自分の権利にしたくても(後編1) | アディクトリポート

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すいません。今回はダラダラと長いです。

まずは、またまた以前の情報の修正・追加から。
「宇宙海賊キャプテンハーロック」が、1978年3月のテレビ放映開始に先駆けて、
1977年にプレイコミックで連載開始されていたのは知ってはいたが、
1977年のいつから(何月)なのかは、Wikipediaでも、単行本の巻末でもわからなかった。

そしたら、こういう↓本があって、
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-ta
第1回の連載が再収録され、初掲載された号の記載もあった。

それによると、「ハーロック」の初掲載は、隔週刊「プレイコミック」の1977年1月13日号、
つまりその年のほとんど一番最初からだったうえに、
「銀河鉄道999」が週刊少年キングに連載開始された、1977年1月17・24合併号と、
ほとんど同じ時期である。

さて、そうなると、1976年の3月に、チュニジアのロケからスタートした、
1作目の『スター・ウォーズ』のために、
先行して1975年中に一通り終わっていた(はずの)ラルフ・マクォーリーの平面デザイン作業で、
最初期(初期稿にある「小太りのルーク」の脇に描かれていた)レイアの案が、
零時社の初めの企画書の有紀螢を参考にしているのに続き、
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-もっと比較

この↓小松原一男が描いた有紀螢(右)の元絵を、
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-比較
松本零士が描いて(現物は現時点まで非公表?のため、未見)
1977年以前、理想としては、1975年の後半から、遅くても1976年の1月~3月にそれが存在し、
この絵を最初の企画書同様、謎のルートでルーカスが入手し、
次にマクォーリーに手渡されて彼のアーティスト魂を刺激し、
同じ描き手の同じキャラを元に、2度も自分流に描き直すという異例の事態を招いたことにも、
(依然として苦し紛れながらも、)一応のスケジュール的な辻褄を合わせやすくはなった。

さて、ではようやく今日の本題。
おさらいしておくと、前編で提起した
「松本零士は、なぜ『宇宙戦艦ヤマト』終了直後の1975年春に、自前の『ハーロック』企画書をつくったのか」
や、中編で提示した
「1999年あたりから、それまでになかった、『ヤマト』を松本零士の他の一連の作品群、
『ハーロック』『エメラルダス』『999』に取り込もうとする動きは、どうして可能だったのか」
そして
「バンダイの1/350ヤマトは、明らかにゲーム版なのに、なぜ関係者はそれを否定するのか」
について、ようやくの結論です。

PS用にヤマトメカを刷新したのは、1作目に加藤直之らと共に参加した宮武一貫だが、
どうやら松本零士としては、このデザインリニューアルがあまりお気に召さなかったようだ。
いや、このデザインを元にしたポピニカ魂(2001年)は、
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-ぽぽにか
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-ぽぴにか
「これまでのヤマト立体化商品では一番売れた」とご満悦だった(取材は直下のフィギュア王の1999年とは別に、商品企画でのインタビュー)が、かといって、ヤマトを自作に統合する動きの中に、この宮武リニューアルデザインを取り込むつもりは、全くなかった。

1999年にフィギュア王 No.22
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-1999
の取材で、直接松本零士先生ご本人にうかがったところ、
「アニメにもCG化の波が避けられない時代となり、メカが形状的に正確になるのは歓迎だが、描き手のぬくもりを残すために、あえてリアルイラストの手描きの味を加えるべく、模範イラストをまとめて発注している」とのことだった。

それが小泉和明プロダクションだった。

小泉プロは、現在はファインモールド社のSWシリーズのボックスアートを手がけているが、2000~2001年までの『新 宇宙戦艦ヤマト』の頃は、
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-コミック
このマンガに登場するG(グレート)ヤマトや僚艦まほろば、
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-まほろば
さらには、新録アルバムのカバーアート、
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-CD

そして、松本氏の他作品のメカ、「ハーロック」のアルカディア号や艦載機スペースウルフ、「銀河鉄道999」のスリーナイン号なども、
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-あるてつ
まとめて詳細なイラストを、せっせと描き起こしていた。

それらの大半(ヤマトの別バージョンや
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-ほんやま
アンドロメダ、百式探索艇、コスモゼロ等も含む)は、
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-こいずみ
「超機械絵図—スーパーメカイラストレーション」という画集で
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-yarinasi
見ることができる。

と、このように松本零士氏が「宇宙戦艦ヤマト」を自分の著作物として位置づけることに積極的で、またこれまでなら、こうした動きをいっさい阻んでいたプロデューサーの西崎義展が沈黙していた(というより、表立って身動きできなかった)のには理由がある。

西崎氏は、
1997年に破産。(不動産での失敗と新作の売り上げ不振)

オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-ろご
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-ぷらも
1995~96年にどうにか3本だけ製作した、OVA(セル・レンタルビデオ用作品)「YAMATO2520」の不振が、会社倒産の一因。

1998年に、覚せい剤取締法・大麻取締法・麻薬及び向精神薬取締法違反で逮捕・起訴。被告人となる。
一審で懲役2年8月の実刑判決。西崎は不服として控訴。
再保釈中かつ破産者であるにもかかわらず、所有するイギリス船籍の外洋クルーザー「オーシャンナイン」号にてフィリピンと日本を往復。
帰路に「海賊対策として」グレネードランチャー付M16 2丁及び拳銃1丁他を国内に密輸入。

1999年1月には、覚せい剤取締法・大麻取締法違反・麻薬及び向精神薬取締法違反事件の控訴が棄却。
西崎は上告せず懲役2年8月が確定。収監されて受刑者となる。
2月1日、銃砲刀剣類所持等取締法・覚せい剤取締法・火薬類取締法違反で再逮捕。


というゴタゴタの渦中で、彼は
プレイステーション用ソフト『宇宙戦艦ヤマト 遙かなる星イスカンダル』(1999)
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-isuka
及び『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』(2000)
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-saraba
の複製・譲渡・貸与の禁止及び損害賠償を求めて、東北新社、バンダイ、バンダイビジュアルを提訴した。


しかしこの当時、東北新社、バンダイ、バンダイビジュアルが「宇宙戦艦ヤマト」で商品展開したくても、権利者である西崎は裁判中だったり獄中の身だったから、残る権利者は松本零士しかいなかった。

こういう事情で、松本零士は「ヤマト」も自作の一本として統合することを決めていたので、
『宇宙戦艦ヤマト』等の著作物の著作者が、自分(松本零士)である事の確認を求めて、松本零士が西崎義展を提訴した。
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-saishoi

2000年10月、
西崎は銃砲刀剣類所持等取締法・覚せい剤取締法・火薬類取締法・関税法違反事件の一審で、懲役5年6月の実刑判決。西崎は不服として控訴。

その一方で『宇宙戦艦ヤマト』等の著作権等につき、東北新社と西崎・ウェストケープコーポレーションの破産管財人の間で、譲渡代金の支払の司法和解が成立。
これにより著作権者は、東北新社である事が確定。
『宇宙戦艦ヤマト』等の商標権移転取消請求事件に、東北新社が参加。

$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-sinnsha

これはどういうことか、わかりやすくいうとですね。
(勘違いや事実誤認の可能性もあるので、間違ってるかも知れませんが)
西崎は、新作ヤマトを作るとうそぶいては、東北新社やバンダイから借金を重ねてたわけ。

で、彼が獄中にいる間は、松本零士しか正当な権利者が見あたらないから、商品売り上げから東北新社他は松本氏に権利金を払わないとならない。
これだと、西崎に貸したお金は戻ってこない。
一方、西崎氏あるいは東北新社に権利があれば、新たな商品の利益から、貸し倒れになっているお金を少しずつにしても取り戻せることになる。
というわけで、東北新社が「ヤマトの権利は西崎や、そこから譲られた自社にある」という側に、ついてしまったわけですよ。

こうした流れの中で、『宇宙戦艦ヤマト』等の著作物の著作者が、西崎義展である事の確認を求めて、西崎義展が松本零士に反訴となる。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-どろぬま

2001年9月、
銃砲刀剣類所持等取締法・覚せい剤取締法・火薬類取締法・関税法違反事件の控訴棄却。西崎は不服として上告。


『宇宙戦艦ヤマト』等の商標権移転登録抹消の判決で、プレイステーション用ソフト『宇宙戦艦ヤマト 遙かなる星イスカンダル』及び『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』の複製・譲渡・貸与の禁止及び損害賠償の請求を棄却され、西崎はこれを不服として控訴。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-どろぬま2

松本零士は、「ヤマトはやっぱり俺のもの」をアピールするつもり+もうその前提で新作製作の体制が整っていたので、昨2000年4月号から小学館の月刊誌『コミックGOTTA』に『新 宇宙戦艦ヤマト』を連載していたが、2001年7月号をもって同誌が休刊(廃刊)してしまったため、ウェブで続きが発表されたが、それも中途半端で終わる
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-ひょうし

2002年、
西崎は前刑(懲役2年8月)が満期となり、受刑者から被告人となる。


『宇宙戦艦ヤマト』等の著作物の著作者人格権は、西崎義展である旨の判決が出ると、松本零士は控訴。これに対して西崎義展も反控訴。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-どろぬま3

しかし、どうやら裁判の旗色が悪いと見て取った松本零士は、次の展開に出ざるを得なくなった。
なぜなら、「ヤマトの権利は自分にある」ことを前提にビジネス展開するために、ベンチャーソフトやらなんちゃらという会社が、くっついてきてしまったのだ。

ヤマト新作を作るという約束を守らなければ、松本零士は松本零士で、契約不履行だ何たらで、ヤバイことになる。

というわけで、これまでの「宇宙戦艦ヤマト」のデザインやキャラ名を離れた別物の作品を立ち上げようということになり、それが車検、パチンコ、OVAで2002年から展開した、大ヤマトだった。

ヤマト車検は、カーコンビニ倶楽部が提供する車検サービス。
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↓開業当初の、約1メートルの店頭ディスプレイを激写!
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オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-しゃけん
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CRフィーバー大ヤマトは、三共から2002年10月ならびに2004年11月に発売されたCRパチンコ機。
松本零士原作のOVA『大ヤマト零号』
(後に製作会社解散とそれに伴う販売会社変更により『大YAMATO零号』に改題)
をモチーフとしたタイアップ機で、三共と松本零士の初のコラボレーション作品。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-ぽあちんこ1
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-ぱちんこ
2004年11月に続編として『CRフィーバー大ヤマト2』が登場。『CRおそ松くん』(DAIICHI)とともに、確変割合の上限が撤廃された直後に登場した、新基準機第1号マシンでもあった。それまで有り得なかった連チャン性能の高さは大反響を呼び、大ヒットを記録した。

パチンコは一応、OVA『大ヤマト零号』(『大YAMATO零号』)が原作となってはいるが、実際はパチンコが主で、ビデオ作品はほとんど添え物のにわかづくり。
販路も限定なら、演出からデザインまで、何もかもがテキトー感ただよっていた。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-だいやま
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-daiyama

2003年2月、
西崎の銃砲刀剣類所持等取締法・覚せい剤取締法・火薬類取締法・関税法違反事件の上告棄却。
懲役5年6月が確定し、再び受刑者となる。


『宇宙戦艦ヤマト』等の著作物の著作者人格権は西崎であり筆頭著作者であるが、西崎と松本の共同著作物であるとする法廷外和解が成立し、両者は互いに新著作物『宇宙戦艦ヤマト 復活編(仮題)』『大銀河シリーズ大ヤマト編(仮題)』の制作を認め、控訴・反控訴を取り下げる。
しかし、松本の製作する新著作物においては、似て類なる作品は西崎の許可が必要とされた。


で、これで西崎、松本間は手打ちになったはずなのに、西崎氏から権利を譲渡された(著作権者である)東北新社は不満らしく、同和解に関して見解を発表。

「新作を製作する権利は東北新社が所有しており、同和解に含まれる新著作物『宇宙戦艦ヤマト復活編(仮題)』『大銀河シリーズ大ヤマト編(仮題)』につき、東北新社は何ら許諾していない」とした。

だけど西崎義展と東北新社間の『宇宙戦艦ヤマト』の著作権譲渡契約で、新作・続編を製作する権利は西崎義展に留保されていたので、同社の権利主張は何を今さら蒸し返しているのか、ちょっとわけがわからない。

とにかく東北新社は、自分たちは損をしていると被害妄想気味なようで、
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-sinnsha
前述のCRフィーバー大ヤマトシリーズのヒットに対しても、2004年6月に著作権侵害を理由に三共などを相手取って損害賠償や製造販売差し止めを求めて提訴している。
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2006年12月27日に出た1審では、「『フィーバー大ヤマト』と『宇宙戦艦ヤマト』との関連性はない」として原告・東北新社側の敗訴という判決が出されたが、東北新社側が控訴。
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-sinnsha
のち2008年12月15日に、三共などメーカー側が東北新社に和解金2億5千万円を支払うことで和解が成立した。

ちなみに、(東北新社が権利を持つ)藤商事のCR宇宙戦艦ヤマトは、おそらく西崎の釈放に合わせて、2007年12月から開始。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-fuji
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-fuji2

2004年
西崎義展と東北新社、バンダイ、バンダイビジュアルの間の控訴審に於いて司法和解が成立。
3社は西崎に対し「『宇宙戦艦ヤマト』の著作者である旨を公表しても異議を唱えない」事を認めた。

『新宇宙戦艦ヤマト 復活編』の製作が、養子である㈱エナジオの西崎彰司社長より発表される。

2007年
12月19日に釈放される。

12月20日により総監修した「宇宙戦艦ヤマト デスラー総統ワインセット」と「宇宙戦艦ヤマト バイクヘルメット」の販売を発表して活動を再開する。

ということで、中編で話題にした1/350宇宙戦艦ヤマトは、(西崎釈放のほぼ1年前の)2007年1月27日発売だったから、版権表示は東北新社、監修者は誰もつかず、バンダイの開発陣だけが名前を出した。
造形がゲーム版のヤマトだと、また権利関係でもめるので、本当はゲーム版のくせに、そうではないというしかなかった。

その後の西崎氏の足取り

2008年
2月22日に発売される『宇宙戦艦ヤマト』DVD-BOXに特典の監修を担当。
これに伴う形で、2月発売の『週刊プレイボーイ』(2月25日号NO.8)と『オトナファミ』の「2008 Apri」で庵野秀明との対談記事により出所後初めてマスメディアに登場した。
7月31日に東京都練馬区にアニメスタジオ「ヤマト・スタジオ」を開き、2009年公開のアニメ映画『宇宙戦艦ヤマト 復活編』の製作を発表。

そして----

オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-homue
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-sakai1
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-sakai2



ふう、これでやっと語り終えた……わけじゃない。

けど、もうみんなウンザリだろうから、続きは次回。

ここまで読み通してくださった方、ありがとうございました!

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