強烈な自己肯定力を持つスティーブ・ジョブズも、さすがにアップル社を追放されたことは相当なショックだったようです。
「30歳のとき、私は追い出されたのです。それは周知の事実となりました。私の人生をかけて築いたものが、突然、手中から消えてしまったのです。
これは本当にしんどい出来事でした。1ヵ月くらいは茫然としていました」(『スタンフォード大卒業式でのスピーチ』(2005年6月)より)
実家のガレージを拠点に創業し、世界有数のIT企業へと育て上げたわが子のような会社からの突然の解雇。
しかしそんな絶望的な状況にあっても驚くべきことにジョブズが落ち込んでいたのはたった1カ月程度だったのです。
「このまま逃げ出してしまおうかとさえ思いました。しかし、ゆっくりと何か希望がわいてきたのです。自分が打ち込んできたことが、やはり大好きだったのです。
アップルでのつらい出来事があっても、この一点だけは変わらなかった。会社を追われはしましたが、もう一度挑戦しようと思えるようになったのです」(同)
アップルを追われたジョブズは、あたためていた構想を製品化するためにネクスト社を創業し意欲的に働きます。
さらにコンピュータグラフィックのピクサー社の経営にも乗り出し「トイストーリー」などの大ヒットを連発したのは周知の事実です。
ネクスト社は必ずしもジョブズの思うような成功には至らなかったのですが、そこで開発されたソフトウェアNeXTSTEPは、
後のMacの新しいOS(オペレーティングシステム)の土台となり現在に至るまで引き継がれています。
ちなみにNeXTSTEP採用を期にアップル社はNeXT社を買収、同時にジョブズも古巣へと返り咲くことになります。
先回ご紹介したように、ジョブズは大学退学の決断を「人生で下した最も正しい判断だった」と振り返っていますが、アップルを追われたことについても、同じような感想を述べています。
「そのときは気づきませんでしたが、アップルから追い出されたことは、人生で最も幸運な出来事だったのです。
将来に対する確証は持てなくなりましたが、会社を発展させるという重圧は、もう一度挑戦者になるという身軽さにとってかわりました。
アップルを離れたことで、私は人生で最も創造的な時期を迎えることができたのです」(同)
不運と思えるような状況にあっても、むしろそれを「幸運」と受け止めて前進する――「陽転思考の達人」といわれる人に共通の能力のようです。
┌────────────┤おすすめ├┐
□書籍のご紹介
『スティーブ・ジョブズ I』
『スティーブ・ジョブズ II』
ウォルター・アイザックソン著
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