[胃薬「PPI」で閉経後女性の骨折リスク35%増―米研究]
(あなたの健康百科 2012年2月13日)
<喫煙歴の有無でリスク異なる>
胃潰瘍や逆流性食道炎などの治療で胃酸の分泌を強力に抑える「プロトン
ポンプ阻害剤」(PPI)は、カルシウムの吸収を阻害することなどから、
長期使用が骨密度の低下を招く可能性も考えられる。
しかし、骨折リスクに関する複数の研究結果は一致していない。
米マサチューセッツ総合病院のHamed Khalili氏らは、米国の女性看護師を
対象にした研究のデータを分析し、閉経後女性がPPIを2年以上使用した
場合、大腿骨近位部(股関節に接する部分)の骨折リスクが35%上昇して
いたと、1月31日発行の英医学誌「BMJ」(2012; 344: e372)に発表した。
食事や生活習慣の関与を調べたところ、喫煙歴の有無でリスクが大きく異なる
ことも分かったという。
<使用期間が長いほどリスク増大>
Khalili氏らは、女性看護師研究の参加者7万9,899人について、2000~
2008年のPPI使用(過去2年以内に定期的に使用していたか)と大腿骨近位部
骨折の危険因子(閉経、余暇の活動、喫煙、飲酒、ホルモン補充療法、
サイアザイド系利尿薬、コルチコステロイド、ビスホスホネートの使用、
カルシウム摂取、骨粗鬆症の診断)を2年ごとに追跡した。
追跡中に893人で大腿骨近位部骨折が発生した。
PPIの定期使用は2000年には6.7%だったが、2008年には18.9%に増加して
おり、定期使用者は、BMI(肥満指数)が高く、身体活動と飲酒量が少なく、
骨粗鬆症歴を持つ割合が高かった。
また、ホルモン補充療法、サイアザイド系利尿薬、コルチコステロイド、
ビスホスホネートの使用率も高かったという。
PPI非使用者の大腿骨近位部骨折は1年間で1,000人当たり1.51人に対し、
PPI定期使用者では2.02人と高く、PPI非使用者に比べた2年以上のPPI
使用者の大腿骨近位部骨折リスクは1.35倍だった。
BMIや身体活動、カルシウム摂取などの全危険因子で調整した後もほぼ
同等で、 PPI使用の理由(胃酸逆流、胸焼け、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの
消化性潰瘍性疾患)を考慮しても変わらなかったという。
非使用者と比べた場合の使用期間別のリスクは、2年で1.36倍、4年で
1.42倍、6〜8年で1.55倍と、使用期間が長くなるほど上昇した。
<使用中止2年以上でリスク上昇は消失>
PPIの使用をやめて2年未満ではリスク上昇が残ったが、2年を超えると
非使用者と同等に低下した。また、
現在もしくは過去の喫煙者では、PPI使用により骨折リスクが50%以上上昇
していた一方、喫煙歴がない場合はリスク上昇が認められなかった。
これらの結果と10の先行研究の結果を合わせて解析すると、PPI使用による
骨折リスクは1.30となった。
同研究では、同じ胃酸の分泌を抑えるタイプの胃薬「H2ブロッカー」の
使用と大腿骨近位部骨折の関連についても分析したが、非使用者と比べた
使用者の骨折リスクは1.23で、PPIと比べてリスクの上昇は緩やかだった。
Khalili氏らは「長期の継続的なPPI使用の必要性を慎重に評価することが
重要で、特に喫煙歴がある場合は注意すべきだ」としている。
http://kenko100.jp/news/2012/02/13/01