[プロトンポンプ阻害薬の長期使用は骨折リスクを高める]
(HealthDay News 2011年5月9日)
胸焼けの一般的な治療薬であるプロトンポンプ阻害薬(PPI)の長期使用が
骨折リスクの増大と関連していることが、韓国の新しい研究で示唆された。
米国食品医薬品局(FDA)では2010年5月に、PPIのラベルに骨折リスクの
可能性に関する警告を追記することを決定しているが、今回の知見はFDAの
懸念を支持するものとなっている。
オメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾール、日本国内未承認の
エソメプラゾール、デクスランソプラゾール、パントプラゾールなど、
(胃)酸分泌を抑制するPPIは、胃・十二指腸潰瘍、胃食道逆流性疾患
(GERD)、食道炎の治療に使用される。
酸分泌抑制薬は世界で2番目に多く使用されている薬剤で、米国での売上高
(2005年)は270億ドル(約2兆2,140億円)近くに達している。
韓国、ハルリム大学病院(春川)家庭医学部のChun-Sick Eom博士らは、
1997年~2011年に発表された研究11件を対象にメタ分析を実施。
その結果、PPIにより股関節骨折リスクは31%、脊椎骨折リスクは54%
それぞれ増大しており、全体的には骨折リスクが29%増大していることが
判明した。
ラニチジンやファモチジンなどH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)では、
骨折リスクと有意な関連がなかった。
ただし、H2ブロッカーによる酸分泌抑制はPPIほど強力ではなく、PPIの
推定98%に対し70%であった。
研究結果は、医学誌「Annals of Family Medicine(家庭医学)」5月/6月号
に掲載された。
Eom氏は「骨折リスクは年齢、性別、人種、民族により大きく異なるため、
何が絶対リスクかは一概にいえない。臨床医は骨折リスクの高い患者、特に
65歳以上の女性にはPPI処方を慎重に行う必要がある。PPIとH2ブロッカーは
骨代謝に異なる影響を及ぼすと考えられ、これにより骨折リスクの違いの
説明がつく」と述べるとともに、今回の研究の限界として、被験者の骨折
リスクに影響を与えた可能性のある個々の栄養素データに触れていない点を
挙げている。
本研究の付随論説は、絶対リスクと便益のバランスをとることが重要であると
指摘。
別の専門家は「今回の研究は観察研究であるが、酸分泌抑制薬を使用している
患者に対する継続的な必要性に疑問を持つよう医師に促すものである」と
述べている。
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