[<食の泉>(72)食感というセンサー/粘り・喉ごしも味を左右]
(河北新報 2015年07月26日)
味覚の心理学もきょうで最後。
これまでとは少し異なる味覚の話をしましょう。
味は五つのセンサーで感知するのだというお話をしましたが、実はそれだけ
ではありません。
食べ物の粘りや口当たり、喉ごしなどの食感(テクスチャー)も、味を左右
する大きな要素の一つなのです。
林望さんの『イギリスは美味しい』という本によると、イギリス料理が
おいしくないのは、テクスチャーがなくなるまで煮込むからだということ。
素材の良さを活かそうと、調理法を選ぶ和食文化に育った私たちに、
受け入れられないのも無理はないかもしれません。
私たちが主食としている米は、味でいえばむしろ単調で、粘りや弾力といった
テクスチャーでおいしさが決まるのですから。
味覚はとても複雑です。
臭いのように鼻で感じること、盛りつけのように目で感じること、そして、
テクスチャーのように筋肉や皮膚で感じること。
それらすべてが複雑にからみ合って「味」になるのです。
(宮城学院女子大教授 大橋智樹)
http://www.kahoku.co.jp/special/spe1158/20150726_01.html