免疫と病気 ピリピリの正体:1  目から火花が出た | アクティブエイジング アンチエイジング
[免疫と病気 ピリピリの正体:1 目から火花が出た]

(朝日新聞  2012年11月1日)


「このまま息絶えるまで、苦しみが続くんだろうか——」。
寝つけない夜、徳島県吉野川市のタカコさん(75)は不安になる。


10年ほど前、「なんだか目がゴロゴロする」と、近所の眼科に通い始めた。
最初は結膜炎と診断され、目薬をもらった。
だが、目の違和感は消えなかった。

日光がまぶしく感じられ、ひどいときは目を開けていられないほどだった。
「目から火花が出るって、きっとこんな感じだわ」
サングラスを手放せなくなった。

症状が改善しないまま、10カ所ほどの眼科を訪ね歩いた。
やがて「ドライアイの疑い」といわれるようになった。
涙の量が減り、角膜が乾いて傷つきやすくなる病気だと説明された。
実際に傷ついた角膜の写真も見せてもらった。

ただ病名は変わっても、さすように医師から指示される目薬は同じ。
症状も相変わらずで、もどかしさが募った。


2006年春。
ある朝、突然、両方の頬と額が真っ赤になった。
ストーブの火に当たったように、顔がかっかと火照る。

近所の皮膚科クリニックでは原因を突き止められず、「ストレスでは? 
ゆっくりされたらどうですか」と諭された。

夫が体調を崩して10年近く入退院を繰り返しており、看病のストレスは
あった。
「でも先生、ゆっくりなんて無理だわ」と返すよりなかった。

顔の赤みは4カ月ほどで治まったが、目の症状は相変わらず。

2007年、徳島市内の眼科で「涙点プラグ」の装着を勧められた。
目頭(目の鼻に近い方の端)にある涙の排出口をシリコーン製の栓でふさぐ
治療法だ。
涙をとどめておけるので、目が乾きにくくなるという。
「先生がいいというなら、やるしかないわ」
タカコさんは二つ返事で同意した。
痛みもなく、いつもの診察と同じくらいの短時間で両目にプラグがはまった。

けれど、劇的な変化は起こらなかった。
「何やっても治らん。なんか他の病気と関係あるのかな」
次々に起きる原因不明の不調。
不安がふくらんだ。


そして2008年夏、こんどは下唇の裏に、ピリピリとした痛みがあることに
気づいた。



(冨岡史穂)




http://www.asahi.com/health/ikiru/TKY201210310191.html