[心に栄養(2)鉄分不足で産後うつも]
(読売新聞 2016年11月21日)
心を健康に保つ栄養素として、ビタミンと共に欠かせないのが、代表的な
ミネラルである鉄分だ。
鉄は、血液中で酸素の受け渡しを担うヘモグロビンを作るのに欠かせない。
不足するとヘモグロビンの働きが弱まり、全身に届く酸素の量が減って
鉄欠乏性貧血が起こる。
脳機能も影響を受ける。
横になる度に、脚に痛みやかゆみなどの不快感が生じる「むずむず脚症候群」
が引き起こされ、睡眠障害に陥る人もいる。
更に、焦燥感や集中力低下、興味・関心の低下などのうつ病に似た症状が
表れることもある。
鉄は、レバーや赤身肉、魚などに含まれるが、月経のある女性は特に不足
しやすい。
30~40歳代の女性の場合、血液中のヘモグロビン値が低い人は20%を超える
とみられている。
出産後にうつ症状が表れる「産後うつ」の中にも、鉄不足が関係する例が
あると考えられている。
国立精神・神経医療研究センター疾病研究第三部部長の 功刀(くぬぎ) 浩
さんは「産後うつはホルモンバランスの変化や環境要因など様々な原因で
生じ、鉄不足も原因の1つと考えられる。鉄の補充だけで産後うつがすっきり
と治る例は多くはないが、血液検査を行い、調べてみる意味はある」と話す。
体内の臓器には鉄分をためる機能があり、鉄不足が続くと、蓄えられている
貯蔵鉄の量がまず減っていく。
貯蔵鉄の量は、血液中の「血清フェリチン値」を調べる検査で分かる。
鉄は過剰に摂取すると、臓器に悪影響を与えて健康を損なう。
適量を見極めるためにも、この検査は有用だ。
ただ、一般的な健康診断の検査項目には入っていない。
希望する人は医師に相談してほしい。
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20161118-OYTET50013/