腸内フローラで「侵襲性カンジダ」を打破 | アクティブエイジング アンチエイジング

[腸内フローラで「侵襲性カンジダ」を打破、
         免疫増強により死亡率を半減、有力誌ネイチャーで報告]

(Medエッジ  2015年6月21日)


<天然の植物の種や酢が有効か>
カンジダは人間の皮膚や腸に普通に生息しているカビの一種で、体調が悪く
なるとカンジダ症をもたらすことがある。

このたび、腸内細菌による免疫増強で、侵襲性カンジダ感染症の新たな治療に
なり得ると分かった。

米国テキサス大学サウスウェスタン医療センターの研究グループが、有力誌
ネイチャーの医学分野姉妹誌ネイチャー・メディシンのオンライン版で
2015年6月8日に報告した。



<がんでも問題に>
「イースト菌感染症」と呼ばれる感染症の一つであるカンジダ症。

カンジダは、通常は皮膚や口の中、女性の膣内に発生しており、悪くても
炎症のような症状にとどまるが、場合によっては悪化する。

例えば、骨髄移植を受けた白血病の人、HIV感染のある人などで、免疫力が
低下した場合に起こる。
カンジダが内臓から血液に漏れると、命にも関わる。
「侵襲性カンジダ感染症」と呼ばれる。

研究グループによると、がんになると、最大で25%が侵襲性カンジダ感染症と
なるといい、致死率はおよそ30%に達する。



<注目される腸内細菌>
研究グループによると、深刻な侵襲性カンジダ感染症に対する抗生物質は
あるが、必ずしも効果があるとは限らない。
そもそも薬に耐久力を持ったものも発生しつつあるという。

内臓にカンジダを持つ人は半数にも及ぶという。
通常は無害で、カンジダが増え過ぎると、内臓から漏れて感染症を引き
起こす。



<内臓に存在する細菌類が、病原体の増殖を押さえ込んでいる>
特に腸内細菌に注目している。
腸内細菌の集まりを叢(くさむら)になぞらえて腸内細菌叢)と言ったり、
花畑(フローラ)になぞらえて、腸内フローラなどと呼んだりする。
海外では、腸内細菌の全体という意味で、「マイクロバイオーム」と呼ぶのが
主流になりつつある。



<腸内細菌をコントロールして病気を防ぐ試みが注目されている>
<体内の抗生物質を発動>
研究グループは、カンジダに感染したネズミの反応を調べたところ、共生して
いる細菌が免疫を増強する上に、天然の抗生物質を内臓に作らせてカンジダを
やっつけると発見した。

検証したところ、DNAの働きを調節するような役割を持っていた。

具体的には、ネズミに「L-ミモシン」という薬の働きのある物質を投与
すると、免疫が増強されるというものだ。
異物に抵抗する免疫の働きを強化すると「HIF-1α」という転写因子を増強
していた。
この結果として天然の抗生物質であるペプチドの「LL-37」の量が増えて、
カンジダを100分の1に押さえ込む。
結果として侵襲性カンジダ感染症による死亡率を半減させる。

L-ミモシンは、コア・ハオレ(和名ギンネム)という低木の種子から取れる
天然の産物で、薬品としては承認されていないが、HIF-1αの活性を増強する
ことが知られている。


さらに、クロストリジウム・フィルミクテスとバクテロイデスという共生
細菌が、感染症との戦いを助ける「短鎖脂肪酸」を生成する上で重要である
とも判明した。

短鎖脂肪酸は、酪酸や酢酸など、長さの短いタイプの脂肪酸で腸内細菌に
よって作られると注目されている。


研究グループは、「L-ミモシンのような物質を使うか、あるいは酢のような
短鎖脂肪酸を投与するか、最も適した方法を判定するにはさらに研究
しなければならないが、腸の免疫系を増強してカンジダを減らすという
アプローチは、侵襲性感染症を防ぐ新たな治療法になり得る」と指摘する。



例えば、酢が効くとすれば、思わぬ治療となるのだろう。






http://www.mededge.jp/a/cold/14838