[春の「うつ」発症、花粉症で悪化も…アイスランドの食生活に予防ヒント]
(読売新聞/ヨミドクター 2017年3月10日)
3月5日は啓蟄(けいちつ)でした。
暖かくなり、地中の虫が地表に出てくるといういわれの日ですね。
日差しも増え、花も美しい春。冬の間、沈んでいた気持ちも、生き生きとして
きます。
人生の新しいイベントの時期でもあり、テレビのCMは引っ越し、家具、
スマホの買い替えが花盛り。
さて、春になると、どうして元気になってくるのでしょう。
医学的には、日照時間が長くなると、脳内の「満足ホルモン」である
セロトニンが増えてくるためと説明されています。
セロトニンはスイーツを食べるときに分泌されるホルモンです。
ということは、春自体が、スイーツのように満足感をもたらしてくれているの
です。
男性更年期の患者さんも秋から冬にかけて、元気がない、気分が沈むという
方が多いですが、冬を乗り切れれば「もう大丈夫」と明るい顔でお見えになる
方が多いです。
もっとも、少数ではありますが、むしろ「春が憂鬱」という方もおられます。
春になって社会全体がリフレッシュされているのに、「自分だけ取り残されて
いる」と思ってしまう方ですね。
他人がより幸福に見えて、一層みじめな気がしてしまう。家の中に引きこもり
がちになる人もいます。
このような症状は、一時的な「気分の落ち込み」ではなく、「うつ病」の
ことが多いと言われます。
まず他人に助けを求めましょう。
メンタルヘルスを専門とする医師を受診すると、よいアドバイスをもらえ
ます。
気軽に相談してください。
<魚のビタミンDと日光で…>
この春先の気分の落ち込みは、一般には冬の日照時間が少ない、緯度の高い
地域に多い症状だと言われています。
ところが、例外として、北極圏に近いアイスランドにはほとんど見られない
ことが知られています。
アイスランドは人口が少ない上に、島国で周囲から隔絶されていることから、
そもそも、うつが遺伝子的に起こりにくい人が集まっている可能性もあり
ますが、もう1つのポイントは、アイスランドの人々は魚を沢山食べること。
魚類に含まれるビタミンDを十分に摂取することが「うつ病」の予防になって
いるのかもしれません。
ビタミンDはまた、日光に当たることでも働きが良くなります。
ビタミンDの補充は、花粉症の予防にもよいと言われています。
実際に花粉症も、この「うつ」を悪くします。
鼻が詰まる、目がかゆいという症状自体、気が滅入ります。
さらに、花粉症アレルギーで体中のサイトカインという物質が異常になり、
風邪症状を引き起こし、脳にも「うつ」状態を起こしやすくすると言われて
います。
春が近づいているのに、「どうも今年は元気がないな」というときには、
魚中心の食事にビタミンDサプリ、そしてなによりも日光に当たって、
ハツラツといきましょう!
<堀江重郎>
順天堂大学大学院教授。泌尿器科医。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170310-00010000-yomidr-sctch