空と風と川の流れを. -37ページ目

空と風と川の流れを.

 空と風と川の流れを求め,素の自分を表現できたら良いなと.

 画像は、数日前に郵便受けに入っていた米国内のある大手フライショップのカタログである。その毛鉤のページの多くの淡水用ドライフライ、ニンフ、ストリーマーが掲載されている。その中にはウェットフライは一本も掲載されていない。

 米国と欧州の釣り方の違いなのだろうけれども、ウェットフライの釣りは異質なものなのだろうか。そのあたりの歴史的経緯を述べるとなると莫大な量になってしまうのでここでは避けるが、下の画像、1934年の英国ハーディーのカタログ本、"The Anglers Guide Book"には、現在に至る基本的なウェットフライパターンがすでに掲載されている。

(画像は1937年のHardy's Anglers Guideの一頁)

 

 実際、釣りの友人たちと話しをしていても、ウェットフライをメインにしているというだけで”異質な人”として扱われていることもあるし、自分の周囲にはドライフライの釣りをメインにする人が圧倒的に多いのも事実である。それだけドライフライの釣りは分かりやすい釣りであるし、魚が水面を破って飛び掛かってくる分、明確かつ躍動感を感じるものだろう。

 ウェットフライで釣るか、ドライフライで釣るか、

 これは釣り人の好みにもよるところが多いと思うが、故田淵義雄氏は『日本の川ではドライフライの釣りが向いている』と氏の著書で述べていたという記憶がある。それはイワナやヤマメを対象とすると、それらが生息する川の規模は小さく、水深もそれほど深くないので魚と水面の毛鉤までの距離からしてドライフライの釣りが向いているだろう。そして山岳渓流や里川であっても流れが急でもあるのでドライの毛鉤が見破られにくい、つまりマッチザハッチが比較的厳密ではないのだ。

 しかし、たとえ日本の河川であっても規模がおおきくなればなるほどドライフライの釣りは難しくなる。本流ではなかなかライズはみられないし、その日の気候や水質、水温にも大きく影響される。

 ドライフライの釣りは、魚が水中のどこにいて、どこを見て餌を狙っているのか、その場所に毛鉤を投げ入れるのが基本である。できるだけ警戒されず、自然に。いわゆるナチュラルドリフトさせて毛鉤を流していく。

 

 ではウェットフライはどうなのか。

 ウェットフライの釣りは餌釣りの延長だと思う。

 

 ドライフライの釣りでは、魚が水面を破って飛び出して捕食するので、魚は鳥などの天敵に対する危険を冒す必要があるので、魚の警戒心という点で水中かあるいは水面かにおいて大きな差があると思われる。その点ウェットフライの釣りは水中での捕食活動の範囲で捕食させるので魚にとっては警戒心が幾分低いのではないか。

 あと、ウェットフライの方が平均として大きい魚が釣れやすいというものある。これは多くの釣り人において一致している見解である。マス釣りにおいて体が大きくなればなるほど貪食であると言われるけれども、水生昆虫から小魚を餌とする。だとするなら、ウェットフライの形は昆虫だけでなく小魚もカバーしているともいえる。例えば、最もシンプルなウェットフライであるオレンジ&パートリッジは真っ直ぐに引き続けることで明らかに小魚を模していると言える。

 

 実際の釣りにおいては、ウェットフライの釣りでは、斜め下流に向けて毛鉤を投げ、流れに乗せて流れ切ったところで毛鉤を手前の流れまで泳がせる”スイング”させる、と言われるが、実際の場面では必ずしもそうではない。毛鉤を流れに乗せ、魚が居着いているであろう場所まで毛鉤を送り込み、毛鉤を見せつけるようにその場所を横切らせて、流れ切ったところでラインを回収する。

魚が大きくなればなるほど、流れが緩やかなになるところに居着いて捕食していて、しかも川の流れの真ん中にいることはない。ほとんどの場合が川岸あるいは沈み石が作る窪みなどに居着いている。そういった場所にいかに毛鉤を送り込むかが重要だと思う。

(つづく)

 

 

 釣りへのモチベーションが戻ったことで、自宅でも釣具に触れたり、毛鉤を巻いたりすることが多くなった。

 特に次回の釣りを想像し、使う竿とそれに合わせるリールを選別したりするのだが、手持ち無沙汰にリールを手に取ってチリチリと回してみる。机の上には常に4−5個ほどのリールが無造作に置いてあったりする。

 画像のリールは全て英国性Hardyのものであるが、左上はFlyweight。Lightweightシリーズの最小モデルであるが、これもビンテージ扱いの1950年代のもので、日本にいるときに知り合いから譲り受けたものである。左下はFetherweightの限定ものでGolden Featherweightと呼ばれる。確か1990年代に日本限定で販売されたものである。これも釣りを始めた当初からずっと使っているものである。

 先日のアパラチア山脈スモーキーマウンテンでの釣りで使ったのだが、川の流れの中の50cmクラスのニジマス、ブラウンをかけた際には普段聴くことのない急激な逆転音を響かせてくれた。そんないきなりの場面においてもこのリールは、ドラグを調節し魚をバラすことなくしっかりと対応してくれたのだからその性能に関心してしまった。さすがだなと思う。

 

 右上はUniqua 2 7/8のビンテージもので1930年代のもの。在庫品の中のものであるがあまり状態が良くない。この時期のUniquaには難があり、リールの竿との取り付け部分のフットと呼ばれる部分が軽量金属であるアルミニウムでできていて、当時の最新の素材を使ったものであることが窺えるのだが、フットとリールの本体を繋ぎ止めてあるリベットが一本だけであるので経年変化によりフットが浮いてしまいグラグラして実際の釣りには使えなくなってしまう。またスピンドルと呼ばれるリールの回転軸が真鍮でできているのだが、この時期の真鍮は柔らかすぎるのか使用とともにすり減ってしまいスプールがぐらついてがたつきが出てしまう。以前にこれと同じ時期の異なるサイズのものを持っていたのだが、当時はまだ英国Hardy社に直接連絡して修理を依頼できたのだが、現在ではその窓口は見当たらない。

 仕方がないので応急処置として金属製のパテをフットとボディが浮いているところに流し込み接着してがたつきを抑えた。回転軸だけはどうしようもないので粘性があるグリスを先に塗って厚みを持たせ、その表面にさらりとしたグリスを薄く塗ることで幾分型付きが抑えられた。こんな貴重なビンテージもののリールなのにこの状態。果たして売れるのだろうか。安くして売るしかないのだろうか。

 

 そして右下のこのリール、Featherweightのビンテージもので1957年から数年生産された最初期のもの(下の画像)。左下の近年のものと同じであるが年代が違うのである。左下のものと比べるとスプールに開けられてある穴がいくらか大きく軽量化が図られている。そのせいか、回転させると左下のものと比べるとわずかであるがカリカリというクリック(チェック)の音の調子が高く、澄んだ音のように聞こえる。

 夜、寝る前に机に向かっていると手に取ってこのリールを回転させてみたくなる。手持ち無沙汰に。しかも不思議と飽きないのだ。なにがいい音か心地よいのかわからないが、嫌な音ではないし、この音を聴いたところで川を思い浮かべるというほど想像力は豊ではない。ただ、このリールは左下のものと同様、かなり軽量なのだ。少し調べてみると、現在販売されているリールの中でもかなり軽量の部類に入り、Hardy社の他のリールと比べててもダントツで軽いのだ。Perfect 2 7/8と比較すると80g、St. George 3”とでは65gも差がある。この重さは当然竿とのバランスと長時間の釣りにおいて手首の疲労につながるはず。次の釣りで使ってみたいのだが。

 

 ああ、釣りに行きたい気持ちが抑えられない。

 

 

 こんな風景をずっと観たかったように思う。

 

 気が付けば丸一年、釣りをしていなかった。

 片道五時間の運転で目指したのはノースカロライナ州のチェロキーという街を流れる川。

 昨年の四月にこの辺りに来たとき次ぎはそこで釣ろうと決めていた。その川はキャッチ&リリース区間が設定されていて、しかもフライフィッシングだけ許されている区間がある。

 

 一日目、到着したのが夕方になってしまい、釣りを開始したのは5時だった。

 空中には小さいカゲロウ、ミッジが飛んでいる。とはいえ、毛鉤に選択肢があるわけでもなく、毎度同じの小さいウェットフライを結んだ。

 ほどなく魚がヒットした。流れに逆らって魚とやり取りする。リールが鳴く。しかしバラしてしまった。次も同じく。

その次にヒットした魚に対しては、ラインのテンションを必要以上にかけず、時間をかけて丁寧にやりとりした。50cmぐらいのニジマスだった。さすがC&R区間だけあって魚はたくさんいる。

 二日目、朝はゆっくりして、10時頃に川に着いたが、快晴かつ高温しかも渇水気味。しかも虫っ気もないので釣りにならない。夕方にも再度いったが同じく。そういう日もあるさとさっさとホテルへ。

 三日目、最終日、午前中だけ釣りをすると決めていた。朝飯を取った後、8時に川に着いた。空は曇りで、かなり涼しい気温。山には強く霞がかかっていた。車を川沿いの道を走らせていくと冷たい風が車内に入ってきた。これだよ、これ。この感覚。一気に釣りへのモチベーションが上がった。久しぶりに釣りへの意識が覚醒した。

 案の定、釣りは最高だった。上流の山間部で雨が降ったのだろう。水位は上がり少しばかり濁りが入っていた。

 たった二時間の間に50cmほどの鱒が4尾ほど。その後、雨が降り出し強くなってきたので釣りをやめた。

 

 あれから一週間が過ぎた。完全に釣りへの気持ちにスイッチが入ってしまった。

 今週末は仕事があるので無理、来週あたり一泊二日でいければ。。。