[梅毒女性患者が前年の2倍になり医師「異常な数字」]
(NEWSポストセブン 2016年4月23日)
国立感染症研究所によると、2013年の梅毒患者数は、全国で1200人を超え、
2014年は1671人、2015年は2698人。
今年になっても1月から3月の3か月で796人。
すでに前年の2倍の患者数だ。
都道府県別では東京、大阪、神奈川、愛知、埼玉の順に多い。
この数字を国立感染症研究所の細菌第一部長・大西真さんは「注意すべき
異常な数字」と言い、大手婦人科医院の新宿レディースクリニック副院長の
釘島ゆかりさんは「爆発的」とみる。
その傾向で顕著なのが、上記の通り、女性患者の急増だ。
さらに、全国の女性感染者は2010年から2015年までの5年間で5倍。
全体の患者数の半数を超える東京都では、20~24才の女性患者数が突出して
増え続けている。
2013年から51人、87人、271人と5倍以上。
今年に入ってから、「当医院では、最近の10か月間で患者数が40人を超えて
います」と釘島さんは語る。
かつて女性患者の多くは男性との性行為によって感染したが、ここ数年は
女性から男性に感染することも多い。
「梅毒は、私たち40代以下の医師にとって、教科書でしか見たことのない
性感染症でした。それが一昨年、先輩医師から『初めて梅毒の診断をしたよ』
と聞いて驚いていたら、去年から毎月、立て続けに感染患者が来院し始め
ました」
統計によれば女性感染者の70~80%が平成生まれの20代前半で、40代も5%
ほどいる。
男性患者は30代が最も多く、次は20代ではなく、40代が続く。
ペニシリンによる治療で1943年以降は制御可能となったと思われていた
梅毒が、今また息を吹き返し、私たちを脅かしている。
そもそも梅毒とはどんな病気か。前出・大西さんは語る。
「病原体は梅毒トレポネーマと呼ばれる、螺旋状の菌ですが、肉眼では見る
ことができません。感染力は非常に強くて、この菌を排出している感染者と、
コンドームをしないでセックスをしたり、口によるオーラルセックスを
すると、高い確率で感染します」
たった1回の性交で感染してもおかしくないといわれているが、梅毒の
恐ろしさはそれだけではない。
「感染すると、3週間ほどの潜伏期間を経て、感染した場所に潰瘍のような
ものができ、近くのリンパ節が硬く腫れますが、どちらも痛くもかゆくも
なく、自覚症状がほとんどありません。潜伏期間はセックスしても感染する
可能性は低いが、いったん潰瘍ができると強烈な菌を排出し、相手の性器や
その周辺の傷のある部分と接触するとそこから感染します」
この“第1期”が、最も危険な時期で、知らず知らずのうちに感染源になって
いる。
潰瘍やリンパ節の腫れは、治療をしなくても、3週間くらいで消失して
しまい、唇などわかりやすいところにできても、腫れが消えてしまえば、
『何だったんだろう』と思う程度で、その場をやり過ごしてしまう。
「その消えた菌はどこへ行くかというと、血液の中に入り込み、全身を巡り
ます。そして4~9週間の潜伏期間の後、今度は手のひらから足の裏など、
全身に発疹という形で表れます」(大西さん)
これが“第2期”で、真紅の“薔薇疹”に驚き、発熱や疲労感が伴うこともある。
感染者があわてて病院に駆け込んでくるのがこの時期だ。
しかし、ほとんどの患者がこの段階で“梅毒”と診断されるかというとそうでは
ない。
前出の釘島さんは語る。
「全身の湿疹を診て、梅毒と診断できない医師も中にはいます。まだまだ
症例が少ないですから、医師によってはのみ慣れない薬による“薬疹”と誤診
するケースもある、と聞きます」
当然、治らない。
さらに怖いのはここからだ。
数週間から、長い場合は数か月の後、何の治療も施さないにもかかわらず、
“薔薇疹”は消えてしまい、その後、10年から30年の長い潜伏期間に入る
のだ。
潜伏している間は、誰かにうつす危険はないが、本人の心臓や血管、ときには
脳が少しずつ侵されていき、なかには錯乱したり、麻痺したり、痴呆になる
ケースもある。
万一、妊婦が感染したり、梅毒患者が妊娠すると、流産や死産のリスクも高く
なる。
(女性セブン2016年5月5日号)
http://news.livedoor.com/article/detail/11446898/