[突然走る電撃痛・・・冷たい風で顔が痛む「三叉神経痛」とは?]
(日刊ゲンダイ 2015年2月3日)
冷たい風があたった時、顔を洗った時、ひげをそった時、歯を磨いた時、
物を噛んだ時──。
何げない瞬間に突然、顔の半分に痛みが走ったら、「三叉神経痛」が
疑われる。
原因の9割は加齢による血管の蛇行で、顔の感覚を脳に伝える三叉神経が
血管に触れてショートし、痛みが生じる。
冷たい刺激がきっかけになることも多い。日本医科大学付属病院脳神経外科・
森田明夫教授に詳しく聞いた。
顔が痛む疾患には、虫歯、顎関節症、副鼻腔炎、帯状疱疹、群発頭痛など
さまざま。
三叉神経痛もそのひとつだが、ほかの疾患と違う典型的な症状が、「顔の
半分に」「突然起こる」「電撃痛」だ。
電撃痛とは、虫歯などの時に感じる、キーンと脳まで突き抜けるような痛み。
痛みの持続時間は数秒で、1回で治ることもあれば、キーンキーンキーンと
連続することもある。
冒頭に挙げた「冷たい風があたる」「顔を洗う」「ひげをそる」「歯を磨く」
「物を食べる」時に起こる。
「激痛ですが、治ると何の痛みも残らない。しびれなどもありません。それも
三叉神経痛の特徴です。歯や鼻の病気では、顔の痛みが続いたり、激痛が
治まってもしびれなどが残ったりすることがよく見られます」
とはいえ、症状からでは判断しづらい三叉神経痛もある。
最初に受診したのが歯科で、抜歯したが痛みが治まらず、三叉神経痛の治療で
痛みが消えた、というケースも珍しくない。
「だから、“顔の半分”“突然”“電撃痛”があるなら、MRI検査も受けるべき。
三叉神経が血管に触れているか画像で確認できる。特に若い人は、脳腫瘍や
脳梗塞で三叉神経や血管が圧迫されて起こっていることもあり、それを
いち早く見つけられます」
<薬物治療で7~8割改善>
三叉神経痛の治療は、まず抗けいれん薬などによる薬物治療だ。
「これで7~8割の患者さんが良くなります。効果が出るのも早く、服用の
翌日か翌々日には痛みが消えます。ただ、毎日服用する必要がある。中には
数カ月だけ服用し、その後は薬を飲まなくても痛みが治まる人もいますが、
ほとんどは数年後、早ければ1年後に痛みが出てくるので、その都度薬を使う
ことになります」
薬物治療で効果を得られなかったり、副作用が強く服用ができない人は、
神経ブロック注射になる。
「それでもダメなら、微小血管減圧術という手術が検討されます。ここまで
いくのは患者さんの1割くらい。全身麻酔で頭蓋骨に穴を開け、顕微鏡で
観察して三叉神経に血管が当たらないようにします。手術を受けた人の9割は
症状が改善します。また、高線量の放射線で痛みを感じる神経を壊すガンマ
ナイフという選択肢もあります。ただ、健康保険が適用されず、効果も手術に
劣ります」
実は、三叉神経痛には、典型的な症状を伴わず、MRI検査でもはっきり診断
できない上、鼻や歯などさまざまな疾患のすべての可能性も否定される
ケースがある。
「非定型三叉神経痛といい、三叉神経痛と同じく薬物治療を行います。痛みが
消えれば、三叉神経に問題があったと判断します」
残念ながら、症状が改善されなければ、三叉神経によるものではないとされ、
内科やペインクリニック、精神科など複数の科とともに治療にあたるという。
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/156881