歯周病で悪化も 自覚症状ない新たな国民病「慢性腎臓病」 | アクティブエイジング アンチエイジング

[歯周病で悪化も 自覚症状ない新たな国民病「慢性腎臓病」とは?]

(dot.  2016年1月22日)


腎臓の主な働きは、血液をろ過して老廃物や塩分を尿として出したり、血圧の
調整をしたりすることなどだ。
その機能が高血圧や糖尿病などさまざまな原因で低下し、慢性的に進行する
病態を総称してCKD(Chronic Kidney Disease)という。
自覚症状はほとんどないため、進行して腎不全になることも多く、末期には
人工的に血液の老廃物を取り除く透析治療や腎臓移植が必要になる。



茨城県在住の高林和宏さん(仮名・83歳、無職)は50歳のころから高血圧が
あり、74歳で不整脈の一種である心房細動を発症。
筑波大学病院で治療を受けていた。

ある日の検査で、腎機能障害の指標である血清クレアチニンの値がそれまで
1.3mg/dlほどだったのが、1.77mg/dlに上昇していた。
血清クレアチニンは筋肉で作られる老廃物で、正常値は男性1.1mg/dl以下、
女性は0.8mg/dl以下だ。
腎機能障害の進行を指摘された高林さんは同院腎臓内科の山縣邦弘医師へ紹介
された。

山縣医師が診察したところ、腎硬化症による腎機能障害と考えられた。
腎臓のろ過装置を糸球体というが、腎硬化症とは高血圧が長く続いた結果、
糸球体硬化、腎組織の線維化が起こるものだ。虚血性腎症や末期腎不全の
原因になる。

「CRP血液検査」という、人体内で炎症性の刺激や細胞の破壊が生じると
急激に増加してくるたんぱく質の成分を測る検査で、高林さんは軽度陽性で
あったものの、全身には発熱などの炎症所見はなかった。


「高林さんは右下顎と歯ぐきの違和感があったため、口腔外科も受診して
もらいました。そこで全顎の歯周病と数本のむし歯があったので、治療を開始
しました」(山縣医師)

歯周病があると体内に入った歯周病菌が腎臓から排出されずに、血液を循環
することで腎臓病が悪化するといわれている。
さらに歯周病は、糖尿病などの腎臓病を悪化させる原因となる病気とも関係が
あり、治療することが大切だという。


歯周病の治療をするとCRP検査の値が陰性化し、血清クレアチニンも以前の
1.3mg/dl前後に改善した。

「その後、食事指導やカリウム値正常化などの工夫を並行しておこない、
腎機能は安定しました」(同)


CKDは、末期腎不全の直前まで自覚症状が乏しい。
人工透析が必要な末期の患者でも、6人に1人ほどは、病院を受診して初めて
腎不全が判明するのだという。

「多くの患者さんは、学校、職場、地域の健診などで、たんぱく尿や腎機能
障害などを過去に指摘されたことがありますが、自覚症状がまったくないため
軽視してしまいます。しかし放置していると、20〜30年という長い年月を
経て末期腎不全へ進んだり、心血管疾患を引き起こしたりすることがあ
ため、注意が必要なのです」(同)



(週刊朝日  2016年1月29日号より抜粋)




http://news.goo.ne.jp/article/dot/life/medical/dot-2016012200044.html