[免疫と病気 ピリピリの正体:2 口が痛くて開けられない]
(朝日新聞 2012年11月2日)
涙が減って目が傷つくドライアイの症状や、突然の顔の赤みに悩んでいた
徳島県吉野川市のタカコさん(75)は、2008年6月、下唇の裏がピリピリと
痛むことに気づいた。
父が興した運送業を継ぎ、夫と二人三脚で働きながら、一男一女を育てた。
長男夫婦に会社をまかせたあとは、事務所の留守番役としてゆったり過ごす
つもりでいた。
だが夫が病に倒れ、今度は看病に追われるようになった。
夫は口の中のがんで徳島大病院(徳島市)に入院していた。
看病のついでに、タカコさんは病室に来た口腔内科の担当医に自分の痛みを
相談し、下唇を見せてみた。
しかし、ちらっとのぞき込んだ医師は「ヘルペスかな」と首をかしげるだけ。
すぐにはわからないようだった。
「まあ、またストレスのせいかもしれないわ」
2年前に原因不明の顔の赤みに苦しんだとき、皮膚科の医師に「ストレスを
ためないように」と言われたことを思い出した。
でもこのときは、自分の体調より夫の看病が優先だった。
夫は2009年11月に亡くなり、葬儀や法要で慌ただしく年の瀬を迎えた。
年末は運送業のかき入れ時だ。
この年は特に忙しく感じた。
口のピリピリは続いていた。
痛みに加え、口の中が熱く感じるときもあった。
食べ物がかみにくく、食事も進まない。
食欲はあるのに、いつの間にか体重は5キロほど減っていた。
「これはいかん。しっかり食べないと」
食べる量を減らさないように気をつけた。
ところが大みそかのころ、ピリピリした痛みが急に舌に移った。
気になって眠れない。
鏡に向かって舌を出すと、先端が真っ赤に映った。
マスクをして「正月休みが明けるまでは」と我慢していると、今度は舌全体が
真っ白になった。
「口、開けてられんのよ」
家族に相談すると、長男の妻が血相を変えた。
「これは大変。病院行かなくちゃ」
ようやくタカコさんも重い腰を上げ、2010年1月、近くの病院を訪ねた。
「膠原病の一種かもしれない」と言われたが、そこでは原因はわからな
かった。
http://www.asahi.com/health/ikiru/TKY201211010214.html