寄生虫療法が潰瘍性大腸炎に有望 | アクティブエイジング アンチエイジング

[寄生虫療法が潰瘍性大腸炎に有望]

(HealthDay News  2011年12月1日)


潰瘍性大腸炎の治療のために寄生虫卵を飲み込み、実際に改善効果を
もたらした男性の実例から、腸管を癒す“虫療法(worm therapy)”が注目
されている。


米ニューヨーク大学ランゴンメディカルセンター医学寄生虫学助教授の
P'ng Loke氏は、「この症例報告における我々の知見は、ヒト鞭虫:腸管に
寄生する線虫の一属)の卵の寄生によって潰瘍性大腸炎の症状を軽減できる
ことを示唆している」と述べている。

ヒト鞭虫は大腸に寄生するが、同氏らは今回、重度の大腸炎を有する35歳
男性で寄生虫療法の追跡調査を行った。

男性は大腸全摘を避けるため寄生虫(鞭虫)療法を試みた。
寄生虫卵投与に同意したタイの医師を訪れ、寄生虫卵1,500個を摂取した。
男性は自己治療後、 Loke氏に接触し、「基本的に症状はなくなった」と
述べた。
Loke氏らは、寄生虫卵摂取前の2003年から摂取2~3年後の2009年までの
血液と大腸組織のスライドおよび検体を分析。
ほぼ3年で症状は実質的に消失し、2008年に大腸炎が再燃した際は、さらに
2,000個の寄生虫卵を摂取し、再度改善したという。

研究の結果、活動性大腸炎の時期に採取した組織では、炎症性タンパクの
インターロイキン-17(IL-17)を産生するCD4陽性T細胞が多数みられたが、
寄生虫療法後は創傷治癒を促す蛋白のインターロイキン22(IL-22)を産生
するT細胞が多かった。
また、寄生虫療法後、大腸では有意に多くの粘液産生がみられた。


Loke氏は「大腸内の粘液不足は重度の症状と関係している。寄生虫が大腸内の
粘液産生を増加または回復させたと思われる。だだし、現時点では寄生虫
療法は十分に解明されておらず、期待はずれに終わる可能性もある。問題は、
これら寄生虫自体が、腸管に有害となり、人によっては炎症を悪化させる
可能性があること。ヒトへのリスクがより少ないブタ寄生虫を用いた研究が
進行中である」と述べている。

研究結果は、医学誌「サイエンス・トランスレーショナル医療」12月1日号に
掲載された。


米ルイビルLouisville大学(ケンタッキー州)消化器病学・肝臓学・栄養学
臨床研究部門責任者のGerald W. Dryden Jr.博士は、「因果関係は不明だが、
今回の研究は、これまで知られていなかったIL-22と鞭虫療法に対する反応
との重要な関連性を示している」と述べている。
 

 

 


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