本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること―沖縄・米軍基地観光ガイド | 52歳で実践アーリーリタイア

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52歳で早期退職し、自分の興味あることについて、過去に考えたことを現代に振り返って検証し、今思ったことを未来で検証するため、ここに書き留めています。

沖縄県以外に住んでいる人が、本のタイトル、「本土の人間は知らないが沖縄の人はみんな知っていること」の「本土の人間」部分を「私」に置き換え「私は知らないが沖縄の人はみんな知っていること」が書いてある本です。

沖縄とは縁も縁もない著者と写真家が、主に沖縄問題による鳩山首相の辞任をきっかけに「沖縄の米軍基地とはなんぞや?」という視点で取りかかった本。

しかしながら、著者が調べれば調べるほど、著者自身が戦後日本の国家のあり方の本質を問わざる得なくなってくる事実に、私含めた本土在住の読者も一緒になってぐいぐい引き込まれ、「米軍基地問題」=「日本の憲法問題・安全保障問題」であることを認識させられる。

これまで日本の敗戦国としての立場や侵略国家という負い目を持った国家感を持っていた自分としては、本書を読んだ事で戦後の日米関係、安保条約問題、対東アジア外交などなど、日本の安全保障と外交問題に関して、コペルニクス的に視点が変わりつつある。

本書にも紹介されているフィリピンの成功事例の通り、これまでは非現実的と思われた「米軍基地の完全撤去」に加え、「日米安保の発展的解消と新たな日米同盟の締結」「憲法9条を主とした改憲」を検討せざるを得ない戦後の日米関係を認識した。

一方で、上記のような日本の政策転換が現実になった場合、中国・韓国だけではない、かつての軍国主義国家としての「日本」にいまだ疑念を持つ東アジアや東南アジア諸国との関係に悪い影響が出るのは必須である。軍事的には、日本がアメリカの属国的立場を維持し続けたからこそ、東アジア・東南アジア諸国に安心感を与えてきた。そのことによって、かつて「エコノミックアニマル」と称されたように「経済にしか興味がない日本」という日本に対する「イメージ」を各国に与え、安心感を与える事ができた。

確かに米軍は日本を守るために基地を日本においている訳ではないかもしれないが、基地がある事によってこれまで、そしてこれからも得られる経済的利益は、一方で認識しておく事が必要だろう。

そして本書が書かれた後に、尖閣諸島への中国からの無謀な対応があった後から考えてみても、大国意識丸出しの中国はじめ、「民主国家」ではない、つまり「西側陣営」と同じ価値観を共有しない「北朝鮮」「ベトナム」が、同エリアに存在し、これからも存在し続ける事が必須な地理的環境下において、本当に米軍が撤退し、憲法9条第2項を変更し、日米安保条約をやめたらどうなるのか、は冷静に慎重に考えざるを得ない。

そんなわけで本書の主張する「すぐにでも米軍撤退」というわけにはいかないだろう。

沖縄の人たちの負担軽減はもちろん、米国との普通の外交関係になるべく、現実的なのは、ひたすら米国と交渉し、ひたすら半植民地状態ともいえる沖縄の基地縮小に向けた努力をしていくしかない。これは日本の他の地域への移設ではなく「最低でも県外」ではなく「最低でも国外」または基地の撤廃をお願いしていくしかない。

その交渉材料として、かつての給油援助、湾岸戦争への資金提供、各種PKO活動、更には米軍の軍事行動に参戦する集団的自衛権の行使などなど、必要ならどんどん活用していかざるをえないだろう。