癌(がん)と正常組織の境界を見分ける「塗料」を開発 | アクティブエイジング アンチエイジング
薬事日報 より

[癌と正常組織の境界を見分ける「塗料」を開発]

癌細胞を彩色して腫瘍の境界を見やすくする「塗料(paint)」
が、米シアトル小児病院研究所およびフレッド・ハッチンソン
Fred Hutchinson癌研究センターのJames M. Olson博士らの
チームにより開発された。
これにより、外科手術中に医師が腫瘍細胞と正常な組織とを
目視で区別することができるようになり、癌治療の根本的な
改善につながるとも期待されている。

この塗料は、サソリに由来するクロロトキシン(chlorotoxin)
と呼ばれる蛋白(たんぱく)で、「分子標識」であるCy5.5 と
結びついて作用する。
クロロトキシン:Cy5.5を用いることにより、外科手術で周囲
の正常な組織を傷つけずに癌細胞を残らず除去できる可能性が
高くなるとされ、特に脳腫瘍患者にとっては利益が大きい。
悪性癌の80%が手術で除去した部位から再発しているが、
これまで医師が手術中に腫瘍を「見る」ことのできる方法は
存在しなかった。

研究グループによると、MRI(磁気共鳴画像診断)では癌細胞
が100万個以上存在しなければ腫瘍を識別することができない
が、クロロトキシン:Cy5.5を用いれば、癌細胞がわずか
200個ほどの腫瘍でも見つけることができ、感度はMRIの
500倍ということになる。

この腫瘍塗料については、マウスを用いた試験で良好な結果を
みており、予備安全試験も完了しているという。
現在は、米国食品医薬品局(FDA)にヒトを対象とする臨床
試験の許可を申請する前に必要な毒性試験の準備段階にある
とのこと。
この知見は、医学誌「Cancer Research」7月15日号に掲載
された。(HealthDay News 7月16日)

[出典]薬事日報
http://www.yakuji.co.jp/entry3856.html