睡眠薬を処方された人の死亡リスク5.3倍、がんも増加 | アクティブエイジング アンチエイジング

[睡眠薬を処方された人の死亡リスク5.3倍、がんも増加 米研究]

(あなたの健康百科  2012年3月7日)


米スクリップス研究所のDaniel F. Kripke氏らは、睡眠薬を処方された
1万人を平均2.5年間追跡したところ、処方用量が増えるに従って死亡
リスクとがんリスクが上昇していたことを、2月27日付の英医学誌「BMJ
Open」(2012; 2: e000850)に発表した。
処方量によって3段階に分けたうち最も多いグループの死亡リスクは5.3倍、
主要ながんのリスクも1.4倍に上昇していた。
合併症を考慮して解析しても、結果は変わらなかったという。



<年間18錠未満でも死亡率上昇>
Kripke氏らは、米ペンシルベニア州に住む250万人を対象とした米国最大の
総合健康システムthe Geisinger Health System(GHS)のデータから、
2002~2006年に睡眠薬を処方されていた1万529人(睡眠薬群、平均年齢
54歳)を抽出。
性や年齢、喫煙状況などを一致させた処方されていなかった2万3,676人を
対照群とし、平均2.5年追跡した。

年齢、性、喫煙、BMI(肥満指数)、人種、婚姻状況、飲酒、がんの既往など
調整して解析。
さらに、睡眠薬の処方は健康状態の影響を受けることから、12に分類した
合併症の最大116の組み合わせ、あるいは慢性疾患の分類別でも解析を
行った。

2002~06年に最も多く処方された睡眠薬はゾルピデム(商品名マイスリー)
で、次いでtemazepam(国内未承認)だった。
両群の基本データは類似していたが、認知症以外の合併症が睡眠薬群で多
かった。
認知症の割合は同等だった。

追跡中の死亡は睡眠薬群で638人(6.1%)、対照群で295人(1.2%)
だった。
1年当たりの処方量別に死亡リスクをみると、0.4~18錠で3.6倍、18~132錠
で4.43倍、132錠超で5.32倍と、処方量が増えるごとに上昇していた。

薬剤別の検討でも処方量が増えるごとに死亡リスクが上昇し、処方量で3つに
分けたうちの最も少ないグループでゾルピデムは3.93倍、 temazepamは
3.71倍、中等度のグループではともに4~5倍、最も多いグループで5~6倍
だった。
これはeszopiclone(国内未承認)、zaleplon(国内未承認)、その他の
ベンゾジアゼピン系睡眠薬(商品名ハルシオンなど)、バルビツール酸系
睡眠薬(商品名ラボナなど)、鎮静性抗ヒスタミン薬でも同様で、一般的な
睡眠薬、新規の短時間作用型睡眠薬を問わずリスクの上昇が認められた。



<リスク超過を説明しきれない>
合併症や慢性疾患の分類別で解析しても死亡リスクとの関連は一貫しており、
合併症の階層で調整後も対照群と比べた睡眠薬群の死亡リスクは4.56倍で、
リスク上昇は健康状態によるものではないことが示された。
ただし、解析対象は小規模だったという。


なお、主要ながんのリスクは、0.4~18錠で0.86倍、18~132錠で1.20倍、
132錠超で1.35倍だった。
temazepamは、処方量によって3つに分けたうちの最も多いグループで
1.99倍と、睡眠薬全体と比べてリスクが高かった。


今回の研究には、排除できない要素や調査の不均衡の存在といった限界が
あるが、Kripke氏らは年間18錠未満の処方でも死亡リスクが3.6倍に上った
ことに注目。
睡眠薬が健康状態の悪い患者に選択的に処方されている可能性を考慮しても
リスク超過を説明しきれないと考察している。




http://kenko100.jp/news/2012/03/07/01