陽転思考の達人 過去と現在の賢人たちに学ぶ実践的アクティブ・ブレインの生き方 -20ページ目

陽転思考の達人 過去と現在の賢人たちに学ぶ実践的アクティブ・ブレインの生き方

記憶術×陽転思考の<a href="http://www.oda-abs.com">アクティブ・ブレイン・セミナー</a>を受講した方限定のメルマガ「ウィークリーコンパス」の中から「陽転思考の達人」のみを抜粋し公開しています。

●強いイメージは伝染し共有される

アップルを創業し、たった一代で世界最高の企業へと育て上げた天才経営者・スティーブジョブズ。
しかし、部下の気持ちを理解し、励まし、モチベーションを高めて、目標に向かわせるーーそういった模範的な経営者像とは、ジョブズは対極にありました。

実際、彼の強引なまでのリーダーシップは、たくさんの人を傷つけ、悩ませてきました。
結果が思わしくなければ、部下を慰労するどころか、努力を認めず、逆に度を越したひどい言葉を浴びせて罵るということが、ジョブズの常でした。

「他人を傷つける言葉を抑えるフィルターがジョブズにはないのか、それとも、フィルターを外しているのか、どちらなのか家族さえもはかりかねている。
本人にぶつけてみたところ、前者だとの回答が返ってきた。『僕はそういう人間なんだ。違う人間になれと言われても無理だよ』」(『スティーブ・ジョブズ』ウォルター・アイザックソン著 より)

しかし同時に、ジョブズは、部下の力を最大限に引き出すことのできる稀有なリーダーでもありました。

「他人を傷つけないように気を使う優しくて礼儀正しいリーダーは、無理やり変化させる力が弱い。
ジョブズがさんざんひどい目に合わせた何十人もの同僚に話を聞いたが、彼のおかげで、それまでできると考えもしなかったことができたと、皆、判で押したように、悲惨な体験談を締めくくるのだ」(同)

経営者としては数々の問題を抱えていたジョブズが、なぜあれほどまでに成功できたのか。これまでさまざまな分析がなされていますが、陽転思考的観点からは、少なくとも次の2点が挙げられます。

まず、並はずれたイメージ力の強さと、それを周囲の人に伝達し、浸透させる力です。
ジョブズの頭の中では、新しい製品と、それによって引き起こされるであろうイノベーションが「こうあるべき形」として強烈にイメージされていました。
そしてそれは組織内において共有され、向かうべきビジョンとなるのです。
その浸透力、伝播力は、一般消費者をも同じ夢の中に巻き込んでしまうほど、強力なものでした。「MACフリーク」「アップル信者」という言葉が、それを象徴しています。
ジョブズが描いた夢は、まるで感染力が極めて強いウイルスのようです。

次回は、もう一つのポイントである「自己肯定感」について考えてみましょう。

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 『スティーブ・ジョブズ I
 『スティーブ・ジョブズ II
  ウォルター・アイザックソン著
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●ビジョンを共有し合うことで士気を高める

経営者として部下をどのように指導すべきかーーそういった感覚は、スティーブ・ジョブズの頭の中にはあまりなかったように思われます。
それよりもまず「作りたい作品」というビジョンが強烈にあって、それが完成して世に出た時のインパクトや素晴らしいイメージを共有し合うということに、経営の主眼が置かれていました。

そしてジョブズ自身が真っ先にその「素晴らしき世界」に没入し、先頭を切ってその目標に向かって突進してしまうのです。
その突破力はすさまじく、現実や限界は矮小化され、誰もが彼の作り出す「現実歪曲フィールド」に巻き込まれ、夢中になってジョブズのあとに続こうとしてしまうのです。
それはあたかも、先頭を切って敵陣に突撃する戦国武将と、それに続く家来たちの姿のようでもあります。
安全な後方にいて全体を見守りながら指揮を取るというのも、リーダーの大切な役目でしょう。状況に応じて両方を使い分けるというのが優秀なリーダーなのかもしれません。

しかしジョブズは常に最前線に立とうとするタイプでした。
新製品の開発の場では、細部に至るまで徹底的に口を出して、何度もやり直しを命じています。製品自体はもちろん、箱のデザインにさえ現場介入し、最後まで細かな指示を与えています。

「50回はやり直しをさせたと思いますよ。開いたらゴミ箱に直行するものなのに、その見栄えにものすごくこだわっていたのです」(『スティーブ・ジョブズ』ウォルター・アイザックソン著 より)

その結果、上から下まで、組織全体が常に強いストレスにさらされていたであろうことは、容易に想像できます。
しかし同時に、夢や目標を共有して共に戦っているということの高揚感や誇り、そしてやり遂げた時の喜びや達成感も大きなものがあったでしょう。

ジョブズ自身、自らが掲げた夢やビジョンの強い引力に引っ張られるかのように、過激なまでに仕事に没頭しています。
そういった意味では部下たちもまた、彼に従って行ったというより、むしろそのビジョンに吸い寄せられるように限界の壁を越えたといったほうがいいのかもしれません。

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●Reality Distortion Field(現実歪曲フィールド)

先回述べたように、スティーブ・ジョブズのイメージ力は、周囲の人にまで伝播して感化させてしまうほど強力なものでした。
そのすさまじさについて、共にアップルを育て上げた同僚たちの証言があります。(いずれも『スティーブ・ジョブズ』ウォルター・アイザックソン著 より)

「スティーブは自分自身さえだましてしまいます。そうして自ら信じ、血肉としているからこそ、ほかの人たちを自分のビジョンに引きずり込めるのです」(ビル・アトキンソン)
「論理的にありえない未来を見ているとき、彼は現実歪曲の力を発揮するんだ。本当のはずがないってみんなが思うのに、彼はなんだかんだで本当にしてしまうんだ」(スティーブ・ウォズニアック)
「自己実現型の歪曲で、不可能だと認識しないから、不可能を可能にしてしまうのです」(デビ・コールマン)

実際アップルの歴史を見ると、ジョブズが「こうあるべきだ」と確信し、宣言したことは、たいていそうなってきているということがわかります。
ジョブズが作り出す強力なエネルギーの場――それは「Reality Distortion Field(現実歪曲フィールド)」と呼ばれています。
そこでは、厳しい現実よりもジョブズのビジョンのほうが優位に立ち、不可能が可能になり、絶望が希望になり、夢が現実になるのです。

その「場」のなかに入りビジョンを共有した人の多くは、自分自身想像もしなかったほどの驚くべき力を発揮して、素晴らしい製品を世に出してきました。
あるいはその「驚くべき力」は元々彼らのなかに内在していたとも考えることができます。
その本来の力を抑制していた「現実」や「常識」というリミッターを取り払ってしまう場が、ジョブズが作り出す現実歪曲フィールドであったともいえます。

現実歪曲フィールドは、誰もが作り出せるというものではありません。また仮にできたとしても、必ずしも良い方向に作用するとは限りません。
視点を変えれば、それは独善であり、頑固であり、現実無視の理想主義でもあります。人生や経営などの現場では、マイナスに働くことのほうが多いのではないでしょうか。
実際その独善についていくことができずに、有能なスタッフが何人もジョブズの元を去っています。

しかし少なくともそれは、「強く願ったことは現実になる」「夢を実現するためには具体的にイメージして諦めずに追い求めること」という、陽転思考が掲げる命題とも符合しています。

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●強力なイメージ力が作り出すエネルギーの場

大学を中退、インド放浪の旅から帰国したスティーブ・ジョブズは、5歳年上の「もう一人のスティーブ」、スティーブ・ウォズニアックと共にパソコンの先駆けとなる「AppleI」を開発。
自宅のガレージを拠点に、アップルコンピュータ(現アップル)を立ち上げます。
ビル・ゲイツがマイクロソフトを創業してから、およそ1年後のことでした。

アップルは創業から4年で株式公開、ジョブズは25歳でフォーチュン誌の長者番付に名を連ねました。ほんの数年前までは、コーラの瓶を集めて日銭を稼いでいた青年の快挙に、世界中が驚かされました。

ウォズニアックは、今でいう「オタク」的な技術者で、「女の子と目を合わせるよりトランジスタと目を合わせるほうがいいというタイプ」と評されています。
やがて世界を変える発端となるAppleⅠの原型は、まずその天才技術者・ウォズニアックの脳内でイメージ化されました。
「パーソナルコンピュータと言ってもいいビジョンがぼく(ウォズ)の頭の中に浮かんだんだ。そしてその夜、ぼくは、のちにアップルⅠとして世に出るもののスケッチを書きはじめた」
(『スティーブ・ジョブズ』ウォルター・アイザックソン著)

一方、ジョブズの目には、そのAppleⅠを使って、いろいろな人が文章を書いたり、計算したりというシーンがはっきりと見えていたでしょう。
あるいは、さらに進化したパソコンによって、絵を描いたり、音楽を聴いたり、映像を編集したり、情報を交換したり――というところまでもイメージしていたかもしれません。

夢を実現する人の多くが強力なイメージ力を有しているということは、これまで多くの「陽転思考の達人」たちを取り上げるなかで、繰り返し述べてきました。
吉田松陰しかり、松下幸之助しかり、稲森和夫しかり、です。
もちろんジョブズのイメージ力も、人並み外れた強烈なものでした。
そのエネルギーがあまりに大きいため、あたかも電波のように彼の脳をはみ出し、そこに描かれたビジョンが周囲の人にまで伝染してしまうほどだったのかもしれません。
ジョブズが作り出すエネルギーの場の中に入ると、とうてい不可能と思えることであっても、不思議と「できるんじゃないか」と、プラス方向へと転換させられてしまうのです。

実際、多くの人が、ジョブズのビジョンを共有して、同じ壮大な夢を追及したがゆえに、アップルは大成功への道を駆け上がることができたのです。

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●師を求めて世界を旅する意志があるならすぐ隣に見つけるだろう

スティーブ・ジョブズとビル・ゲイツ。IT業界に大きな影響を及ぼした2人は、奇しくも共に1955年生まれの同い年。しかし、その生まれ育った境遇は大きく異なっています。

ゲイツは、弁護士を営む裕福な家庭に生まれ、学校での成績も良く、優等生としてハーバード大学に進みます。
一方、ジョブズの生みの親となったのは、シリア系移民の男性とドイツ系移民の女性のカップルでした。2人は親の反対から結婚することができず、生まれたばかりのジョブズは養子に出されます。

ジョブズの養父となったポール・ジョブズは、高校を中退して機械工を営んでいました。妻クララとの間には子どもがなく、ジョブズを深い愛情をもって育てます。
とはいえ、決して裕福ではなかったうえに事業失敗などが重なり、生活は困窮していました。
ジョブズが小学4年生の頃、授業中に「宇宙についてなにかわからないことはありますか?」という質問に、「ウチが突然貧乏になったわけがわかりません」と答えたというエピソードが残されています。

ジョブズとビルの話に戻しましょう。2人とも大学を中退していますが、その理由は大きく異なります。
ビルは、ハーバード大在学中にプログラミング言語BASICの開発に成功し、その販売のために設立したマイクロソフト社の経営に専念するためというのが、主な退学理由でした。
(ちなみにビルは2007年に名誉学位を授与され、32年ぶりに「卒業」している)
一方ジョブズは、大学の必修科目の多くをつまらないと感じ、このままでは両親が一生かけて蓄えたお金を無駄にしてしまうという罪悪感から、たった半年でリード大学を退学してしまいます。

大学をやめたとはいえ、ジョブズは哲学やカリグラフィー(書法)など興味のある授業には出席しつつ、コーラの空き瓶拾いなどでお金を貯めてインドを放浪の旅に出かけたりしています。
この頃、鈴木俊隆(在米・曹洞宗の僧侶)を導師として禅も学んでいます。
東洋思想に深く傾倒し、理性よりも悟性や感性の大切さを学んだことは、その後のジョブズに大きな影響を与えました。

「直観はとってもパワフルなんだ。僕は、知力よりもパワフルだと思う。この認識は、僕の仕事に大きな影響を与えてきた。
(中略)日本の永平寺に行こうと考えたこともあるけど、こちらにとどまれと導師に言われてやめた。ここにないものは向こうにもないからって。彼は正しかった。
師を求めて世界を旅する意志があるならすぐ隣に見つけるだろうと禅では言うんだけど、それは正しいんだなと実感したよ」
(『スティーブ・ジョブズ I』ウォルター・アイザックソン著)

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