<演奏>

チューバ:橋本晋哉 ファゴット:中川日出鷹

ギター:山田岳 マンドリン:望月豪

cond.actor:川島素晴

 


 

「楽器名称の合成による題名」シリーズの作品は、原則的にそれぞれ異なるアプローチをしている、ということは既に書いたが、チューバとチェロのための《チュロとチェバ》(2005)と、琵琶とサクソフォーンのための《びックスとサックゎ》(2020)は、お互いの発音をお互いが発話で模倣していくというアイデアが共通する。このように、姉妹作と呼べる作品も存在していること、また、今回ご出演の皆さんによる全員参加の作品を準備したいということ、そしてその中に先行作品にご参加だった方が複数いるということ、などから、この《チュゴットとギタドリン》は、2022年3月31日の「JFC作曲賞本選演奏会」において、審査員作品として上演した《チュラリフォンとチェタロラ》が下敷きになっている。

審査経緯や本選演奏会についての記事

 

チューバ、バスクラリネット、バリトンサクソフォンの低音管楽器トリオから「チュラリフォン/Tu-lari-phone」、

チェロ、ギター、ヴィオラの弦楽器トリオもから「チェタロラ/Ce-tar-ola」

とした前作。

 

それぞれトリオだったものが、今回は

チューバとファゴットのデュオで「チュゴット/Tu-gott」、

ギターとマンドリンのデュオで「ギタドリン/Guita-dlin」

とした。

 

低音管楽器群と、終始一貫スライドバーとピックにより演奏する弦楽器群、という点も全く共通である。

(以下、前作と共通する解説内容)

各楽想は奇妙で複雑なリズムを示すが、一貫して同期し、それぞれにあたかも一つの楽器であるかのように振舞う。つまりここでのアンサンブルは一種の二重奏となる。

冒頭に提示される全員で(しかしやはり左右の群が交互に)演奏される音型は、ロンド主題のように曲の変わり目に(少しずつ変化しながら)繰り返される。(これをサウンドロゴのようなものと考え、「ロゴ」と呼んでいる。)

指揮者(cond.actor)は発声を伴い、それぞれの楽器群が示すリズム型を転写する。このとき、オノマトペ的に転写するわけだが、それが日本語的な語感で貫かれることで、奇妙なリズムはよりいっそう、奇妙な度合いを増す。

音から声への転写、声から音への転写、リズムパターンの移行など、幾つかのフェーズを経て、最難関は、左右の群が同時に進行する終盤である。左右の群のそれぞれを同時に転写する結果、支離滅裂な発話となる。
楽器名称のコンバイン、発話と音楽、cond.actorなど、私のこれまでの創作の集大成となっている。

 


 

前作は、全体に長くなってしまったので、人数も少ないこともあり、ややシュリンクした。また、「ロゴ」の内容はもちろん異なっているし、前作では毎回不確定的にパターンを選ぶ方法だったものを固定した。

これらのマイナーチェンジを経たものであるが、すっきりした分、意図も伝わり易くなったのではないかと思う。

 

前作《チュラリフォンとチェタロラ》の初演動画

 


 

曲目表

山田岳⇄川島素晴 相互評

1)ギタ・セクスアリス I (2014) 

2)Das Lachenmann IId (2006/24/初演)

3)ピタリン (2017)

4)ぎゅ、多様性。 (2024/初演)

5)Das Lachenmann IVc (2017/ 24/初演)

6)バターパンマン (2019)

→7)チュゴットとギタドリン (2024/初演) *本投稿

8)ギタ・セクスアリス II (2019)