首やあごが腫れるのは何の病気? | アクティブエイジング アンチエイジング

[首やあごが腫れるのは何の病気?]

(家庭の医学  2015年6月25日)


<おたふくかぜ以外にも!?>
首やあご、耳の裏のあたりが腫れて痛くなることはありませんか。
原因として多いのは、ウイルスや細菌への感染。
よく知られているものとして、おたふくかぜ(急性耳下腺炎)がありますが、
ほかにも考えられる病気があります。

首、あご、耳の周囲には3つの大唾液腺(顎下腺、耳下腺、舌下腺)と多くの
小唾液腺が通っています。
これらの唾液腺にウイルスや細菌などが感染すると、炎症を起こして周辺が
腫れたり痛んだり、膿瘍ができたりします。


こうした症状を引き起こす病気としてよく知られているのは、おたふくかぜ
(急性耳下腺炎)です。
ムンプスウイルスの感染によるもので、口や鼻から入り込んで耳下腺で炎症を
起こします。
発熱、頭痛、全身倦怠感のほか、耳の下からあごにかけての腫れと痛みが
特徴的な症状です。
片側の場合もありますが、多くは左右両側で炎症が起こります。
また、あごの下にある顎下腺の腫れが合併したり、そこだけが腫れることも
あります。
子どもに多い病気ですが大人でも発症することがあり、子どもに比べて重症化
しやすい傾向です。
膵臓炎や内耳炎、髄膜炎を合併することがあり、さらに睾丸炎や卵巣炎を
伴うと不妊のリスクも高まります。
治療は安静が基本で、必要に応じて鎮痛解熱薬を用います。
合併症はそれぞれの専門医の下で治療することが肝要です。


一方、細菌感染による炎症は化膿性唾液腺炎(細菌性唾液腺炎)と呼ばれ、
症状がある唾液腺によって耳下腺炎、顎下腺炎、小唾液腺炎に分けられます。
耳下腺炎は耳の前の部分、顎下腺炎では下あご、小唾液腺炎は口内の唾液腺の
出口に腫れや発赤、痛みがみられます。
口腔内の常在菌が原因となることが多く、口呼吸などで唾液の分泌が少なく
なると唾液の出口(導管)から細菌が侵入しやすくなります。
免疫力が低下していたり、シェーグレン症候群や唾液管末端拡張症などの
既往があると発症しやすいこともわかっています。
治療は抗菌薬や消炎鎮痛薬の服用で、膿瘍がある場合は切開が必要なことも
あります。


細菌性の急性顎下腺炎では、唾石(だせき)も多くみられます。
唾石とは唾液の排出管に入り込んだ異物を核として唾液に含まれる
カルシウムが沈着したもので、尿路結石などと同様のもの。
あごの下が腫れて痛み、ひどくなると膿瘍となって首まで腫れが広がります。
自然に排出されることもありますが、除去のために手術が必要になることも
あります。


このほか、あごに3~4cmほどの硬いしこりができる慢性硬化性顎下腺炎
などの病気もあります。
キュトナー腫瘍とも呼ばれ、痛みはなく血液中の免疫グロブリン(IgG)中の
IgG4という成分の上昇、唾液腺や涙腺、膵臓、腎臓などの腫瘤が特徴です。
治療ではステロイドが効果を上げています。


なお、唾液腺にも腫瘍が発生することがあり、他の部位と同じように良性の
ものと悪性のものに分かれます。


あごや首に腫れや痛みなどが生じた場合は、耳鼻咽喉科の専門医に相談
しましょう。




(監修:はくらく耳鼻咽喉科・アレルギー科クリニック院長 生井明浩)



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