禁煙が発症リスクに? 中高年の潰瘍性大腸炎 | アクティブエイジング アンチエイジング
[禁煙が発症リスクに?中高年の潰瘍性大腸炎]

(ダイヤモンド・オンライン  2014年6月11日)


潰瘍性大腸炎(UC)は、大腸の粘膜にびらんや潰瘍ができる炎症性疾患。
国によって難病指定されている。

便がだんだん緩くなるのが初期症状で、重症化すると頻繁に血便や下痢、
腹痛を起こし、発熱や体重減少が生じる。

思春期~若年期の“難病”というイメージだが、発症のピークは思春期と
中年期の二層性、というのが定説だ。
福岡大学筑紫病院の高橋晴彦氏らの研究によると、日本では10~20代に
発症のピークがあり、さらに40~44歳、50~60代にもう一山来ることが
示された。


また、2001年以降、50歳以上でUCを発症するケースが以前より約5倍も増加
しているという。
興味深いのは、50代の発症は一度もタバコを吸ったことがない「Never
Smoker」より、喫煙者が禁煙した場合で発症数が多くなる点だ。
健康を気遣った中高年期の禁煙が裏目にでるとは、何とも恨めしい。


これまでにも「禁煙はUC発症のリスク因子である」「喫煙はUCの発症を抑制
し、症状を軽くする」との報告があった。

また、治療中のUC患者に対するニコチンの影響を検討した研究では、
ニコチンパッチを貼付した患者で、腹痛や排便回数などの症状が軽くなり、
腸粘膜の状態が改善するなど一定の効果が認められている。

ただし、ニコチンの何が、どういうメカニズムでUCに効くのかは不明の
ままだ。

一説では、喫煙者の腸内は非喫煙者に比べて免疫機構の一端を担う炎症性の
生体物質が低下しており、その結果、炎症性疾患であるUCの症状が抑制
されるらしい。

実際、症状緩和の効果は認められるので、ニコチンパッチを自由診療として
処方する医療機関もある──さすがに喫煙を勧められることはない。

とはいえ、禁煙補助以外でニコチンパッチを長期使用した場合、発がん性など
安全面での疑問は残る。
中高年のUC患者を対象とした長期試験が必要だろう。



ちなみに、UCと似た症状が現れる炎症性疾患のクローン病(やはり難病
指定)は、喫煙が明確な発症・再発リスク因子。
何がUCと異なるかは不明だが、こちらは確実に禁煙を勧められる。



(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)



http://news.goo.ne.jp/article/diamond/life/diamond-54331.html