アッシェンバッハの彼岸から -34ページ目

無情の世界

渋谷は六本木と並んで苦手な場所なので、よほど用がなければ赴かないのだけれど、この夏ばかりはどうしても。
渋谷のミニシアターの映写技師である友人が、シネマヴェーラ渋谷でイタリア映画特集をやってる!しかもねシネマヴェーラにはニッシーが頻繁に出没するらしい!なんていうオマケつきの耳寄り情報をくれたので。
朝から晩まで映画館で張ってたいほど偏愛するニッシーはさておき、イタリア映画特集はかなり魅力的なラインナップ。
ヴィスコンティの傑作『若者のすべて』(本作のアラン・ドロンは『太陽がいっぱい』に並んで最高に素敵です)、アントニオーニの『赤い砂漠』(アントニオーニの虚無感とそれを体現するようなモニカ・ヴィッティの藪睨み!モテたいとか色気がほしいとかいう望みが多少は残っていた娘のころ、ひどく憧れたものでした)、『自転車泥棒』に次ぐ貧乏プロレタリアートによる救いようのない内容のネオ・リアリズモ作品であることが題名からすぐわかるデ・シーカの『靴みがき』、そしてフェリーニは『魂のジュリエッタ』そして『甘い生活』!!わたしはダイアナ妃事故死のニュースを聞いた際、「あのパパラッツォが犯人?何人?」とおもったのだった。いまやパパラッチって普通名詞になってるけど。
それからヴィスコンティ以外が誰も使いこなせなかった異形の美男俳優ヘルムート・バーガーの代表作『ルートヴィヒ』は、数年前のヴィスコンティ映画祭でマダムたちに混じって1人で観た大作。天使と悪魔、美と醜、正と邪、悲しみと喜び…その他いろんなアンビバレンツが共存するヘルムート・バーガーの顔貌そして孤独なキチガイ王ルートヴィヒ2世の姿にどれだけ惹かれたことか!
ああそれからキシダとわたしの思い出の作品『ノスタルジア』も。わたしは『時計仕掛けのオレンジ』よりもこの映画でかかる第九がすきだ。そして先述の映写技師のおすすめ『トリノ、24時からの恋人たち』 は未見なのでこの機会にぜひ観てみたいものだ。
嗚呼渋谷。 しかたないから完全武装で。われわれ大衆を消費の道具に堕落させるあの、きちがいじみた駅前の狂騒を潜り抜けるためにイヤホンから大音量の”無情の世界”を流しながら。