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[膵臓は果糖を味わっている]

(HealthDay News  2012年2月6日)


膵臓には舌上と同様に甘味受容体があり、果糖(フルクトース)を”味わう”
ことが新しい研究で示された。

果糖とグルコースは異なるタイプの糖で、自然界では果物やハチミツなどに
含まれている。
果糖の摂取源の1つとなっている高果糖コーンシロップ(HFCS)は、
ソーダやシリアルなど多くの加工食品や飲料に添加されており、栄養学
専門家は米国人の果糖摂取量過剰に警告を発しているが、今回の知見は
この懸念をさらに強化するものだという。


今回、米サンフォード・バーナム医学研究所(オーランド)助教授のBjorn
Tyrberg氏らは、ヒトおよびマウスの膵細胞を用い、実験室レベルで、
果糖のインスリン分泌における役割を調べた。
その結果、果糖がβ(ベータ)細胞上の甘味受容体を活性化し、インスリンを
分泌させることがわかった。

現代の食事でよくあるように、グルコースと果糖が同時に存在すると、
より多くのインスリンが分泌された。

この甘味受容体を不活性化すると、果糖に曝露されてもβ細胞はインスリンを
分泌しなかった。

Tyrberg氏は「味覚は舌だけのものではないことがわかった点がすばらしい」
と述べている。

この知見は、米国科学アカデミー発行の「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」オンライン版に2月6日掲載された。


インスリンは、血液中からグルコースを細胞内に取り込むホルモンで、通常、
食事をすると、膵臓のβ細胞が反応してインスリンが分泌され、グルコース
レベル上昇に対応する。
インスリンは体内の他の細胞に結合し、グルコースを細胞内に入れ、
エネルギー源として供給する。
インスリン高値、すなわちインスリンが効果的に用いられないことは、
肥満や2型糖尿病に関連する。


果糖はこれまでインスリン分泌に関連があるとは考えられていなかったが、
今回の研究で、膵臓が果糖を感知したときにグルコースが存在すると、
インスリン分泌に影響のあることが示された。
「肥満や2型糖尿病発症への影響は不明だが、膵臓の甘味受容体がこれら
代謝疾患に何らかの役割を果たしていることが示される」と著者らは述べて
おり、「確証のため、現在、人体での試験を開発中である」という。

米レノックス・ヒル病院(ニューヨーク)のSpyros Mezitis博士は、「果糖と
グルコースを同時に摂取するとより多くのインスリンが分泌され、体への
負担が増す。糖の摂取量が高いと膵臓が疲弊し、インスリンを分泌しなくなる
原因になるのかもしれない」と述べ、今回の知見は「食事で果糖摂取を減少
させる必要があるさらなるエビデンス(科学的証拠)となる」としている。


なお、米国コーン精製業者協会はこの研究についてのコメントは拒否して
いる。