前回のブログで不育症の定義について書きました。
2回以上の流産、死産、または生後1週間以内の赤ちゃん死亡がある場合に不育症とされます。
この流産に化学流産が含まれないことは、前回のブログで申し上げた通りです。
ただし、繰り返す化学流産については、
不育症外来を受診することを考えてもよいでしょう。
ここで不育症の定義と言っていますが、
「不育症」は正式な医学用語ではなく、不育症の原因もよく判っていません。
これが原因という特定の原因がなく、
流産に対する因果関係が証明されていないものも多いのです。
このために、不育症の原因とは呼ばずに、
不育症のリスクの因子という言い方をします。
不育症のリスク因子は様々あるので、不育症専門外来に行って、
不育症検査を受けると、流産との因果関係が判っている要因を
1次スクリーニングとして検査します。
その項目は、
1.子宮形態検査
2.内分泌検査
3.夫婦染色体検査
4.抗リン脂質抗体検査
の4項目です。
この他に選択検査もあります。
今回は1の子宮形態検査について書きます。
なぜ子宮形態を検査するのかというと、
子宮形態異常があると流産しやすいからです。
子宮形態の検査としては、子宮卵管造影検査(HSG)が一般的です。
この検査では子宮の内腔に造影剤を注入し、レントゲン撮影をします。
これで子宮の内腔の形が分かります。
この他に子宮内に水をいれて超音波で検査する、
経膣超音波検査もスクリーニングとして利用できます。
正常な子宮は逆三角形をしています。
子宮形態の異常として形態としては、以下の3つに分類されます。
- 弓状子宮:子宮の外観は正常ですが、内腔の上の部分が弓状にややくぼんでいる状態。この程度だと不育症の原因となることはあまりありません。
- 中隔子宮:子宮の外観は正常ですが、内腔に中隔があって、左右に分かれている状態。中隔の部分は血管が少ないために、ここに着床すると流産となる可能性が高いと言われています。
- 双角子宮:子宮の外観がハート型をしている。この形態は流産の原因になりにくいと言われていますが、逆子になる可能性があります。
このように、子宮の形態異常としては、中隔子宮が最も流産しやすく、
胎児染色体異常がない場合でも流産が増加します。
このため中隔子宮では子宮形成術という手術が選択肢となります。
流産の原因となる中隔を取り除けば、流産を防止できる可能性があるからです。
中隔子宮の子宮形成術には、内視鏡によるものと開腹するものとあります。
もちろん患者さんの身体への負担が少ないのは内視鏡下の手術ですが、
熟練が必要な手術でもあり、よく医師と相談するとよいでしょう。
中隔を大きく切除すつと卵管を傷つける可能性がありますし、
中隔を取りきれないと流産のリスクが残ることになります。
また開腹手術をすると、子宮にメスを入れるために、
妊娠した場合には帝王切開が必要となります。
この手術で開腹し、1人目の妊娠で帝王切開で開腹し、
2人目を産む時にはまた開腹するので、
このことも念頭に置く必要があります。
このように、中隔子宮でも手術のリスクは大きいので、
あえて手術をしないで不妊治療を継続するという選択肢もあります。
弓状子宮や双角子宮では、手術療法のメリットはなく、積極的に行うものではないようです。
子宮形態異常については、医師ごとに見解が異なることも多いようなので、
不育症1次スクリーニングで子宮形態異常が見つかった方は、
医師とよく相談することが大切です。
最後までお読み頂きましてありがとうございます。
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