顎の痛みには手術、マウスピースが有効? 顎関節症の治療法 | アクティブエイジング アンチエイジング
[顎の痛みには手術、マウスピースが有効? 顎関節症の治療法について解説]

(MEDLEY  2016年3月19日)


顎が痛くてどうしようもない、口が開きづらいからご飯が食べられない・・・
そんな顎関節症はどのように治療すれば良いのでしょうか?
解説します。



<顎関節症の痛みにどのような治療法が有効なの?>
顎関節症は、顎の痛み、口が開かない、口を開くとき雑音がする、などと
いった症状が見られる病気です。
治療法としては、どのようなものがあるのでしょうか?

まず、顎関節症の治療法として大きく分けると保存療法と手術療法に分け
られます。
保存療法には、薬を使った治療、スプリント(マウスピースを装着するような
治療)、理学療法などが含まれ、手術療法には、主に内視鏡手術が含まれ
ます。
これらの治療法について詳しく説明していきます。



<薬を使った治療>
日本歯科薬物療法学会が作成した顎関節症の関節痛に対する消炎鎮痛薬診療
ガイドラインでは、「顎関節症の関節痛を有する患者に消炎鎮痛薬は有効で
ある(推奨度:弱いが推奨する)」と記載されています。
しかし、すべての薬に効果があるかというとそういうわけではなく、
ジクロフェナックとナプロキセンに関節痛と口を開ける程度に対して効果が
あるという記載でした。



<スプリント(マウスピース)>
スプリントは、噛み締める時に、関節にかかる負担を軽減するために行うもの
です。
スプリントには、スタビライゼーション型スプリントとリポジション型
スプリントなどの種類があります。
スタビラーゼーション型スプリントは、噛み合わせを安定させたり、顎への
負担を軽くする一般的なマウスピースです。
一方、リポジション型スプリントは、関節円板を正しい位置に誘導するための
マウスピースになります。
これらの使い分けは、病型や重症度によっても変わります。
詳しくは後ほど述べたいと思います。



<理学療法>
理学療法では、電気刺激、温熱療法、マッサージ、運動療法などが行われ
ます。
それぞれ、関節痛を軽減する、筋肉の緊張を和らげる、口の開き具合を改善
するといった目的があります。
マッサージや温熱療法のように、自分でついやろうとしてしまうこともあるの
ですが、まずは専門家の指導をしっかり受けることが大事です。



<手術療法>
主に関節鏡下手術と関節腔開放手術があります。
関節鏡下手術は、内視鏡を用いながら関節円板を元の位置に戻したり、
変形した関節円板を切除したりする手術です。
関節鏡下手術は侵襲が少ない手術です。
一方、関節腔開放手術は、関節を開いて行う手術になります。



<関節腔洗浄療法>
関節の隙間に注射で生理食塩水を入れ洗浄することで、関節の動きをよくする
方法です。



<パンピング・マニピュレーション>
注射針から液体を流し入れて、圧を加えることで関節円板を元の位置に戻す
治療法です。



顎関節症の主な治療法について説明してきました。
しかし、これらの適応は病型によっても異なります。
次に、顎関節症のどのような障害によって、どの治療法が適応になるか解説
します。




<病気の種類によって異なる顎関節症の治療法について>
まず、顎関節症の病型(種類)について説明します。
顎関節症では、その障害像(病態)によって、以下のように大きく5つの型に
分けられています。

・咀嚼筋痛障害(I型):嚙み砕く時に必要な筋肉(咀嚼筋)の障害が
               主である場合
・顎関節痛障害(II型):靭帯や関節の袋の病変が見られる場合
・顎関節円板障害(III型):関節円板の障害がある場合
               a:復位性、b:非復位性
・変形性顎関節症(IV型):骨の変形がある場合
・I型からIV型では説明できないもの(V型)


それぞれの病型に合った治療法があります(もちろん病型だけで治療法が判断
されるものではありません)。
以下にそれぞれの治療法をあげます(日本補綴歯科学会、顎関節症に関する
ガイドラインを引用・一部改変)

・I型の治療適応
   薬物療法(非ステロイド性消炎鎮痛剤、筋弛緩薬)、
   スプリント療法(スタビライゼーションスプリント)、
   理学療法(顎運動訓練、レーザー、温熱療法、マイオモニター、
   TENS電気刺激)、カウンセリング、咬合改善治療

・II型の治療適応
   薬物療法(非ステロイド性消炎鎮痛剤)、
   スプリント療法(スタビライゼーションスプリント)、
   咬合改善治療、顎関節洗浄療法

・III型の治療適応
   薬物療法(非ステロイド性消炎鎮痛剤)、
   スプリント療法(スタビライゼーションスプリント・リポジション
   スプリント)、顎運動訓練、咬合改善治療、マニピュレーション、
   顎関節洗浄療法、鏡視下手術、開放手術

・IV型の治療適応
   薬物療法(非ステロイド性消炎鎮痛剤)、
   スプリント療法(スタビライゼーションスプリント)、
   顎運動訓練、咬合改善治療、マニピュレーション、顎関節洗浄療法、
   鏡視下手術、開放手術

・V型の治療適応
薬物療法(マイナートランキライザー)、カウンセリング


これらの治療法が完全に当てはまるということではないですが、一応の適応と
してこのような形になっています。
それでは最後に、治療を行った時に可能性として考えられる副作用について
見ていきましょう。



<顎関節症の治療、副作用は?>
まず、薬治療の副作用としては以下のものが挙げられています。
  ・消化器系の障害:胃痛、嘔吐、吐き気
  ・心窩部痛

理学療法においては、電気刺激や温熱刺激といった物理療法を行う場合には
副作用(有害事象)を起こさないために、一定の注意が必要です。
例えば、皮膚炎はないか、感覚障害はないかといったところです。

スプリントに関しても、合わないスプリントを装着した場合には逆に顎が痛く
なったりすることもあります。
このような副作用(有害事象)は、かなり稀に見られることですが、
不安な方は念のため医療機関で相談することをおすすめします。



今回は、顎関節症の治療法について解説してきました。
ついつい見逃しがち、または放っておきやすい顎関節の痛みですが、
しっかり治療を行うことが大事です。




https://medley.life/news/item/56de4971b465901e008b4759