赤い発疹が特徴の乾癬と心筋梗塞・脳卒中との関係 | アクティブエイジング アンチエイジング

[赤い発疹が特徴の乾癬 皮膚症状にとどまらないリスクとは?]

(QLife  2017年04月12日)
(東京大学医学部 皮膚科学教室 教授 佐藤伸一先生)


<日本では500人に1人が乾癬に罹患>
乾癬は、身体のいろいろな部分に、白いフケのようなものが付いた赤い発疹が
できる病気で、日本では500人に1人が罹患する患者数の多い疾患です。
発疹は、接触や掻きむしり、そして日焼けなどの刺激によってできやすくなり
ます。
東京大学医学系研究科皮膚科学教授の佐藤伸一先生によると、「顔や爪など
人目につくところにできた発疹は、飲食業や接客業で働く人には特に目に
つきやすく、患者さんのQOL(生活の質)を大きく下げる要因にもなる」との
こと。

治療は症状の重さによって、ステロイドやビタミンD3の塗り薬や、紫外線
療法、経口薬の内服、生物学的製剤と呼ばれる注射薬を使い分けて行い
ますが、毎日塗り薬を塗るのが難しいうえ、温泉など全身をさらす場所へ
行くことをためらったりするなど、患者さんの多くが悩みを抱えています。
「“皮膚症状の重さ”だけではなく、患者のQOLも含めて“症状”ととらえる
べき」と佐藤先生。

治療法のひとつである生物学的製剤は、乾癬の発症や悪化に関係する炎症性
サイトカインといわれるたんぱく質に作用する治療薬で、いわば“体の中から
乾癬になりにくい状態にする”というもの。
「皮膚症状が重症でなくても、QOLが大きく下がっている患者さんに対しても
使える薬です」(佐藤先生)



<乾癬患者は心筋梗塞のリスクが上昇>
乾癬患者は、風邪や妊娠がきっかけになるなどして乾癬の症状が悪化した
場合に、発疹が膿んだり熱が出たりする膿疱性乾癬になったり、全身の皮膚に
発疹が広がると乾癬性紅皮症と呼ばれる疾患を併発することも。

皮膚の病気と思われがちな乾癬ですが、乾癬患者の約10%は関節炎を合併し、
早期に治療をしなければ関節が破壊され、変形することもあるほか、さらには
心筋梗塞、脳卒中、糖尿病、脂質異常症、高血圧、動脈硬化、脂肪肝、
高尿酸血症やメタボリックシンドロームを合併しやすいことが近年の研究から
わかってきました。


皮膚の発疹が主症状の乾癬で、なぜメタボリックシンドロームを併発するので
しょう。
佐藤先生によると、「乾癬での発疹から、炎症性サイトカインのTNF-αが
大量に産生されることが原因」とのこと。
産生された大量のTNF-αが血液中へ滲みだして、全身の臓器へ移行し、
さまざまな並存疾患を引き起こすと考えられています。
「乾癬患者における心筋梗塞の発症率は、健常人2.0%に対し、重症乾癬では
2.9%となるほか、死亡率も比較的高いことが分かっています」と佐藤先生。


発疹だからと軽視せず、早めに適切な治療を行うことが大切といえそうです。






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