[胃薬「PPI」服用中の下痢は早急に受診を―米で勧告]
(あなたの健康百科 2012年2月13日)
<ディフィシル菌関連下痢症の可能性>
米食品医薬品局(FDA)は2月8日、胃潰瘍や逆流性食道炎などの治療で胃酸の
分泌を強力に抑える「プロトンポンプ阻害薬」(PPI)を服用中の患者に
対し、安全性情報を発表した。
それによると、PPI服用中に下痢がなかなか治らない場合、より重い
ディフィシル菌(Clostridium difficile)関連の下痢症になっている可能性が
あり、早急に医師を受診すべきだという。
ディフィシル菌は粘膜を破壊する毒素を持つ細菌で、これによる下痢症は
入院患者での集団発生がしばしば問題となっている。
<H2ブロッカーとの関連も調査中>
FDAはPPIとディフィシル菌関連下痢症に関する文献のレビューを行い、
PPI服用例では非服用例に比べディフィシル菌関連下痢症をはじめとする
ディフィシル菌感染症のリスクが高まっていたことが確認されたとしている。
ディフィシル菌関連下痢症患者の特徴として、
(1)高齢
(2)慢性疾患や合併症がある
(3)ディフィシル菌関連下痢症発症との関連が指摘される
抗生物質を使用している
などが見られ、PPI服用に加えてこれらの因子を1つ以上持っている場合、
ディフィシル菌関連下痢症の重症度が高い傾向があったという。
PPIの強力な胃酸分泌抑制作用がディフィシル菌関連下痢症や他の下痢症の
発症に関連するともいわれているが、現時点では薬剤の使用期間や量など、
ディフィシル菌関連下痢症との詳しい関連を検討できるデータはほとんど
報告されていないようだ。
しかし今回、FDAではディフィシル菌関連下痢症の重篤性を重視し、医療
関係者向けに以下の注意喚起を行っている。
・PPI服用者で改善しない下痢が見られた場合、
ディフィシル菌関連下痢症の可能性を考える
・PPI服用期間中に治まらない水様下痢や腹痛、発熱が見られた場合、
患者にすぐ受診するよう伝える
・患者の状況に応じて、PPIの使用は必要最小限にとどめる
なおFDAは、PPIと同じく胃酸を抑えるタイプの胃薬「H2ブロッカー」と
ディフィシル菌関連下痢症の関連についても評価中であることを明らかにして
おり、今回の安全性情報でも注意すべき薬剤のリストにこの薬を加えている。
<日本でもマニュアルで対策呼び掛け>
日本では2011年3月、厚生労働省が出した「重篤副作用疾患別対応
マニュアル―重度の下痢」で、関連薬の1つとしてPPIが挙げられている。
薬事法に基づく副作用報告件数では、2007年に同薬使用例における下痢が
5例報告されているという。
同マニュアルでは、薬剤による重度の下痢の早期発見のポイントとして、
薬剤使用期間中の「便が泥状か、完全に水のようになっている」「便意切迫
またはしぶり腹(マニュアル中では『裏急後重』とも表記)がある」「便に
粘液状あるいは血液が混じっている」などの症状が挙げられている。
また、早期発見に必要な検査として、偽膜性腸炎が疑われる場合には便中の
ディフィシル菌毒素の検査や内視鏡検査を行うこととされている。
http://kenko100.jp/news/2012/02/13/02