アクロメガリー:顔つき変化、手足肥大・・・サイン見逃さずに | アクティブエイジング アンチエイジング

[サイン見逃さず早期治療を 顔つき変化、手足肥大 難病指定の先端巨大症]

(共同通信  2010年8月24日)(医療新世紀)


脳下垂体の腫瘍が原因で成長ホルモン(GH)が過剰に分泌され、顔つきの
変化や手足の肥大などが起こる病気「アクロメガリー (先端巨大症)」。

2009年10月、「間脳下垂体機能障害」の1つとして、医療費が公費助成
される厚生労働省の難病に指定された。
以前は高額の自己負担を理由に治療を控えてしまう患者もいたが、経済的な
心配をせずに最新の治療を受けられる環境が整った。


問題は、特徴的な症状があるにもかかわらず、発症から確定診断を受けるまで
平均9年もかかっていることだ。
早期治療には、患者本人や周囲が病気のサインを見逃さないことが大切だ。



<写真との違い>
千葉県松戸市の主婦、本田恵子さん(47)=仮名=は、7年前にアクロ
メガリーと診断された。
きっかけは、夜中に急に呼吸が苦しくなって受診した市内の総合病院で心臓の
肥大を指摘されたこと。

アクロメガリーの合併症を疑った主治医が本田さんに聞いた。
「指輪や靴が入らなくなったことはないか。昔より鼻が大きくなって
いないか」
すべて自分に当てはまっていた。
血液検査を受けると、高い濃度のGHが検出された。

実は、本田さんが最初に体の異変を感じたのは35歳ごろ。
夏でもないのにしたたり落ちる汗。
疲れやすく、ひどい頭痛が続いた。
だが、当時は幼い子ども3人の子育ての真っ最中。
「わたしに何かあったら・・・・・」と考えると怖くて、病院に足が
向かなかった。

37歳の時、ようやく近所の開業医で血液検査を受けたが、診断名は甲状腺機能
亢進症。
GHは検査項目になく、医師はアクロメガリーを見つけられなかった。

結婚式の写真を見た子どもたちから「今と全然顔が違う」と言われたことも
あったが「太ったせい」「甲状腺の病気のせい」と自分を納得させ、頭の病気
とは思いもしなかったという。



<死亡リスク>
脳神経外科を専門とする山王クリニック(東京都港区)の山王直子院長に
よると、アクロメガリーは脳下垂体にできる腫瘍のうち約22%を占める成長
ホルモン産生腺腫によって引き起こされる。
腫瘍は良性だが、骨や筋肉の成長を促すGHが過剰分泌され、額や顎の突出、
鼻や唇、手足の肥大、多汗、月経異常、頭痛、心臓の肥大、視野狭窄など、
さまざまな症状が現れる。
放置すれば糖尿病や高血圧などの合併症で死亡のリスクも高まる。

発症時期は40代から60歳までが多いが、稀に子どもが発症すると巨人症に
なる。
国内の患者は7,000~8,000人で、潜在患者を含めると1万人程度いると
みられる。

「顔つきの変化は確かに特徴的だが、毎日見ていると意外に本人も家族も
気付きにくい。医師も自分の標榜科に関係する症状だけを診て、その陰にある
アクロメガリーを見逃しがちだ」と山王院長は指摘する。



<手術で根治も>
診断には、血液検査でGHとソマトメジンCという物質の血中濃度を調べる。
数値が高ければ、磁気共鳴画像装置(MRI)で腫瘍を確認する。


治療の第1選択は手術だ。
現在は開頭せずに、鼻腔や上の前歯の歯茎から特殊な器具を挿入して腫瘍を
切除する方法が確立し、比較的安全に、体への負担も少なく手術できるように
なった。
「発見が早く腫瘍が小さい場合は9割が手術だけで根治する」と山王院長。

だが、腫瘍を取りきれなかった場合や、高齢や合併症で手術自体できない
場合はGHの過剰分泌が続くため、薬でコントロールする。


本田さんも鼻からの手術を受けたが腫瘍が残り、月1回の注射を続けている。


従来、この薬の高価なことが治療継続の障害だったが、難病指定で大幅に
負担軽減した。
「治療環境は整った。思い当たる症状があれば積極的に検査を受けてほしい」
と山王院長は話している。
 

 


(共同通信 赤坂達也)
 

 

 

http://www.47news.jp/feature/medical/2010/08/post-396.html