「尿漏れ」に悩む中高年男性が、意外に多い。
出産の影響などで増える女性の尿漏れと比べ、認知度は低い
ため周りに相談できず、有効な対策を講じられない人も少なく
ない。
こうした需要に応える男性専用の排尿ケア用品が増えてきた。
吸水性を保ちながら、装着しているのがわからないよう工夫が
凝らされている。(田辺裕晶)
[60万人の悩み]
日本コンチネンス協会の西村かおる会長によると、男性の尿
漏れで吸水パッドなど専用品が必要なのは、前立腺肥大の初期
症状などで突然強い尿意が起きる「切迫性尿失禁」や、前立腺
肥大や前立腺がんの手術後に一時的にせきやくしゃみなどで
尿が漏れる「腹圧性尿失禁」。
50歳を越えたころから徐々に増える。
下着を上げた後、尿道内に残った尿が漏れる症状は多くの
男性が経験している。
ユニ・チャーム(東京)が50~75歳男性2,500人を対象に
行った調査では、「ズボンを濡らすほどの尿漏れを週1回以上
経験している」と答えた人は2.6%いた。
同社ヘルスケア事業部、鈴木輝雄さんは「人口から推定すれば、
尿漏れに悩む男性は国内で60万人はいるはず」と話す。
吸水パッドなどで対処している人はわずか4%。
妻が気付いても、紙パンツなど“介護感”があるものは本人の
プライドを傷付けるのを恐れて渡せないことも多いという。
「『男も尿漏れするとみんなが知ってくれたらどんなに
楽か…』。そんな声が寄せられています」と鈴木さん。
[100ccまでOK]
ユニ・チャームでは伸縮する素材と前開き機能で下着のような
履き心地にした「吸水下着スリムウェア」を販売しているほか、
男性専用パッド「メンズガードスリム」を発売する。
三角形状でふだんの下着の下に装着、局部だけを包み込む
ものでお尻にパッドが回り込まず、またずれも起こさない。
100ccまで尿を吸収できるが、女性用に比べて横幅を広げる
ことで外観に影響しない薄さで必要な吸水量を確保している。
「従来の尿ケア用品にあった高齢者向けのやぼったいイメージ
を一新し、ファッション性を持たせることを重視しました」と
話すのは白十字(東京)マーケティング部の吉井泉さん。
同社が発売予定の吸水パンツ「無頼」は、黒いボクサータイプ
だ。
吸水量は30ccで、主に尿道内に残って漏れる尿への対策が目的。
吸水素材を内部に縫い込んであるが、こちらも薄型で外からは
わからない。
また洗えば何度でも繰り返し使用することができる。
[見られても安心]
平成3年から男性用尿漏れパッドを販売している花王(東京)
のサニタリー事業グループ、中尾良雄さんによると「軽失禁
用品の国内市場は約100億円。このうち男性用は約2億円に
過ぎません」
男性は女性のように生理用品を買う習慣がないうえ、男子
トイレにはパッドを捨てるゴミ箱もない。
また残尿漏れは気を付けて排尿すれば防ぐことができる。
こうしたことで、尿漏れに悩む人は多いのに、ケア用品の
使用者はなかなか増えないのだという。
「シェービング用品や育毛剤と同様に身近で使ってもらえる
商品を、今後は開発していきたい」と中尾さんは話す。
「団塊の世代」が尿漏れに悩む年齢層になり、市場拡大を期待
する声もある。
ゴルフ場の更衣室で見られても安心な白十字の「無頼」は、
団塊マーケットをかなり意識している。
吉井さんは「“ちょい漏れオヤジ”は、実はたくさんいます。
活動的な団塊世代のプライドを傷付けずに、気軽に買える
ような商品を増やし、支持を獲得していきたい」と話している。
<出典>iZaニュース
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/living/83564/