シスの復讐(前編)CJてんまつ報告(12) | アディクトリポート

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さて、長い長い前振りも終わり、いよいよCJてんまつ報告の核心に。
別に引っ張るつもりでもなんでもなく、これから書いていく内容の前段として、説明する必要があっただけのこと……ではありますが。
ではまず、タイトルの『シスの復讐』から。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-タイトル
(こういう段取りがまた、たくさん書かなきゃいけない原因にもなってるんだけど)

アメリカでこのタイトル「リベンジ・オブ・ザ・シス」が、2004年のサンディエゴコミコンで発表された時、あまりに当たり前で工夫のない題名に拍子抜けしたものだ。
↓タイトル発表と同時に発売されたTシャツ。ぬかりないよね。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-Tシャツ

ファンなら誰でも思いつき、「エピソード1」の時のファンクラブ会報、「スター・ウォーズ・インサイダー」43号の表紙にだって躍ってたんだから!
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-インサイダー

もしも『エピ1』が『ファントム・メナス』と原題カナ表記なのに揃えるなら、『エピ2』は『クローンズ・アタック』を提案した。だったら『エピソード3 リベンジ・オブ・ザ・シス』は、どうすればよかったのか?
『リベンジ・オブ・ザ・シス』が長すぎるなら、『シス・リベンジ』はどうでしょう。

とまあ、題名についての話題は短めに切り上げて、CJにおいてのシスTK氏の企みと、それがことごとく功を奏さなかったことに関して、話題を移させていただきます。

SWCJの事前打ち合わせのために、スティーブン・サンスイートが来日した2008年4月16日。
なんで詳しく月日まで覚えてるかってえと、私の誕生日だから。
同じ誕生日の有名人は、
チャールズ・チャプリン
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-チャプリン
「ピンポンパン」の坂本新兵
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-新兵
コント55号の坂上二郎
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-二郎
そしてチュートリアルの徳井義実
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-徳井
というわけで、共通項は「お笑い」。

それはとにかく、47歳の誕生日のその日、会議室の現場で、日本人スタッフ(小プロのSW重鎮のO〈オー〉さん)とサンスイートから、相談を持ちかけられた。
「これをCJで販売するんだけど、翻訳に難がある。悪いわけじゃないけど、手放しで褒められもしない。時間があるなら、直してくれないか」

そこにあった表紙がこれ。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-アート

表紙からいきなり問題がある。
ザ・アート・オブ ラルフ・マクォーリー

「ザ・アート」じゃなくて、「ジ・アート」だし、そもそも日本では定冠詞の「ザ」は省略だよ。
↓SW展だって
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-SW展2
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-SW展
↓美術設定集だって、みんな「アート・オブ」
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-旧二部
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-新一部


それになんで、アート・オブとラルフ・マクォーリーの間が「・(ナカグロ)」じゃなくて、全角スペースなんだろう。

中身をのぞいてみたら、翻訳者は、例のTK氏になっている!
なんでサンフランシスコ郊外のすし職人が翻訳するんだよ!

その場でざっと見渡したところ、表向きはそこそこ違和感ない訳にはなっている。
なんと言っても、20年もアメリカにいて、日本語と英語はペラペラだから。
だけどやっぱり書き言葉としての日本語や、本のルールは知らないから、仕方ないとはいえ、あちこちにほころびが目立つ。
いわゆる画集だから、完璧な日本語までは望まないのかも知れないが、海外の日本人向けに売るんならともかく、日本で純然たる日本人に売る水準には達していない。

というわけで、なるべく原文を尊重しようと、帰宅してから直しにかかった。
だけどやっているうちに、だんだん腹が立ってきた。
初仕事だからしかたないとはいえ、気力が最後まで持続しておらず、後の方がいいかげんになっている。
よくこれで、「自分がやります」と引き受けたもんだよ。
少しだけ直すんじゃ、TK氏だけには良いかもしれないが、これを買う人たちが迷惑するんで、ならばマクォーリー氏との因縁のある私、翻訳者の全身全霊で、徹底的に直すことにした。

ここではジョージ・ルーカスの序文から、元のTK氏の訳(赤字)と、私の修正版(青字)を比較してみていただこう。

序文             ジョージ・ルーカス
序文『荒ぶることなき巨匠』     ジョージ・ルーカス


「ラルフ・マクォーリーはスター・ウォーズ・ユニバースの静かな、心優しい巨人である」
ラルフ・マクォーリーはスター・ウォーズ・ユニバースにおける、心優しき巨人である。

とてつもない才能があるにもかかわらず、物静かで控えめだ。それまで奇妙な生物や空飛ぶ海賊船、仮面をつけた冷酷な悪者たち、それに人間性を持ったロボットたちがひしめく『使い古し』の宇宙を想像することしかできなかったが、私はついにそれらを、ラルフの力を通して目にすることが出来たのだ。ラルフを紹介され、彼が友人に描いた空想的なコンセプト画を見たそのときから、彼こそが私の“遥かかなたにある銀河”を視覚化してくれる人だということが分かった。
とてつもない才能があるにもかかわらず、物静かで控えめだ。それまで、奇妙な生物や空飛ぶ海賊船、仮面をかぶった冷酷な悪漢たち、それに人間味のあるロボットたちがひしめく〈使い古された〉宇宙などというものは、頭の中に思い描くことしかできなかったが、私はそうしたものを、ラルフの力を通して、ようやく実際に目にすることが出来るようになった。ラルフを紹介され、彼が私の友人たちのために描いたコンセプトアートと、そこに描かれた日常離れした情景を目にしたその時から、彼こそが私の〈遥か彼方にある銀河〉を視覚化してくれる人物なのだということが分かった。

ラルフは真の協力者だった。私たちはすぐに毎日の簡単な作業パターンを作り上げ、それは上手くいった。私はシップ、キャラクター、シーンなどについて彼と話し、—たぶん参考資料や自分で描いたちょっとした下書きも彼に与えて—そして彼はスケッチを描いた。その後、それらを見直し、意見を述べ、ラルフはそれを書き直した。この繰り返しのうちに、ラルフは画を描く準備を整えた。何と素晴らしい画だったか!ラルフは常に彼独自の精密さ、質感、デザインを付け加え、それら全てがスター・ウォーズの全体像を作り出す上で、大きな助けとなったのだ。
ラルフはまさに、手に手を取り合って仕事を分かち合う共同作業者といえた。私たちはすぐに毎日の簡単な作業手順を決めて、それは首尾良く機能した。私は宇宙船、キャラクター、各場面などについて彼と話し、--たぶん参考資料や、自分で描いたちょっとした下描きも彼に与えて--彼はそれをスケッチに描き起こした。その後、スケッチを見直して意見を述べると、ラルフは描き直すといった具合で、これを繰り返しながら、ラルフは最終作品を描く準備を整えていった。できあがった作品の、何と素晴らしかったことか! ラルフは常に彼独自の精密さ、質感、デザインを付け加え、それら全てが、スター・ウォーズの全体像を作り出すための、大きな助けとなったのだ。

ラルフがILMに絵を持ち込んだ時、いつもちょっとしたセンセーションを巻き起こした。最新作のカバーをめくり上げると若い社員は彼の周りに集まってきた。彼は、社員たちが製作中のシップや他の模型が最終フィルムの中でどのように見えるかを説明した。スタッフたちがそこからインスピレーションを受けていることは明らかだった。数年後、ラルフがスカイウォーカー・ランチの『エピソード1』の美術部門にやって来た時も、人々が同じような畏敬、賞賛、好意を彼に寄せているのを目撃した。私はその時、芸術家ラルフがこの世界のアイコンとなったと感じた。彼は注目の的になるのが苦手のようだったが、集まっていたアーティストの誰かが「私がここにいるのは、あなたの仕事に影響されたからです」と伝えた時、彼は感激していたに違いない。
ラルフがILMに作品を持ち込むたびに、現場のクルーは大いに盛り上がり、色めき立った。完成したての最新作のカバーをめくり上げると、若いクルーは彼の周りに集まってきた。ラルフは、クルーたちが造形に取り組んでいる宇宙船などの模型が、最終画面の中では、どのように映るかを説明した。スタッフたちがそこからインスピレーションを受けていることは明らかだった。数年後、ラルフがスカイウォーカー・ランチの『エピソード1』の美術部門を訪ねて来た時も、クルーたちが同じような畏敬、賞賛、好意を彼に寄せているのを目の当たりにした。私はその時、芸術家ラルフがこの世界のアイコンとして定着していることを感じた。彼は注目の的になるのを居心地悪そうにしていたが、集まっていたアーティストの一人が「私がここにいるのは、あなたの仕事に影響されたからです」と伝えた時には、さすがに感激していたようだった。

最後の締めの言葉だけは、一字一句変えていない。

私は常にラルフの芸術性や想像力を信頼し、また、彼は私を失望させることはなかった。ただの一度も。
私は常にラルフの芸術性や想像力を信頼し、また、彼は私を失望させることはなかった。ただの一度も。

結局、キャプションに至るまで、修正なしで生き延びた部分は1カ所もなかった。
そこで翻訳を私名義に直し、TK氏は「翻訳協力」にした。

サンスイートも、この本の版元のスタン・スタイスも、「もうTKには二度と頼まない」と言ってたが、そもそも最初に、彼に仕事を託す方が、どうかしているじゃないか。

最初のメールのやり取りの時、スタンには「以前にお会いしてるんですが、覚えてますか?」と訊いたら、「ああ、覚えてる」と言われた。

文章の差し替えは、スタンが手作業で行い、終わるやたちまち、印刷・製本に回ったらしい。
きちんと指示しなかったこともあり、表紙の題名間違いは、結局そのままになってしまったし、哀しいかな一部キャプションの重複もある。
だけど、限られた時間内では、ベストを尽くしたんですよ。

この件だけで、あと2回は話が続きます!

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