おすすめ自転車を題材にした漫画
日本人は国民の99%が自転車に乗れる稀有な民族です。
都心でも一人一台は当たり前で、遊びから買い物まで大活躍ですが、自転車スポーツには関心がない国民性です。
短距離走やマラソンはスポーツとしても人気ですが、そこに自転車が加わると一気にハードルがあがり興味が持たれません。あくまで自転車=日常道具なんですね。
ですが自転車スポーツを題材にした漫画は結構ありますのでご紹介します!
1.弱虫ペダル
言わずと知れた自転車漫画の代表作。
「自転車界のワンピース」とされ、(主に女性から)圧倒的な人気を誇ります。
ストーリーとしては日常道具として自転車を酷使していた主人公がロードバイクと自転車競技と出会い、高校の部活で活躍するというもの。
この漫画のすごいところは「自転車を一切しらなくても熱くなれる」ということだ。
機材スポーツなので大抵の漫画ではうるさくウンチクが流れ、ルール、マナー、テクニック解説に終始しがちだが、弱虫ペダルではほとんどやらない。
ヒカルの碁のように「すごくおもしろかった 囲碁のルールは結局わからかったけど」ということを実現するのは並大抵ではない。
それを実現するために実際のロード競技とルールや戦法を変えている。
実際のレースは複数日のタイム合計で優勝を決め、途中にもチェックポイントがあり上位通過者にはタイムが与えられるが、弱虫ペダルでは「一番先に最終ゴールにたどり着いた人が勝利」という至極わかりやすく燃える展開のルールになっている。
だって「デッドヒートの末最初にゴールしたのは主人公だけど、タイムでいうと負けてるから負けね」とか燃えないじゃん。
戦法も「チーム6人で走る」ということが大前提になっている。
実際は自転車は集団で走るほど空気抵抗を受ける先頭車になりにくいので固まって走る方が有利。なので大集団と、それから先行して逃げる逃げ集団に別れる。
逃げ集団にチームを送り込んでいると、そのまま逃げ切ればそれでよしだから大集団で引かなくていいので力を温存できる。大抵の場合逃げきれず途中でまたごっちゃに戻るが、疲労蓄積度は違うのでそこからさらにスパートを・・・という流れになりがちだが、ややこしいし、「坂道くんが逃げてるから主将の俺は力を温存するため後ろでまったりしてるぜ」なんて熱くないじゃないですか。
なので弱虫ペダルではチーム全員が固まって動く 絵的に盛り上がるから。
この大集団で協力して先頭捕まえようぜ!というやり方は至極当たり前の行為だが、作中では広島チームがまるで汚い手かのように使われているのが面白い。
弱虫ペダルの魅力は自転車競技の魅力ではなく、キャラだ。
各キャラ非常に強い個性がありレース中も過去の苦労話が流れ、感情移入できる。
なんと各自必殺技まで持ち、羽が生えて加速するやつまでいる。
必殺技をぶつけあい戦うのはさながらバトル漫画だ。
演出も非現実的だが熱い。
負けそうになるとサドルを抜いて少しでも軽量化して追いかけたり、漕ぎすぎて目が見えなくなっても漕ぐ。ライバルが失神する、引っ張って落車させる等。
「いやいやいやwwwwサドル抜くには六角レンチで回さんととれへんやんwそんなことやってる間に先いかれるわwてかサドルとってもそんな効果ないからw」
という突っ込みは野暮である。「ロードバイクや自転車競技を知らない人でも熱くなれる 面白いと思う」というのが弱虫ペダルの狙いでありオタからのウンチクはいらないのだ。
「ビンディングペダル(足とペダルを固定する器具)を使うと引き足も使えるから2倍速いぞ!」ってのはかなり言いすぎだがわかりやすいパワーアップとしてはそれでいいのだ。
実際作者の渡辺氏はガチの自転車乗りであり週間連載しながら日本縦断したり大会に出まくるなどの立派なアマチュア選手。ルールがおかしいとかこんなのは現実にありえないということは当然承知の上、どうすれば自転車競技を面白く、知らない人に伝えられるのだろうと考えた結果、弱虫ペダル独自のルールや戦法があるのである。
ストーリーは荒唐無稽に見えるが、絵はかなり自転車に詳しい作者ということがわかる。フォームもしっかり正しく描き、ボトルの飲み方や汗のぬぐい方など細かい部分で「おっ この作者自転車詳しいな」というのを醸し出している。二番煎じの自転車漫画はこの辺が雑で自転車そのものの形も怪しいものが多い。弱虫ペダルは荒唐無稽なテニスの王子様みたいだと言われることもあるが、現実のテクニックを誇張するくらいにとどまっている。
実際弱虫ペダルハマったから自転車買った!とか違う漫画も読む!て人はいるだろうが、長続きしないのは現実とのギャップがかなり大きいからかもしれない。
2.のりりん
「なるたる」「ぼくらの」「ヴァンデミエールの翼」などの数々の名作鬱漫画を手掛ける鬼頭莫宏先生がまさかの自転車漫画を描く。
テイストとしては前述の弱虫ペダルと真逆。
熱いレースではなく日常のサイクリングやマナー、ルール、機材のウンチクがメインとなっている。
登場人物たちも最初はロードではなくクロスやマウンテンバイク、折り畳みまで多種多様。
もちろん自転車漫画として誰かと競争する展開はあるが、主人公は素人で強くない。そこで道交法や車との関係を上手く活かしいいところまでいくが結局勝てないくらいに落ち着かせているのが俺TUEEEEではなく好感が持てる。
機材に関するウンチクは群を抜いていてなぜロードバイクは今の形なのか、もっと速く走れる形があるが協会の規制が・・・なぜロードバイクのタイヤ大きいのか、小柄な女性は小さいほうがいいがなぜ少ないのか・・・など細かすぎるところまで説明される。
あれだけ機材を語っておきながら「これに乗っても勝てるわけないよ 自転車なんて機材より乗ってる人が遥かに重要 ビンディング?素人が使っても2倍速いとかありえねー坂道楽になるくらいじゃない?慣れてきてから使えば?」と結論付けるのも現実的でいい。
主人公も強くはなるが百戦錬磨のライダーにはまともに勝てない。
上手く戦法を活かして多少なりともチームに貢献する程度で収まっている。
決して特殊能力が開花して熟練ライダーが「なにぃ!こいつみたいな逸材がどこで!」とかにならない。
マナーについても一番うるさい漫画。折り畳み自転車でもヘルメットを絶対かぶれだの歩道は乗らずに押せだのネットの偏屈な自転車乗りみたいな説教も多い。
安全にうるさい割に道交法違反のトレイン(車間距離をあけず前の自転車にくっついていく走り方 前や足元先が見えずに危ない 連鎖でコケることも)については推奨したり、夜間走行でライトの重要性を語らない、義務ではないヘルメットは安全のため強制するがプロテクターについては触れないなど、自転車乗りにとって都合のいいマナーを他人押し付ける感じは本当にこんな人いるよなあて感じる。まぁ確かにどれも重要なんだけどね。逆走しないとか。
弱虫ペダルを読んで自転車を買おうとした人にはその前にのりりんを是非読んでもらいたい。 弱虫ペダルで語られる自転車マナーは「自転車は、車道を走るんだぜ!」くらいしかないから。
他の作品では鬱展開が多い作者だがのりりんはスポーツ漫画にしては暗い雰囲気はあるものの誰も死なないので安心してください。
3.かもめ☆チャンス
父と娘そして自転車の物語・・・
自転車漫画の中では最もストーリーがエモい。
父子家庭で幼稚園児の娘を育てる信金マンが主人公。
ノルマに追われ、泥臭い営業をし、子供が熱をだしたら全力で迎えにいく・・・
そんな大変な日常を送る中、顧客のロードバイクを壊してしまい、許されるためには見栄っ張りな顧客の替え玉でロードレースにでることに・・・というのがあらすじ。
とにかく心に刺さる名言が多い漫画です。
「お前はあの大集団のような烏合の衆だ」
「烏合の衆でいることがどんなに大変か、朝4時に起きて弁当つくって子供おこして着替えさせて送り迎えして、仕事ではリストラされかけながらも必死に預金集めて、熱をだせば仕事ほっぽって迎えに行って看病して・・・烏合の衆の鳥にもかけがえのない人生があるんだ」
「仕事・・・育児・・・義理の親からの圧力・・・毎日大変ですが、あのロードに乗っているときだけは一人なんです」
「子供は宝なんかじゃない、俺の一部なんだ 自分に否定されたら、そりゃあ気持ち悪いよな」
前半は子供や仕事の関係性が、後半はロードレースがフィーチャーされます。
これは作者に娘が産まれて、それにからめた自転車漫画を作ろうとし、描いてるうちにロードレース観戦にハマったからということです。影響が強い。。。
ロードレースでは弱虫ペダルとは違い、現実的な戦法が徹底的に解説されます。
大集団と逃げ・・・送り込む心理戦と妨害戦など演出しつつもリアリティのあるレース展開が多いです。強い選手も作戦が悪ければあっという間に脱落します。
弱虫ペダルでは漕いでる選手がワーワー話してストーリーが進みますが、かもめチャンスは実況やサポートカーからの解説という形で展開を語っていきます。実際選手は走行中喋りませんからね。技名を叫びながら加速するのは弱虫ペダルだけで十分です。
自転車漫画では珍しくロードレース以外のピスト(シングルギア、固定ホイールの自転車。競輪で使う奴。若者がノーブレーキで乗り回すのが問題になった)シクロクロス(泥や階段などもコースにある自転車界の障害物競走)も取り上げられています。
実業団(プロの自転車選手)の年収が僅か200万円で競輪のが遥かに儲かるとか、日本人が海外で活躍するのがどれだけ大変かなどの業界話も多いです。
主人公やそのチームメンバーはキャラ付けがしっかりしていますが、ぽっと出の敵キャラは大したキャラ付けがなく、誰が誰だかわかりにくい印象でした。弱虫ペダルと違いやたらデカかったり手足が長かったりせず、全員おっさんでヘルメットにアイウェアつけてますんで区別しにくいです。主人公が強い理由が山岳スキーやってたから下りは速いってだけなのは少し弱い気がします。
最初は家族愛と自転車の話だったのに後半はロードレース実況漫画になるなど読み手を選びますがエモーショナルでドラマチックなストーリーと躍動感ある絵は一番好みです。
こんな切ないスポーツ漫画があったでしょうか
4.じこまん
かもめ☆チャンスの作者の自転車にまつわる自伝漫画です。
どのようにロードバイクに出会い、どのように乗ってきたかを描いています。
じこまん=自己満足であり、「お金出してスマホやPC買っても数年後には陳腐化する、腕時計やロードバイクこそが漢の一生モノだ!」という価値観でロードバイクを買い、一生モノとかいいつつハマってきて2台目3台目を買う・・・ のような実体験に基づくあるある漫画です。
「サイクルパンツ!?ノーパン!?高すぎだろジャージでええわ」といいつつ買ってみたら快適なのでヤフオクで古いの探してたら昔のは素材がウールでチクチクするとか、自転車漫画は大なり小なりあるある要素を含むのですが実体験すぎて「あったんだろうな・・・」という感じです。
おすすめの装備やオプション、自分なりの走行ルート、レース観戦はここで見るなど作者の自転車ライフを漫画にしたものですね。
娘の話やレース観戦などの話は思いっきりかもめ☆チャンスに影響及ぼしている部分だと思いました。佐渡島ロングライドに編集メンバーと参加したら豪雨とかパンク修理しようとしたらなぜか自転車がバラバラになっていたなどの小話も含み、結構面白かったです。案外こういう本ってないですよね。自転車ブログを漫画にしたような・・・そんな感じです。
5.シャカリキ!
結構古い自転車漫画で、日本のロードレース漫画の金字塔です。
元祖弱虫ペダルであり、幼少期坂の街に住んでいた少年がロードバイクに出会いレースで俺TUEEE していく、王道の展開です。
チームロードなどくそくらえ!といい個別に限界出して走り、熱い展開が続く・・・まさにこれを現代風にリメイクしたのが弱虫ペダルなのではと思うほどです。
かもめ☆チャンスであれだけ解説していた戦法だの心理戦などは皆無です。
さすがに時代が古くシフターの位置が現代とは異なるなど時代を感じる部分もありますが、選手の熱い思いで坂道を駆け上がる!そして勝つ!というのは永久不滅の面白さです。
6.ろんぐらいだぁす!
唯一女性主人公で、レースしない自転車漫画です。
タイトルの通り、ブルベ(1000kmくらい走るレース)完走を目指し、初心者の主人公がサイクリングする漫画です。
自転車漫画の中では最も実用的で、車種選定やパンク修理のあるある、輪行の楽しさや雨天や夜間走行時の注意点などを主人公と一緒に勉強できます。
レース漫画じゃないのでうおおおお!みたいな展開はなく、淡々とロングライドあるあるを交える日常系漫画です。
レーパンの太ももの書き方がヤラシイです。自転車の萌え漫画です。
決して中身がないわけじゃなく、自転車漫画としていいバランスでストーリーとウンチクが語られており読みやすいです。自転車買ったら読んでほしい。
まったりとしたかわいらしい主人公ですが、最初折り畳み自転車を買って、名前までつけて可愛がっていたのに後から友達のを見てロードを買い、その後「使い分け使い分け」といいつつ折り畳みはロードを修理で預けた時にしか使わないという非情さもあります。
日常系自転車漫画はこれしかないし、内容も面白くてキャラも可愛いのですが、作者がおっさんなのに作者が自転車乗って〇〇しました!みたいな巻末コーナーをかわいい登場人物で描くのが気持ち悪いです。
ちゃんとしまぶーみたいな作者キャラを作ってください。オッサンのセリフを女子大生のキャラに言わせるんじゃない。かわいい絵柄ではありますがデフォルメ系の雑っぽい作風なのにやたらと性を強調するシーンもウーンって感じです。