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新STARTの発効

「新STARTの発効―さらなる核削減の課題」(PDF)を掲載しました(「米露軍備管理―新STARTの『暫定性』とその課題」『立法と調査』2010年9月(PDF)をもとに、批准承認の際に採択された決議(米)、批准法(露)を受けての簡単な分析)

●米国務省が公表したファクトシートには、新START発効後の検証措置などに関するタイムラインが示されている。

【イスラエル】和平破棄に対する懸念

「イスラエル首相、軍事力増強の可能性を示唆」産経、2011.2.3】
「イスラエル首相:対エジプトで安保戦略見直し示唆」毎日、2011.2.3】
●イスラエルのネタニヤフ首相は2日、国会で演説し、エジプト情勢を受けて、イスラエルの安全保障の基礎は「イスラエルの力の増強」にかかっていると述べ、安全保障戦略の見直しを示唆した。
●イスラエルは、エジプトのムバラク政権退陣後、エジプトの新政権がイスラエルとの平和条約(1979年)を破棄する可能性を懸念している。

「エジプト騒乱にイスラエル危機感…イスラム原理主義台頭の脅威」産経、2011.2.4】
●平和条約が破棄されれば、イスラエルは、再びシナイ半島を軍事的に注視しなければならなくなる。さらに、イスラエルは、エジプト新政権がガザのハマスを共闘する可能性にも懸念を高めている。

【XXXXX】
●イスラエルは、仮にアラブ諸国と和平が達成されたとしても、安易には安全保障態勢を緩めてこなかった。長年の敵対関係から簡単には信用しないと言うことに加えて、アラブ諸国の国内情勢は安定しているわけではなく、チュニジアやエジプトで見られるような事態がいつでも起こりうるとの現実があるからである。
●アラブ諸国における一連の事態が、今後中東の政治情勢や安全保障環境、中東和平の行方にどのような含意を持つか?イスラエルのパレスチナ問題への対応にどのような変化をもたらしうるか?

【パキスタン】核戦力の増強?

“New estimates put Pakistan's nuclear arsenal at more than 100” Washington Post, Jan 31, 2011】
●パキスタンは、この数年、ウラン及びプルトニウムの精算を加速し、核兵器の新たな運搬手段を開発するなど核兵器能力を増強しており、核弾頭数が100発を超えたと分析されている。
●政情が安定していないパキスタンの核の増強は、パキスタンの核の管理、非国家主体への拡散の懸念を高めている

”Fissile Material Cutoff Plan Seen Harming Pakistan” GSN, 2011.1.24】
●パキスタン外相は、現在提案されている兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)はパキスタンの戦略的安全保障を脅かすものだとの主張
●防衛アナリストのShireen Mazariは、国際社会が、インドに適用してきたのと同じスタンダードでパキスタンの核計画を判断すれば、パキスタンはFMCTの承認を検討するかもしれないとの見方を示した

”Pakistan Warns against India Nuclear Support,” Dawn, Jan 25】
●パキスタンのZamir Akram大使はCDで、インドに対するNSGメンバー国などによる原子力協力は、南アジアの安全保障を一層不安定化させるとし、“As a consequence Pakistan will be forced to take measures to ensure the credibility of its deterrence. The cumulative impact would be to destabilise the security environment in South Asia and beyond”と述べた

米・ベラルーシ間のHEUに関する合意

“Belarus Agrees to Give up HEU Stockpile” Arms Control Today, Jan 2011】
●米国とベラルーシは、2010年12月1日、ベラルーシがHEUを2012年までに放棄することで合意。この合意に先立って、米、露、ベラルーシおよびIAEAは10月22日と11月28日に、ベラルーシにあるHEU(約200kgと推計)のうち85kgをロシアの施設に移送した。
●ベラルーシは、2010年4月にワシントンで開かれた核セキュリティ・サミットに招待されず、強い不満を示していた。招待されなかった背景には、ベラルーシが、保有するHEUの米国あるいはロシアへの引き渡しを拒否したことがあったとされる。

【イラン】スタクスネット、ウラン濃縮の停滞、イランの核保有の意図

Broad, Markoff and Sanger, “Israeli Test on Worm Called Crucial in Iran Nuclear Delay,” NYT, Jan 15】
●イスラエルは、コンピューター・ワームの「スタクスネット」の試験を実施していた
●このワームにより、イランの遠心分離機の20%がdisabled。シーメンス社製の産業制御システムに異常を引き起こす(遠心分離器の回転数を急変させ、誤作動を起こす信号を出す。一方、遠心分離装置のセンサーが出す「誤作動」の警告信号は止めて「正常」を装う機能も)
●イスラエルによるサイバー攻撃ではないかとの見方。感染の6割がイランの集中
●ワームの開発には米国も協力
●イスラエルも独自にP1を入手。国内のネゲブ砂漠に建設した試験施設で、スタクスネットがP1を誤作動させるかを確認
●米国とシーメンスは、米国のIdaho National Laboratoryで、制御システムの弱点を洗い出す作業を2008年に開始していた

Albright and Stricker, "Iran’s Nuclear Setbacks: A key for U.S. diplomacy" Jan 18, 2011】
●イランの核計画がセットバックしている要因:国際マーケットから重要なパーツを入手するのが困難に;多数の遠心分離機を運転することでのトラブル;外国の諜報機関による秘密の活動(cyber attacks, sabotaging key equipment Iran seeks abroad, infiltration and disruption of Iran’s smuggling networks, and the assassination of nuclear experts)
●設置された遠心分離機の60パーセントほどしかウランを濃縮していない
●米国:高性能のカーボンファイバーの不足などにより、より性能の高いイランの遠心分離計画も遅れているとみている


Barzashka, “Using Enrichment Capacity to Estimate Iran’s Breakout Potential” FAS, Jan21】
●イランのウラン濃縮のペースが遅くなっているとの米国やイスラエルの見方があるが、IAEAのデータを用いて計算すると、ナタンズにあるイランの商業スケール濃縮施設の濃縮能力は、前年よりも高まっている。2010年のIR-1の分離能力は、前年よりも60%増加。
●イランの現在の能力を用いた燃料濃縮プラント(FEP)でのブレイクアウト・シナリオは、1発の核弾頭に十分なHEUを約半年でとりだし得るというもの。
●近い将来、イランが20%に濃縮されたウランを十分に蓄積すれば、主要な濃縮プラントでは早ければ1カ月で兵器級ウランを生産するまでに時間を短縮し得る

Tertrais, "History teaches that Iran will choose nuclear weapons" The National Jan 16, 2011】
●イランは「核兵器一歩手前」の能力の取得に留まるとの見方(あるいはイランが核兵器化について最終的な決定を行っていないという見方)もあるが、軍事的な核計画が、敷居の一歩手前で止まることはほとんどない。
●スウェーデン、アルゼンチン、韓国などは軍事的な意図は有していたが、初期の段階で計画を停止
●国が核兵器を製造すると実際に決定したか否かを尋ねるのは意味がない。軍事行動やレジームチェンジなしには、イランは(核兵器製造の)敷居を超える公算が高い
●イランに対しては、軍事攻撃もレジームチェンジもよいオプションではないとすれば、制裁の強化、また敷居を超えれば軍事行動を行うとの威嚇を通じてイランに圧力をかけることが合理的な選択肢
●The combined effects of sanctions, economic mismanagement and domestic discontent, as well as the fear of a US military strike, may at some point give pause to the Iranian leaders if they fear for the existence of the regime.

【XXXXX】
●イランのウラン濃縮に障害が出ているとすれば、イランの核計画に対する(物理的な)軍事行動の必要性に対するイスラエル(あるいは米国)の切迫度は低くなったと考えられる→外交的手段、非軍事的制裁を通じた問題の解決やイラン核開発の抑制に時間的な余裕(イスラエルや米国は、イランが核兵器能力を取得するのは2015年頃に遅れるとの分析をしているとされる)
●イランは現在、3.5%のLEUを3トン、20%弱のLEUを30kg製造。
●注意すべきは、イランに秘密のウラン濃縮施設が別にあるかもしれないということ、ならびに北朝鮮(ウラン濃縮計画を公表)などとの協力により核兵器能力取得までの時間を短縮する努力が行われているかもしれないということであろう。また米国やイスラエルの見方とは逆に、イランが濃縮能力を向上させているとの分析もあることに留意する必要がある。P5+1やイスラエルに、大きな時間的余裕が産まれているわけではないようにも思われる。