Wristwatch, 腕時計 | 空と風と川の流れを.

空と風と川の流れを.

 空と風と川の流れを求め,素の自分を表現できたら良いなと.

 腕時計について書くことにする。

 

 高校三年生のとき自分は理系選抜クラスにいた。といっても進学校ではない就職組と進学組が半数ずついるような高校だった。理系クラスの生徒ほとんどが工学部を目指していた。中には高校生でありながら、電気回路や機械にやたらと詳しい人間がいて、今では懐かしい言葉になってしまったマイコンを自作したりする奴もいたり、簡単な電気回路の故障もさっさと修理できる者もいた。当時はまだカセットテープの時代、ソニーのウォークマンが普及してきた時代だったが、よく壊れてくれた。それをクラスメートの電気回路に詳しいやつに持っていくと、筆箱から電池式のはんだごてを取り出してさっさと修理するのだから、恐れ入った。なにしろ、自分は理系クラスとはいえ生物学を専攻していて物理学は全くといって勉強することはなかった。実際、今でもそうであるが、精密機械や電子回路を設計したり組み立てたりできる人にはかなりの憧れがある。

 

 精密機械といえば、腕時計もそのうちに入るだろう。

 写真、一番右は、Tissot Seastarという名前の自動巻時計。1ドル360円の固定相場制だった時代に父の職場の経営者がハワイ旅行に出かけたときのお土産としてもらったものである。私自身んが8才の頃だったと記憶している。ベルトが切れて転がっていたのを私が高校を卒業したぐらいに見つけ、地元の時計屋でベルトを交換してもらいガラス表面とベゼルを磨いてもらった。今はこれをメインに使っている。

 右から二番目は、Seikomatic 30石。セイコーの世界初の量産型自動巻で、いくつかるモデルのうちの30石は最高級モデルだったそうだ。このSeikomaticよりも前に20石のものも持っていたが、日本に置いたままになっているはず。大学に進学してしばらくしたとき、アンティーク時計に興味を持った。特に、このSeikomaticの凛としたデザインが好きで20石のものを入手したがあまり良い状態ではなかった。たまたま堺東の高島屋の催し物売り場にアンティーク時計の業者が出店したので相談したところ、在庫にあるということでこの30石のものを入手することができた。

 

 しかし、アンティーク腕時計のコレクションを趣味にするのは、早々にやめてしまった。というのも、「腕時計をころころ変えるのは浮気者」という人が周囲に多かったこと、そして、普段使うのは一個とすると、それ以外の時計は使われないでいる。それが可哀想に思えるようになった。道具は使ってなんぼであるから。従って、コレクションとして買ったものはこれが最後ということになる。

 

 左から二番目、Rolex Submarinerである。

 実は、自分は007映画のマニアである。昔観た007映画の中に、サブマリーナのダイヤル(タイマー)を回して強力な電磁磁石になり、ボートを引き寄せたり、女性のワンピースのジッパーをその電磁磁石を使っておろすというのがあった。実際調べてみると、007映画の中でボンドが使った時計はたくさん種類があるのだが、自分にとってボンドの腕時計はRolex Submarinerであったし、いつか何かを成し遂げた際には買うのだと決めていた。実際、2009年に博士号を取得したときに自分でローンを組んでかった。当時の金額で55万円だった。これはこれで自分の宝物であるし、大事なパーティーや人と会うときにしか使わない。また、自宅に起きっぱなしで旅行など長期に家を空けるときには心配なのでそっとスーツケースのポケットに入れて持ち出す。

 

 左端の時計、Rolex Oyster Perpetual Date。父の形見である。父は一杯呑み屋を経営していた。客の中にはツケで飲む者もいて、そのツケが溜まっていったところで、その客が代金を払えないとすると腕から時計を外してこれで払うといって差し出すのだそうだ。父の店の三軒隣りが時計屋なので、すぐに持ち込んで真偽の確認と査定をしてもらうのだそうだ。そして父はそこから勘定を受け取り、差額があればお釣りを客に返していたというのである。自分が知る限り、二つのロレックスがあったのだが、もう一つは文字盤にダイヤモンド入りのもので売り飛ばしたのだろう。この写真のものが残った。2014年に父が亡くなったとき形見として実家から引き取りアメリカに持ち帰った。自分が手にしたときはベルトが切れていた。ベルトの交換だけでも純正であれば6万円ほどする。それはおいそれと交換しようという気にならなかったのだろう。そこで、自分はバンド幅だけを合わせて純正に近い偽物を買って取り付けた。また、基本的にロレックスというのは完全防水であるが、この時計は古くなっていて、しかもガラスにヒビが入っている。数年前に日本で釣りをしたとき、川の水に浸けてしまい、時計内部にまで浸水してしまった。すぐにその場所から一番近い時計屋を見つけて内部を乾燥してもらった。また、この時計はとても遅れるし自動巻が機能していない。すぐに止まってしまう。腕の良い修理屋がいるならオーバーホールをしてもらいたいと考えている。ずっとずっと使い続けたい一本。

 

 その他、釣りの際にはG-Shockなんかを使ったりしているが、それ以外はこの4本で良いと思っていたのが、次、自分の身の上で大きく成功があったときに買う時計は決めている。