[腸内細菌:免疫異常を抑制、潰瘍性大腸炎の治療法に期待]
(毎日新聞 2010年12月24日)
マウスの腸内に共生するある種の細菌が、免疫機能の異常を抑える細胞の数を
増やすことを、東京大の本田賢也准教授(免疫学)らが突き止めた。
免疫異常が原因の1つと考えられている潰瘍性大腸炎やクローン病の治療法に
つながる成果で、23日付の米科学誌サイエンス電子版に掲載された。
【斎藤広子】
<マウスで確認 東大チーム>
潰瘍性大腸炎とクローン病は、腸の粘膜に潰瘍ができる難病で、免疫機能の
異常が関与していると考えられている。
国内の患者数は潰瘍性大腸炎が約10万5,000人、クローン病は約3万人。
根本的な治療法はない。
本田准教授らは、無菌環境で飼育したマウスの大腸では、免疫異常を抑える
T細胞の一種「Treg細胞」の数が通常のマウスの約3割しかないことを
見つけた。
無菌環境マウスにさまざまな腸内細菌を接種し調べたところ、クロスト
リジウム属の細菌を接種した場合に、通常マウスと同程度までこの細胞が
増えた。
クロストリジウム属の腸内細菌が多いマウスはこの細胞が多く、炎症性腸炎に
抵抗性があることも分かった。
クロストリジウム属の細菌は、ボツリヌス菌など有害なものもあるが、無害な
ものは人間の腸内に多数共生している。
人間の場合も、潰瘍性大腸炎やクローン病の患者は健康な人に比べ、クロスト
リジウム属の腸内細菌が大幅に少ないという報告がある。
本田准教授は「細菌のどの分子が免疫異常を抑える細胞を増加させるのか、
詳しいメカニズムを解明し、治療薬の開発につなげたい」と話している。
http://mainichi.jp/select/science/news/20101224k0000m040099000c.html