日本において偉大な経営者といえば、松下幸之助や稲森和夫など、人格的にも尊敬を集める人物である場合がほとんどです。
彼らの言葉や生き方はじつに示唆に富んでいて、「心の良薬」ともなり、私たちに多くの気づきや人生の指針を与えてくれます。
それに比べると、スティーブ・ジョブズの考え方や生き方は少し「劇薬的」でもあります。一般の人がそのまま受け入れて実践すると、大やけどをしてしまう危険性もはらんでいるように感じられます。
仮にジョブズのような人が1000人いたら、1人の大成功者と、999人の失敗者あるいは無謀者になる可能性さえなきにしもあらずです。
アップル草創期の頃の幹部で優秀な技術者だったジェフ・ラスキンは、ジョブズを次のように評しています。
「マネジャーとして、スティーブは最悪です。よく考えずに行動したりおかしな判断で行動したりします。」(『スティーブ・ジョブズ』ウォルター・アイザックソン著)
これだけであれば、「天才の行動は奇異に見えたり、理解しがたいことがある」という解釈も成り立つかもしれません。しかし、ラスキンの証言は次のように続きます。
「(スティーブは)他人の功績を認めるべきときに認めません。新しいアイデアを提示されると、意味がない、あるいはばからしいとすぐ否定し、そのようなことは時間の無駄だと切り捨てます。
これだけでも管理者としては失格ですが、そのアイデアが優れていた場合、それを自分のアイデアであるかのようにほかの人々に話すのです。他人の話は腰を折り、聞く耳を持ちません」(同)
同じくジョブズと共に初代マッキントッシュの開発に携わったビル・アトキンソンも、次のように語っています。
「スティーブの下で働くのは大変でした。神かくそったれか極端ですからね。神なら奉られ、なにをしても許されます。
(中略)優れたエンジニアで一生懸命働いているのにくそったれ側に分類された人は、なにをしようがまともに評価されない」(同)
部下を「天才」か「間抜け」かに2分して、ちょっとしたことでも理不尽に怒り出し、すぐに「出て行け!」「クビだ!」と言い放つ。
こうしたジョブズ評は、彼に批判的な立場の人だけのものではありません。ちなみにアトキンソンは、ジョブズによって「天才」のほうに分類されていました。
この「最低の経営者」という烙印が押されそうな人物が、なぜ「世界最高の企業」を生み出すことができたのか――次回以降は、ジョブズの生い立ちから、その秘密を探ってみたいと思います。
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□書籍のご紹介
『スティーブ・ジョブズ I』
『スティーブ・ジョブズ II』
ウォルター・アイザックソン著
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