アトピーと大気汚染の関係が解明へ | アクティブエイジング アンチエイジング

[アトピーと大気汚染の関係が解明へ]

(家庭の医学  2017年3月31日)


<大気汚染はアトピーの大敵!>
これまで証明されなかった、大気汚染物質がアトピー性皮膚炎の症状を増悪
させる仕組みの一部がようやく解明されました。
今後、新たな治療法の開発に結びつく発見と、期待されています。

アトピー性皮膚炎と大気汚染の関係は以前から指摘されていましたが、
科学的に証明するには至っていませんでした。

しかし2016年11月、東北大学大学院の研究で、大気汚染物質がアトピー性
皮膚炎の症状を引き起こす仕組みの一部が解明されました。

大気汚染物質は、車の排出ガス、工場からの煙、火力発電所、採石場などの
粉じん、土ぼこりなどに含まれ、おもに気管支や肺などの呼吸器の病気を
引き起こすリスクがあることがわかっています。

今回の研究では、大気汚染物質が皮膚に付着すると、それと結合するAhRと
いうたんぱく質が活性化され、活性化したAhRがアルテミンという
たんぱく質を多数発現させることが解明されました。

アルテミンは神経を成長させる「神経栄養因子」。
アルテミンの増加で皮膚の感覚神経が必要以上に表皮に向かって発達して
しまうため、過剰なかゆみを感じさせる原因となります。
つまり、皮膚に付着した大気汚染物質が、アトピー性皮膚炎の一症状である
かゆみを増大させるアルテミンを増やすことがわかったのです。

過剰なかゆみで皮膚を掻くことが増え、皮膚の細胞を傷つけてさらに
アレルギー物質が侵入しやすくなり、かゆみを増大させます。
この悪循環が皮膚のバリア機能を損傷してしまいます。

実験はマウスで行われましたが、発現したアルテミンを中和させて、その
働きを弱めると掻く行動が減ったということです。
また、人為的につくりだしたAhRをもたないマウスでは、大気汚染物質を
皮膚に塗布しても、普通のマウスに比べてアルテミンの発現量は数分の1に
とどまり、掻く行為もなかったといいます。


あくまでもアトピー性皮膚炎の悪化因子の一つであって、これだけでアトピー
性皮膚炎が成立するのではありません。


現在、アトピー性皮膚炎の治療は、ステロイドやタクロリムスなどの薬による
消炎治療が中心になっています。

この仕組みが解明されたことで、AhRの活性を抑える薬や、アルテミンの
働きを抑える薬を開発できれば、アトピー性皮膚炎の治療薬の選択肢も増える
可能性があると、大いに期待されています。

治療薬の開発までにはまだ時間がかかりそうですが、帰宅したら手や顔を
洗う、シャワーを浴びるなどで皮膚についた大気汚染物質を洗い流すことが
症状の軽減につながるでしょう。
洗ったあとは忘れずに保湿対策もしましょう。




(監修:関東中央病院 皮膚科特別顧問 日野治子)




http://sp.kateinoigaku.ne.jp/kiji/124321/