日経新聞 20070629 より
[エコノミー症候群の危険、搭乗4時間以上で倍増]
世界保健機関(WHO)は29日、飛行機などに4時間以上乗った
まま体を動かさないと肺血栓を引き起こす「エコノミークラス
症候群」になる危険が倍増するという調査結果を発表した。
長時間の搭乗を終えた後も、発症のリスクは約4週間続くため
「短期間のうちに何度も搭乗を繰り返す場合は注意が必要」と
呼び掛けている。
エコノミー症候群は「静脈血栓そく栓症」の通称。乗り物の
中で長い間座ったままだと足の静脈に血栓ができやすくなる。
血栓のかけらが肺まで届くと血管が詰まり、胸の痛みや呼吸
困難を引き起こし、死に至ることもある。
発症を避けるためには体を動かし、足の上下運動でふくらはぎ
の筋肉を動かして血流を促すのが有効としている。
肥満や長身で座席が窮屈な人、床に足が届かない人は要注意と
指摘。
きつい洋服を着たり、経口避妊薬を服用しているとさらに
リスクは高まるとしている。
4時間以上の搭乗で発症するのは6,000人に1人ほどの割合と
いう。(ジュネーブ=市村孝二巳)
http://health.nikkei.co.jp/news/top/index.cfm?i=2007062901703h1
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薬事日報 より
[エコノミークラス症候群のリスクはそう高くない]
飛行機の乗客が重篤な静脈血栓症を発症したとメディアで報じ
られることもあるが、実際のリスクはわずか5,000人に1人と
低いことが示され、オンライン医学誌「PLoS Medicine」9月号
で報告された。
俗に「エコノミークラス症候群」とも呼ばれるこの疾患は、
脚の血管に生じた血栓がはがれて肺、心臓、脳に移動すること
により生命にかかわる症状を起こすもの。
このような血栓は、長時間座ったままでいると生じることが
ある。
今回の研究では、オランダ、ライデンLeiden大学メディカル
センターのFrits R. Rosendaal博士らが、国際企業に勤務し
旅行する機会の多い8,800人のデータを収集。
計3万8,910人年を追跡した結果、長時間(連続4時間以上)の
フライトは10万回強で、53例の血栓症が発症し、うち22例は
搭乗から8週間以内であった。
このデータに基づいて算出した血栓症リスクは、長時間フライト
4,656回につき1例であった。
短期間に多数の搭乗や長時間の搭乗をするとリスクが高かった
ほか、30歳未満の人、経口避妊薬を使用する女性、背が特に
低い人または高い人、過体重の人などはリスクが高かった。
また、搭乗から2週間以内は特にリスクが高かった。
個人のリスクが極めて低いにもかかわらず、飛行機に乗る前に
アスピリンを飲むなどの過剰な予防措置を取る人がいるが、
Rosendaal氏は、抗血栓薬(血小板凝集抑制薬)のアスピリン
が静脈血栓症を防ぐとの裏付けはなく、腹部出血の原因となる
こともあるため、このような目的でアスピリンを飲むべきでは
ないと指摘。
ただし一部の集団ではリスクが高いので、自分のリスクを
知った上で予防措置を取るかどうかを決めるべきであると
述べている。
エコノミークラス症候群の予防法はわかっておらず、脚を
動かすことくらいしかないとRosendaal氏はいう。
弾性ストッキングや脚バンドの効果も明らかにされていない。
抗血液凝固薬ヘパリンも静脈血栓症の予防になるが、出血の
リスクが利益を上回る可能性もあるという。
別の専門家は、飛行機に乗ることによる静脈血栓症リスクは、
肥満、重度の内科的疾患、癌(がん)、外科手術などの一般的
な原因によるリスクと比べれば極めて小さなものだと指摘して
いる。
静脈血栓症を防ぐためには、体重、栄養、運動などに注意し、
心臓を健康に保つような生活をすることが大切であるという。
(HealthDay News 9月24日)
http://www.yakuji.co.jp/entry4555.html