戦後の混乱期、安藤百福は、さまざまな事業を起こしつつ成功と失敗を繰り返してきました。
たとえ挫折した時でも、わずかに残った資産を元に、また新たな事業にチャレンジして復活を遂げてしまうというのが、彼のすごいところです。
しかし、理事長を務めた信用組合の破綻は、全財産を失うという大きなダメージを安藤にもたらしました。
そのとき安藤は既に47歳。今度こそ再起不能だろうと思う人も少なからずいたでしょう。
ところが、その絶望的な状況にあっても彼のチャレンジ精神は一向に衰えることはなかった。
むしろそのどん底の時こそ、やがて世界中の食生活を大きく変革することになるインスタントラーメン誕生の土壌となったのです。
「安藤は過ぎたことをいつまでも悔やまない。「失ったのは財産だけではないか。その分だけ経験が血や肉となって身についた」。そう考えると、また新たな勇気が湧いてきた」(『転んでもただでは起きるな!』安藤百福発明記念館 編)
何かを失ったとき、「失ったという経験」だけは得られます。
仮に、すべてを失ってしまったとしても、「すべてを失う」という、ある意味とても得がたい貴重な経験が残ります。
まさしく「転んでもただでは起きるな。そこらへんの土でもつかんで来い」という言葉通り、安藤は「転んだ時に見える景色」に意味を見い出し、そこから何かをつかんで這い上がろうとしたのです。
かつて憲兵隊に拘束された時、過酷な留置場で食べ物を奪い合う囚人たちを見て感じた「食」の大切さ。
戦後、どん底の食糧難の時に、屋台のラーメンで見た幸せのイメージ。
全財産を失って多くの人が離れて行くというどん底の状態で、安藤の頭の中で、かつての記憶がつながったのかもしれません。
この時から安藤は、たった一人で、お湯さえあれば家庭ですぐに食べられるラーメンの開発に着手します。
┌──────────┤書籍のご紹介├┐
□『転んでもただでは起きるな!』 安藤百福著
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