[<食の泉>(33)移民の背景/人口 食料国策見え隠れ]
(河北新報 2015年06月11日)
つい近年まで、人口問題と言えば、もっぱら過剰人口をどうするか、
食料不足をどうするか、という問題でした。
そうした中で、移民政策がとられたのです。
日本でも明治以降、断続的にですが、移民政策が実施されました。
ハワイ、ドミニカ、アメリカ、ブラジル、ペルー、フィリピン、満州
(中国東北部)、北米・中米・南米、そして、アジアなど、実に広い範囲に
移民を送り込んでいました。
例えば、20世紀初頭の日本の人口は、5千万人に達していなかったにも
かかわらずです。
最近では、日本の人口減少傾向から、外国人労働者を受け入れるべきだとの
議論もあります。
移民は、形式的には個人の意思によるとされますが、その背後には、国策が
見え隠れします。
昨今では労働問題として扱われることもありますが、その根底には食の問題が
横たわっていることは言うまでもありません。
(宮城学院女子大教授 田中史郎)
http://www.kahoku.co.jp/special/spe1158/20150611_01.html