるとの判断から、
*父、母、マン、レオとアストラの5人と、
*キング、ゾフィー、セブン、タロウの4人という、
どう考えても戦力にかたよりのある二手に分かれる。
これは後者の4人にストーリーをしぼりこむためだったらしく、案の定、前者の5人については、ラストまで触れられず。
そして4人が遭遇するのが、ご覧のメカ戦車。
……ネーミングもデザインも、特にコメントすることはありません。
しかし、このカッコ悪い戦車との戦いでタロウが倒れ、
キング、ゾフィー、セブンが目指すは、超空間破壊砲。
これって……もしかして……ガンダーですか?
↑凍結怪獣ガンダー。「ウルトラセブン」第25話「零下140度の対決」に登場
そうなのか……。
破壊砲の制御施設内ではキングが倒れ、ゾフィーとセブンの侵入も感知される。
で、この施設の↓廊下の構造は、何を参考に描いたのか、見ればわかりますよね?
えっ、わからない?
↓こっちの方がわかりやすい?
ダメですか?
↓これです。
↑第1作『スター・ウォーズ』(1977・日本公開は78年)のために、プロダクションイラストレーターのラルフ・マクォーリーが描いたイラスト。日本ではバンダイ出版から大判画集として発売されていた。
並べれば、一目瞭然。
昨年の「パイレーツ編」以来なりを潜め、「飛べ!」になってからは恐らく初の、SWからの(ただしここに限れば、本編ではなく設定イラストからの)引用。
施設に潜入したセブンが発見したのは、奇怪な形状のコントロールメカだった。
セブンは「気味の悪い形」と形容してるが、なんとなくコミカル。
「ヤッターマン」とか「ゼンダマン」などのタツノコメカを疑ったが、
ドンピシャリのものには行き着かず。
※気がついた方は、通報(笑)よろしくお願いします。
しかしなんだってまた、こんな形なのか?
つばが波打っている花帽子(左)とか、つば広帽のキャペリンとかキャプリーヌとか言うやつらしい(右)のを、
かぶったパンダみたい。
ここでまたしても仮説だが、内山まもるは、ことデザインに関しては優秀とは言いがたく(上述のメカ戦車とか……)、自身でもそれに気づいていたから、苦手意識もあって真正面から取り組まず、出し抜けに無関係な対象の姿を借り受けたり、その場の思いつきでやっていたんじゃないだろうか。
「パンダ」と言えば、当時の上野動物園には、「カンカン(康康)」♂とランラン(蘭蘭)♀という2頭のパンダがいた。
1972年9月、日中国交正常化を記念して、中国政府から贈られて、メスのランランは、ちょうどこの「1ダースの特攻隊」の最後の連載となる「小三」10月号が発売された3日後の、1979年9月4日に、妊娠中毒で亡くなっている。(なので時期的に、ランランの死は作品に反映されたり、影響を与えていることはありえない)
とにかく内山まもるは、パンダのカンカンに
「カンカン帽」をかぶせるという語呂合わせで、
だけどそのままやっちゃうとバレバレだから(=それにあくまでも単なる思いつきに忠実である必要もないから)パンダもカンカン帽も、わかりにくく変形させたんじゃないだろうか?
憶測の域を出ないが、今回はそういう冗談みたいなデザインが、この後にも出てくる。
さて、いったん先述の廊下のビジュアルでSWがらみを引用すると、堰(せき)を切ったように勢いが止まらなくなったらしい。
アヌビス星人の親衛隊長ドリルが使用する光波剣は、
もちろん「スター・ウォーズ」のライトセーバー。
しかしSW以降、日本のSFアニメは光る剣が大流行(おおはやり)だったので、
別にこの引用に、目くじらを立てる気はしない。
ただし、ライトセーバーやガンダムのビームサーベルがエネルギー光波だったのに対し、ドリル隊長の光波剣は実体があるらしく、途中で折れた先端が、使い手のドリルのとどめを刺す。
最後は、「カンカン帽カンカン」(仮称)にアヌビス星人が操られていたことがわかり、ウルトラ戦士たちはアヌビスの宇宙船で帰還する。
これがその宇宙船。
「2001年宇宙の旅」(1968)のディスカバリー号に、
SWのXウイングの翼を生やしたスタイル。
しかしエンジンの正面形が、↑劇中本編の円形ではなく、
↑これもマクォーリーのイラストに描かれていた、準備稿の半円形になっている。
わかりやすいように、画像を組み合わせ。
さて、この宇宙船、あえて図示は遠慮するが、後端に球形の部品(ロケット噴射口)が2つついている。
そもそもの基本形のディスカバリー号が、劇中での役目を示唆する精子の形を模していることから、
内山デザインのアレンジを加え、男性器をイメージしていたのだと思われる。
31年目にして明かされた真相!
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