1990年前後だと思いますが、私がアクションの出来る俳優たちのマネージメントをしていた時期があるのですが、色々な映画製作会社に次回作の台本を読みに行き、マネージメントしている俳優たちに合う役を探して、出演依頼をするのですが、無名の新人たちには中々良い役は決まらず、大抵は「殺し屋A」とか「チンピラB」で、名前があっても「山田」とか「佐藤」とか名字だけの小さな役しか決まりませんでした。
そんな中、必ず台本の「殺し屋A」や「チンピラB」のアニキ的な存在でフルネームの役があります。「この役をうちの○○に!」とお願いすると、必ず返ってくる言葉が「この役は大杉漣さんに決まっています。」「大杉漣さんご存知ですよね?」「お仕事したこと有りますよねー。」と矢継ぎ早に。
当時、私はアクションコーディネーターもしていましたので、プロデューサーにすれば、当然どこかで仕事をしているだろうという前提で話してくるのですが、私が「知らないですけど・・・。」と答えると、一瞬不思議そうな顔をした後、必ず「良い俳優さんですよ。」と笑顔で大杉漣さんの話をしてくれました。
この「大杉漣さんご存知ですよね?」現象は 、このあと数年続くのですが、そして1993年の北野武監督作品「ソナチネ」に繋がって行きます。
しかし、結局この後も御本人とお会いする機会はありませんでした。
いまはお会いできなくて良かったのかなって思っています。もし大杉漣さんとお仕事でご一緒していたら、今回のショックの大きさは想像もつきません。
ご冥福を心よりお祈り申し上げます。