2022年2月24日に開始された
ロシアによるウクライナ侵攻は、我国の外交戦略に重要な示唆を与えるだろう。
このような場合、一つだけのシナリオを想定して議論しようとすると、「それは、あり得ないだろう?」などと、前提条件で合意できず、仲間間で割れることがある。
特に日本の言語文化では、望まないことを言葉にすると
厭なことが起きるという「言霊信仰」が強いため、
日本人ばかりで議論していると、
たいてい「最善シナリオ」だけに収斂してしまう。
嫌なことは、皆、避けて通り、いつの間にか、忘れて議論しない。
つまり、想定外が残される。
そのように、単一のシナリオで議論するには、危うさがあるのだ。
過去、日本人によるシナリオの事例は、
「戦争には、必ず勝てる。」
「原発事故は、絶対に起きない。(災害訓練もなし。)」
「大地震・大津波は、絶対に来ない。(そこまで逃げなくとも・・)」
などである。
誰々が、悪いというわけではない。
これは、我々日本人が、心の深層に有する
思考回路上の決定的な欠陥である。
ところが、シナリオ・プラニングの手法は、複数のシナリオを議論する。
未来のことは、誰にも読めない。分からないという事実を素直に認めて、
「最善」、「最悪」、「有りそうな」という最低3つのシナリオを考え、
組織や地域、国の中での関係者の行動計画を策定する。
「シナリオプランニング」では、通常、
地政学、法学、言語学、社会学、経済学、農学、医学、軍事、組織、政治学、技術など数名の専門家がチームを組んで行う。
異なった分野の専門家が、一同に会するので、真剣で知的な議論が好きな人には、面白い体験になる。
単純に組織と言っても、国により、地域により、歴史、そして、リーダーや構成員により、コミュニケーションの方法も、異なっている。
そのため、国際的な事例の議論では、必ず各々の分野での専門家、それも複数の国籍の人材が望ましい。
(下は、組織の類型を示すが、国により、時代により、こんなにも違いがある。)
ローデシアは、随分、昔の話だ。白人が、黒人を支配している。
ウーマン・リブは、女性ばかりが、リーダー。
アメリカの大統領は、直接、人々と言葉を交わせる。
南米では、CIA支援のクーデターで、トップが殺害されていたり。
シナリオ・プラニングの手法は、国際石油資本のRoyal Dutch Shell が考案した。
下の著作者:ピーター・シュワルツ(Peter Schwartz)は、1982年から1986年、Royal Dutch Shellでシナリオ・プラニングチームを率いた。
複数の専門家が、冷静に議論を重ねるシナリオ・プラニングの結果、
1970年、世界最小の石油メジャーだったRoyal Dutch Shellは、1990年には、世界最大になっている。
ロシアのウクライナ侵攻について3つのシナリオで思考すると;
A. Best Scenario(原因だけを列挙)
侵攻した露軍が、厭戦気分を高め、攻撃を停止する。
プーチンが、戦争の悲惨に目覚め、露軍を撤退する。
プーチンが、クーデターで殺害される。
・・
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B. Most Likely Scenario(最もありそうな・・)
NATO(含米)は、世界大戦となりかねず、武力行使しない。
ロシア軍は、主要都市インフラを順に爆撃破壊し続ける。
政権チームは、ポーランドに亡命。
外国ボランティア軍2万人は、露軍に対しゲリラ戦に持ち込む。
ドローン攻撃が加わり、露軍は、各地で苦戦し始める。
・・
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C. Worst Scenario(最悪)
プーチンのウ国への中立化、非軍事化への執着は、強固
米国とNATOは、最低限の武器援助を続けるのみ。
露軍は、順にウ国の主要都市のインフラ破壊を続ける。
中規模の原発基地を破壊することで、放射能が拡大。
露は、NATOを後盾としたウクライナの無条件降伏を強いる。
NATOは、ウ国を捨て、ウ国は、無条件降伏に応じる。
軍事力・攻撃実施の重要性と威力を中国が、再確認する。
世界で、軍拡競争が、開始される。
中国が、尖閣諸島を領有、台湾を攻撃支配に成功する。
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現時点で見ると、上記Worst Scenarioも
十分あり得ると感じるのは、私だけだろうか。
(ご参照)