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締め切りの原稿を抱えつつ、息抜きと称して更新など。というのも、少し前にマッド杉山から、K4GPを扱ったマレーシアの新聞記事が送られてきた。期待半分、不安半分。ま、取り上げられたということは、少なくともインパクトがあったということで、まんざら悪い評価でもなかったようで……、と手前勝手な憶測を。


低解像度の写真を精一杯拡大し、ボケる文字と格闘しながらザッと目を通してみると、ありがたい、K4GPの意義をかなり正確に伝えていてくれた。謝々!


要は「参加型のイベントで、好き者の遊びだよ」ということを紹介してほしかったのだ。いい歳をした大人が真剣に遊べるイベント、これが重要なのだが、掲載写真の扱いを見ても分かるように、みごとにポイントを突いてくれた。


まず、フェイクを楽しむ洒落心を理解してくれた。いちばん大きな写真に写る手前のクルマは、別の意味でも「好き者」のFIAT ADULT。ABARTHではないので念のため。その奥にトヨタ7、356スピードスターと続くあたりは、なかなか壮観。これがすべてフェイクだから笑いを通り越し感心してしまう。やるもんだ。


こうした特徴は本文中でも触れられ、ポルシェ917/30だのフォードGT40、ポルシェ936だのという車名になって紹介されていた。(もっとも、917/30の表記は間違いで正確には917PA。補足しておくとPAはCAN-AM用917の最初期型の仕様で、917/30はターボ化されたモデルの最終仕様。カウル形状はまったくの別物だ)


スタート時の仮装規定も気に入ってくれたようで、現地(左下)と日本のお姐サマ方が対比図式で。ゴスロリあり、祭の法被、テキ屋ありの日本組のいでたちは、セパンでやるとナショナリティが強調される。マレーシアの人たちの目に、こうした姿はどう映ったのだろうか?


ハンディキャッパーが参加できるのもK4GPのいいところだ。むしろ、勝負のデバイスがクルマとなるだけに、ハンディキャッパーと健常者が同じ土俵で走りを楽しめることになる。現地からも有名な女性キャスターや元2輪ライダーの方が参加、やはり現地メディアの取材攻勢にあっていた。


イベントが終わってからすでに10日以上。滅多にない機会なので、路面を見ながら歩きでコース上を1周してみたが、つい2~3日前までふくらはぎからアキレス腱にかけて軽い疼痛が残る始末。サーキットに出れば、カメラを担いで歩き回ることになるのだが、情けないことに体調がよくなることをいつも実感。運動不足は明白。なにかやろうと思いつつ、コタツに入ってノートPCで原稿を作る体たらくぶり。いい加減にせえよ、と。







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今年のK4GPセパン24時間、少しばかり受け入れ体制が変わったことで、地元のTVメディアがいくつか取材に来ていた。“観る”から“参加”するへ。これはK4GPの発足意義だが、日本でもまだ不十分な参加型モータースポーツが、歴史の浅いマレーシアで早くも認められてきたということだ。


F1を頂点とする集客型(観衆型)のモータースポーツは、現在興業面で行き詰まりを見せている。F1を幕内、GP2以下を十両、幕下と下がっていく大相撲の序列にたとえると話は早いだろうか。幕下の取り組みを興味深く積極的に観る人は、ごく一部のファンに限られる。


K4GPの特徴は、観客席に人影がない代わりに、パドックが人でごった返しているところにある。夏の富士1000㎞で4000人近くなることも珍しくない。全日本クラスのカテゴリーでも閑古鳥が鳴いていることを考えれば、これは盛況といっていいだろう。


しかし、目的は人を集めることではない。みんながレースもどきのことをやりたくて、結果的に人の集団ができているにすぎない。おもしろければ、人は自然に集まってくる。だが、自分の都合だけで物事を考えると……。


閑話休題。この前BSで、それこそ久しぶりにマリア・ジョアオ・ピリスを見た(聴いた?)。シャイな性格ゆえ、生を嫌いスタジオを好むピリスの演奏は、オーディオファンにとっては希少な存在で、故・岡本太郎氏ではないが“芸術は爆発だ”的な迫真の力があり、CDからエネルギーが弾け飛んでくる。思わず、聴き入ってしまった……。


このときはヤマハだったが(ピリスとヤマハは合っていると思う)、連鎖というか、無性にベーゼンドルファを聴きたくなった。芯の通ったppp、ダイナミックレンジの広大さは壮絶を通り越し、凄絶ともいえる。いい、やはりいい。至福の時だ。


そういえば、あるオーディオエンジニアが言っていた。「アンプは古くならない」と。もう時効だから許されるか? それほど高額機ではないが、K社がモノラル構成のハイスピードアンプを売り出したことがあった。作為のある音を嫌う故・長岡鉄男氏が絶賛したモデルで、欲しくて欲しくて仕方がなかったのだが、当時は学生で金がなく、後年オーディオの仕事を始めてから知己を得た同社のエンジニアにこの話をしたら、なんと開発に携わった人物で、手組みのモデルを頂いてしまったのだ!


この音が素晴らしくいい。音に脚色がなく、シングルコーンのスピーカーとすごく相性がいい。CDプレーヤーからの出力をDC12V駆動の管球式ボリュームアンプ(アッテネーター付きバッファアンプと考えてもいい)を通し、このモノラルアンプに入力。フルレンジ+スーパーツィーター構成のSPユニットが自然に鳴る。いまだに現用機。このナチュラル感がなんともいい。音もいいが、それよりも音楽性がいい。聞くのは音でなく音楽だ。設計者のセンスと資質が丸裸で問われてしまう。木を見て森を見ず。すべからく肝に銘じておきたい。


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ただひたすら平身低頭。気が付けば半年ぶりの更新、K4GPのサイクルだったというのが笑えてしまう……。いやいや言い訳無用。


2年に1度、今年で4回目となるK4GPセパン大会は、ここだけ特別規定の24時間イベントして行われる。企画草案時は12時間だったが、どうせなら24時間のほうがエントラントも喜ぶだろうと判断して長丁場に設定。うまくしてル・マン、スパ、デイトナと並ぶ24時間レースに成長できるかも……?


今回のイベントが、これまで過去3回と異なる点は、地元マレーシアから7台の参加があったことだ。モータリゼーションの成熟度でいえば、アジア圏のナンバー1は断トツで日本だが、その日本の20年前、30年前と似た状況が、いまアジアの各国で繰り広げられている。マレーシアにしても然り。シンガポールを強烈に意識しながら、発展途上国中の先頭集団を走っている。日本を除くアジア圏で、いち早くF1対応のサーキットを作ったことも、トップを目指す意識の表れだ。


K4GP最大の特徴は、集客型でなく参加型で考えられた点にある。基準を軽自動車としたのも、絶対速度を抑えるためだ。とはいっても、車重400~500㎏のレーシングシャシーにチューンしたターボエンジンを組み合わせれば、プロダクション級のツーリングカーよりはるかに速い。軽のパワープラントでも十分なスピードが味わえる。決してなめてはいけない。


モータースポーツの先進国は、いうまでもなくヨーロッパだが、歴史が長い分だけ明確なヒエラルキーがあり、むしろ参加層は限られる傾向にあった。モータースポーツの中心であり階層社会であるイギリスでは、参加する(できる?)側と観る側が明確に区分されていた。才能さえあれば、誰でもトップを目指せるサッカーなどとは根本的に異なるのだ。モータースポーツは、その発祥から貴族のスポーツと言われてきたが、裏を返せば金食い虫に尽きる。良くない意味での“選ばれし者”でもあるのだ。


敷居の低い誰もが参加できるモータースポーツの発展は、横槍さえなければ、既成の体制に囚われないモータースポーツ後進国のほうが、むしろ短時間で深く浸透するのではないかと考えさせられた。なにより、国に勢いがあるのがいい。日本を振り返ると暗くなる。


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時が経つのは早いもので、気が付けばもう夏のK4GP富士1000㎞。回を重ねるに連れ、内容の充実ぶりが目立つようになってきた。今回は、ハイブリッド車が試験的に参戦。プリウスとシビック、そしてマッドハウスのCR-Z(エンドレス車)。盲信的に燃費がよいとされるハイブリッド車だが、回生が効かない連続高負荷運転でどの程度の燃費になるか、見物だった。


Rクラスの増加も目につくところ。今回はR382が新登場。69年日本GP優勝の黒沢車仕様での参戦。誰か5リッターのトヨタ7を作る人が出てくれば、当時の再現となってさらにおもしろくなりそうだ。前日の500㎞でデビュー戦クラッシュという不運に見舞われたが、マッドハウスも69年型のCAN-AM車、ポルシェ917PAを作り上げている。


マッドハウスのおもしろいところは、こうしたノスタルジックレプリカ(?)が、当時のドライバーによって操られている点にある。津々見友彦さん、桑原彰さん、北原豪彦さん、田村三夫さん、高橋利昭さんたちで、今回は真田睦明さんが新顔(?)として登場。いずれもマッド杉山とは、かつて仕事上での交流があった方々で、K4GPの発足とともに再びサーキットで再会を果たす格好となっている。


津々見さんは、モータージャーナリストとしていまだ現役で活躍中。それだけに知名度も抜群。個人的には尊敬すべき大先輩で、大学時代から世話になっている。それにしても若い。今はどこへ行くにも自転車で、体型も若いときのまま、筋骨隆々! いやいや、見習うべきところがたくさんあります。


真田さん以外は、皆さんある共通項が。モータースポーツ史に詳しい方ならもうお分かりだろうが、いずれもトヨタのワークスか準ワークス系として活躍した人たちばかり。津々見さんと田村さんは日産(プリンス)ワークスにも属した時期もあった。頭の固い時代に日産からトヨタ、トヨタから日産への移籍は、相当に波風が立ったという。


真田さんは、現役当時「泣く子も黙る」という形容詞がそのまま当てはまる猛者だった。非常に怖い人、という印象が強く、近寄りがたかったが、ドライビングのうまさ、器用さという点では群を抜いていた。いつだったか、1970年代の中盤頃だと思うが、F2000(後のF2、現在のフォーミュラニッポンに相当)のレースで、骨折してギプスを巻いたまま参戦。鈴鹿だったと思うが、この状態でトップ争いを繰り広げていたのだ。子供心に「スゴイ!」と驚いた記憶がある。


黄旗SCの導入回数が少なかったこともあるが、今年の1000㎞は9時間8分という驚異的なスピードだった。しかも、勝ったのはGP-2クラスのトゥデイ。並み居るRクラスをことごとく退けての優勝だ。チームを率いたのは黒木健次さん。シビックの使い手、ホンダ車のエキスパートが、ついにK4GPに乗り込んできた、という感じだ。恐るべし!


見どころがたくさんとなった今年のK4GP。多少関わっていることもあるので、何回かに分け、気付いたことをボチボチと報告することに。よろしくです。



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ここ最近、ル・マン24時間レースでは、サポートレースとしてグループCカーが走っている。グループCカーがサーキットから姿を消して、早20年近くになるが、今でもヨーロッパでは絶大な人気を集めている。


どうだろう、集客能力という意味ではリアルタイムのル・マン24時間はやはりすごいが、車両とかレースに対する思い入れ(すなわち過去を振り返る方向で眺めれば)という点では、グループCカーの圧勝だろう。何年か先に「アウディとプジョーのディーゼルプロト、あの頃はよかった」とは絶対ならないだろう。


思うに、グループCカー時代は3つに区分できるのではないかと。ターボ時代がポルシェの黄金期とジャガー、ベンツへの主役交代期、そしてF1との共生を図ったNA3.5リッターカーの時代である。


車両の栄枯盛衰、シリーズの浮沈など、10年間を振り返ると紆余曲折がないわけでもないが、どの時代をとっても、相当にのめり込める内容だったと思っている。実際、こうした時代のレースや車両に思い入れのあるお金持ちが、お気に入りの車両を購入してグループCカーレースを展開しているわけだ。


正直に言うと、走っている姿そのものにはそれほど興味がない。グループCカーレースは、その発端から終焉まで、すべて自分の目で取材してきたからだ。逆に、当時は見られなかったそれぞれのメカニズム(ワークスカーは厳重に秘密が厳守されていた。もちろん写真取材などタブー)を見られることがなんとも嬉しい。


というわけで、やはりお目当てはパドック。日本で走っていた車両も、かなりの数が海外に売却されている。このクラシック系のレースで大切なことは、当時の姿を忠実に再現することにある。ある種、模型やミニカーの世界と相通じるものもあるが、スポンサーロゴなど、とにかく当時の状態を重用視する。


こうした価値観のオーナー達が集まるパドックを、パシャパシャ写真を撮りながら歩いていたら、ピンクのスパイス・コスワースを走らせているチームにつかまった。「日本人?」と聞いてきたので「そうだ」と答えると、「これが正しいか見てくれ」と“マルカツ”のロゴが貼られたフロントスクリーンの前に連れて行かれた。


カタカナの“ツ”の字がたいぶおかしかった。メモ帳をちぎり、正しい“ツ”の字を書いてあげると、「他のチームの日本語は大丈夫か?」とも言ってきた。筋向かいのに止めてあった車両の「住友ゴム」の文字がおかしかったので、「あれもそうだ」と言うと「間違いを直してやるべきだ」と言われてしまった。


このあたりがおもしろい。趣味のレースだから、細かな事に対するこだわり方が違う。メンテナンス担当のメカニックに「違ってるよ」と指摘してあげると、どう直せばいいのか細かく聞かれることに。チームはイギリスだが、ぼくとつというか、ベルギー人の気のいいお兄ちゃんで、話しているうちに仲良くなりメールアドレスの交換に。ベルギー人の彼にとっては当たり前なのかもしれないが、ジャッキー・イクスを崇拝することで共通。


クラシック・ル・マンで知り合った元BARのメカニックの兄ちゃんにメールして、今度ポルシェとローラの取材をさせてもらおう。いや~、Cカーレースにしても、クラシック・ル・マンにしても、エントラントがクルマ好きの集まりだから、イベントに居ること自体がすごく楽しい。


そういえば、超レア物、ガスタービンプロトのホーメットTX、やはりドライバーと仲良くなってドライバリティに関してしっかり話を聞くことができた。懐具合に雲泥の違いはあるが、クルマ好きという点では同一目線。いくら時間があっても足らないイベント、楽しいね~。


写真上はスタート直後。シルクカット・ジャガーの運転手でうまいのが一人。下は日産R90C。現・東海大・林先生が日産在籍時に開発した傑作エンジン、VRH35Zを積む。しばらくぶりで、先生と学生君たちに会いに行こう!