Fishing Routine | 空と風と川の流れを.

空と風と川の流れを.

 空と風と川の流れを求め,素の自分を表現できたら良いなと.

 ここぞという場所に毛鉤を落とし毛ばりが流れに乗る。魚が毛鉤に気付いてみてくれていることを祈りつつ出来るだけ毛鉤がゆっくりと進むか、あるいは魚がみてくれているであろうところに毛鉤をできるだけ止めておくようにする。そして魚がその毛鉤に飛び掛ってきて加えてくれる。この瞬間がドライフライの釣りの醍醐味だと思う。付け加えるなら、その横から別の魚が飛び掛ってきたらその意外性に驚き楽しく思う。

 日本の里川や山岳渓流では岩や石が多いのでポイントを絞り易い。『叩き釣り』という言葉があるが毛鉤をポイントにぺんぺんと落としながら釣りあがるという方法が多い。それはどこの川に行っても同じ方法で釣る。魚が居ついている場所に僅かな差があるとはいえ、その方法に大きな差があるわけではない。たまに開けたプールやただ広い流れでライズを狙う場合もある。長良川のミッジングなんかそうだよね。でもそういう釣りに飽きてしまった。自分自身飽き性かもしれない。

 飽きてしまうと釣りの旅以外に目が向いてしまう。

 その地元の名物を食べる、日帰り温泉に入る、観光地の名所に行くなど。

 

 釣りをはじめてしばらくしてから福井、石川県、北陸地方に行くようになった。

 その場所は、福井県を横断して石川県に入ったところの山あいの集落、スキーと温泉で有名な場所である。それゆえ、夏場は閑散としているのでかえってそれが好ましく思うのでよく通った。その集落を流れる川は広く支流も多い。魚もたくさんいる。夜通し大阪から車を運転して明け方に着くと、まずコーヒーを淹れる。しばらくすると空が白んでくるので釣りをはじめる。午前10時頃まで釣って朝の部を終える。

 そこから、その集落の中の一軒の地元の食料品店に行くのが常だった。その土地の名物は『固豆腐』。木綿豆腐よりもさらにしっかりした固さの豆腐で大豆の味が濃い。その食料品店ではその固豆腐をおでんのような出汁で煮込んだものが売られている。それを一つ買って、缶ビールを片手に歩いてすぐの神社の境内で一杯やる。真夏だというのにそこは涼しい。心地よい風が通りぬける。ビールが喉にしみる。固豆腐の味とそこからにじみ出る出汁がさらに美味しく感じる。ほとんど人は見かけない。風を感じながら静かな時間が流れる。

 そこから昼食が取れるところに移動する。目に付くようなレストランやコンビニなどない。数寄屋造りとでもいうのだろうか、木造と漆喰の民家のような一軒が蕎麦屋で、そこで昼食を取るのが常だった。

 

 その後はお決まりの温泉。その場所は温泉地であるのでいくつかの風呂屋があるのだが、一つは観光客目当ての日帰り温泉の施設、もう一つは地元の人々が普段から利用する、いわゆる”元湯”。どちらも好きだったが、日帰り温泉のほうには休憩所もあるのでそこで昼寝をするのが好きだった。

 

 時計が4時を回る。そろそろ釣りの時間。ということで疲れで重い身体をなんとか動かして川に向かう。

 日没まで釣りをすると時刻は7時。そこからまた大阪まで運転して帰るとなると、途中の休憩も含めて到着は深夜12時を過ぎることもある。30代はそんな釣りを二週間に一度はやっていたが、今はもう無理。

 そういえば、昨日は9月末日ということで日本の渓流はほぼ全て禁漁になったね。

 こうやって昔のことを思い出してみると、釣りに何を求めていたんだろうかとわからなくなる。

  

 今、米国に住んでいて、もちろん釣りにでかけるのだが、数より大きい魚を求め、それよりも美しい川と景色のあるところを求める。アメリカには日本のような地方の名物などはほとんどないので、もう一つの楽しみのとしてキャンプになる。キャンプのときの飯はなにを作るかなども楽しみになる。

 来週か再来週、釣りに行けたらなぁ。。。