[向精神薬の依存症に翻弄された2人・・・漫然とした使用が危険招く]
(産経新聞 2013年5月8日)
用法や用量を守れば、統合失調症や鬱病などの治療に効果がある向精神薬。
しかし使用者の甘い考えや、医師の安易な処方により、依存症に陥る患者の
割合が増えている実態が明らかになった。
緊張時の発汗異常などの症状に悩んでいた神戸市内の男性(41)は、
平成16年から精神科に通い始めて向精神薬を服用。
依存症に陥った。
医師のアドバイス通り1日3回のペースで飲んでいたが、発汗への効果は
感じられず、強い眠気など別の症状が出始めた。
副作用を疑い薬をやめたが、その途端不眠や、光が異常にまぶしく感じられる
などの症状に襲われた。
薬を処方した医師に尋ねても、「あなたのもともとの病気だろう」と言われ、
取り合ってくれなかったという。
断薬して4年が経過した現在も、不眠などの症状は残り、まぶしさのため、
外出時にはサングラスが欠かせない。
男性は「海外では、向精神薬への依存はヘロインよりも離脱しにくいと指摘
する専門家もいる。薬物依存が重大な副作用であることを知りながら、見て
見ぬふりをしている精神科医がいる」と訴えた。
数年前まで向精神薬依存症を患っていた前橋市の男性(45)はノルマ至上
主義の会社の方針に耐えられず、28歳で退職。
このころから不眠症を発症して睡眠薬を服用、次第に常用するようになった。
母親の勧めで睡眠導入剤を半錠だけ飲んだところ、すぐに深い眠りに。
「いつでも眠れる」と、その効果に興奮した。
しかし薬への耐性がつき、1錠や2錠では効かなくなった。
まどろんだ状態の幸福感が忘れられず、さらに強力な薬を求めて精神科を
受診し、手術の麻酔で使う薬を処方してもらったという。
薬の副作用からか、商店街のシャッターをたたき続けるなどの奇行を繰り返す
ようになり、別の精神科に相談したが、すでに重度の依存症に陥っていた。
それでも「逮捕されるわけではない」と飲み続けた。
「もう死んでほしい」
いったん入所した治療施設を追い出され、自宅に戻ってから母に言われた
一言でようやく真剣な治療を決意。
群馬県の医療施設で約1年間、治療に専念し、断薬に成功した。
それから数年、薬には手を出していないが、今も依存症への恐怖は消えない。
「また薬を飲みたい衝動に駆られたら、どうなるのか」
向精神薬に詳しい赤城高原ホスピタル(群馬県渋川市)の竹村道夫院長は
「向精神薬は統合失調症や鬱病に効果があり、用法や用量を守れば問題ない。
ただし、漫然とした処方や使用は依存症を招く危険性がある」と話している。
http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/130508/waf13050802060000-n1.htm