口腔内の細菌叢の変動が早期膵癌のシグナル? | アクティブエイジング アンチエイジング

[口腔内の細菌叢の変動が早期膵癌のシグナル?]

(HealthDay News  2011年10月12日)


口腔内の細菌叢の変動が膵癌(がん)発症のシグナル(合図)である
可能性が、予備的研究で明らかにされた。
特定の細菌の有無によってリスクの高さがわかると考えられることから、
いずれは患者の唾液を分析することで膵癌のスクリーニングが可能になる
ことも考えられる。


「膵癌が口腔内の細菌叢に変化をもたらすのか、あるいは細菌叢の変動が
膵癌を発症させるのかについてはまだわかっていない」と、研究報告を行った
米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)膵臓疾患センター准教授の
Jamaes J. Farrell氏は述べている。


膵癌は診断後の5年生存率がわずか5%と浸潤性の高い致死的な癌である。
手術が可能な段階で診断される患者はわずか15%で、ほとんどの場合は
奏効率の極めて低い化学療法しか選択肢がないことから、癌の早期発見が強く
求められている。


この研究は、医学誌「Gut(腸)」オンライン版に10月12日掲載された。


研究チームは、癌の拡大がみられない癌患者10人の唾液を、年齢および性別の
類似する健康な被験者 10人と比較することによって、口腔と膵癌の関連を
調べた。
口腔内には700種を超える細菌が棲息しており、その一部は歯周疾患に関連
している。
癌患者には、健康な被験者の口腔内にはみられない31種の細菌がみられると
同時に、健康な人にみられた25種の細菌が欠如していた。


次に膵癌患者 28人、慢性膵炎患者(癌リスクが高い)27人、健康な被験者
28人を比較したところ、健常者の口腔内にはナイセリア・エロンガータ
(グラム陰性球菌)およびストレプトコッカス・ミチス(連鎖球菌)の2種の
細菌が高い確率で認められた。
この2種の値を調べることにより、4分の3を超える確率(80%)で、
癌患者と健康な被験者を区別することができた。

癌患者では、逆にグラニュリカテラ・アドジャセンス(連鎖球菌関連属)と
呼ばれる細菌種の値が高かった。
また、慢性膵炎患者と健常者との間にも細菌組成の差が認められた。


「口腔内細菌と細胞との相互作用によって疾患が引き起こされることが多数の
データから示されており、この考えから全く新しい癌治療の標的が見つかる
可能性がある」とFarrell氏は述べている。

別の専門家は、「このような細菌叢の変動が癌発症の早期段階で起こるのか
どうかは明らかにされておらず、疾患の後期に生じるものであれば、早期
診断の役には立たない可能性もある」と指摘しながらも、「研究を重ねる
価値があるのは確かだ」と述べている。





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