アッシェンバッハの彼岸から -40ページ目

いちばん怖いのは家の中

気がついたらものすごーくご無沙汰してしまった。

この1ヶ月少々のあいだに、梅と沈丁花は強い香りを振りまいて熟れて散ってゆき、

桜は例年のごとくいっせいに咲いていっせいにその命を終え、

たんぽぽは綿毛になり、桃が咲いて枯れて、

いまは躑躅やあやめが咲き始め、著莪やオオデマリが満開、あああああ、もうすぐ5月になってしまう。


この1ヶ月少々のあいだに、珍しく旅行に出かけたりしたのでその話はそのうちぼちぼち更新するとして。

わたしを超ご無沙汰のここに向かわせてるのは、たまたま昨日Bloombergのページで読んだニュースである。

カスパー・ハウザーが生まれたドイツのお隣、オーストリアで

70歳過ぎの爺さんが、自宅に娘を24年間に渡って監禁し、

その間に性的虐待によって7人もの子供をもうけ、

しかもそのうちの4人は生まれてから一度も太陽を拝んだことがなかったという。

カスパー・ハウザーどころじゃないじゃん。

怖すぎる!!気持ち悪すぎる!!

何が怖いって、こんなことが24年間も発覚しなかったこと。

話は変わるけど、きのう実刑が確定した代々木のセレブ妻による夫殺害&バラバラ事件。

あれだって、あんな凶行が普通のマンションの中で行われていたのだ。


あらゆる人間が暮らす最も身近で最小の空間である家。

当たり前だけれど、その家の中で日常生活は営まれてゆく。

人々にとって一番身近で落ち着く場所、誰よりもプライベートでパーソナルな場所。

幸せな家族の物語は、幸せな家の中から作られるけれど、

想像を絶する犯罪だって、家の中で作られ、はぐくまれ、熟成され、あるときおそるべき形で発露するのだ。

あらゆる悪は、家の中でつくられる。

世界でいちばん怖い場所は家の中だ!!


だけどちょっと待て。

あらゆる素晴らしいことも、もとをたどれば家の中でつくられるはず。

愛情とコミュニケーションと生きることを慈しむ気持ちとがあれば。

流れる時間や、テーブルにならぶ食事や、太陽や雨や風やそんないろいろを大切におもう気持ちがあれば。


家。日常生活。

善も悪も、素晴らしい芸術も、禍々しい犯罪も、

すべては家の中でつくられる。

いちばん怖いってことはつまり、いちばん大切ってことなんだよね。